「よし、今日こそあの書類を片付けよう!」そう決めました。しかし、気づけばスマホをいじったり、部屋の掃除を始めたりしています。最後には、「まあ、あとでやればいっか……」と未着手のまま夜を迎えてしまいます。そして、「どうして私はいつもこうなんだろう」と自己嫌悪に陥る……。また、こんな経験、誰しも一度や二度ではないと思います。
そして、「あとでやる」発生のたびに、「意志の弱さ」や「怠け癖」を責めてしまいがちです。しかし、近年の研究で、先延ばしは性格の問題ではなく、脳が仕掛けてくる「防衛本能」の一種であることが分かっています。つまり、あなたの意志が弱いのではなく、脳の仕組みにまんまとハマっているだけなのです。今回はこの点に注目しました。
このブログでは、「あとでやる」が発生してしまう理由、その際の脳の動き、主観と客観でのタスク分け、対応策について調べましたので以下に説明します。
脳のバグ?「あとでやる」が起きる3つの科学的理由
未来の利益より、今のラクを好む(行動経済学:現状維持バイアス)
脳は、遥か遠い未来の大きなメリットより、目の前にある小さなメリットを高く評価します。そして、これを行動経済学で「現在バイアス(現状維持バイアス)」と呼びます。例えば、遠くのメリットとして、来週提出のレポートを終わらせて安心するです。また、目の前にある小さなメリットとして、今すぐYouTubeを見てダラダラするなどです。
つまり、脳にとっては「今の自分」と「1週間後の自分」はもはや赤の他人です。そのため、他人のために今ガマンするのは嫌だ!と脳が反発するため、「あとでやる」が発生します。
脳が「タスク」を脅威だと勘違いしている(脳科学:扁桃体のハイジャック)
不慣れな作業、やり方が分からない複雑なタスクを目の前にします。その時、扁桃体が「うわ、なんか難しそうで嫌だな(=ストレス・脅威)」と恐怖を感じます。そのストレスから守るために「今はやらなくていい!別の楽しいことをしよう!」と指令を出します。つまり、これが、テスト前に急に部屋の掃除をしたくなるセルフ・ハンディキャッピングの正体です。
完璧主義という名のブレーキ(心理学:評価への恐怖)
やるからには完璧に仕上げたい。または、失敗して評価を落としたくないという気持ちがあります。そして、この気持ちが強すぎるあまり、心理的なハードルが上がりすぎて動けなくなるパターンです。そして、失敗する恐怖から逃げるための防衛策として、無意識に「あとでやる」という選択肢を選んでしまうと考えられています。
「あとでやる」になるまでの脳の動き
ステップ1:タスクの認知と「防衛センサー」の作動
あなたが「面倒なタスク」を目にした瞬間、視覚情報が脳の防衛センサーである扁桃体に届きます。その面倒なタスクには、未返信のメール、重い課題などです。そこで、扁桃体は、そのタスクを「うわ、難しそう」「怒られるかも」「退屈で苦痛だ」=『心理的な脅威(敵)』とみなします。
脳内の動き:
扁桃体が「敵襲!ストレスの原因を発見!」とアラート(不快アラーム)を鳴らします。
大脳辺縁系: 大脳辺縁系は、脳の本能・感情の司令塔の部分です。そして、今すぐラクをしたい、不快なものを避けたいというのに反応します。
ステップ2:理性の司令塔による反論
アラートを受けた前頭前野(理性)が、慌てて介入します。「これを今やっておかないと、1週間後の自分が締め切りに追われて大赤字になるぞ!」と反応します。つまり、将来のメリットを計算して説得を試みます。
脳内の動き:
前頭前野が「長期的な利益」を計算し、体に「動け!」と指示を出そうとします。
前頭前野:
前頭前野は、理性の司令塔です。将来のために今やるべき論理的な判断を下します。
ステップ3:本能の「ハイジャック」と現状維持バイアス
ここで、今すぐラクをしたい大脳辺縁系(本能)が暴れ出します。そして、本能のパワーは理性の何倍も強力です。 大脳辺縁系は、1週間後の自分なんて知るか!となります。そして、目の前にあるストレス(課題)から逃げて、安全(ラク)を確保する方が先決!とします。これは、行動経済学でいう現在バイアスの発生です。そこで、スマホの通知や部屋の散らかりなど「手軽に快楽を得られるもの」が目に入ります。すると、脳内でドーパミン(快楽物質)の予測が走り、本能の勢力が完全に理性を上回ります。
脳内の動き:
大脳辺縁系が前頭前野の働きを抑え込み(扁桃体ハイジャック)、主導権を奪います。
ステップ4:言い訳の自動生成
主導権を握った本能は、自分が「今ラクをする」という選択を正当化します。そこで、前頭前野(理性)に都合の良い言い訳(オピニオン)を作らせます。
- 「今は集中力が切れているから、明日やった方が効率が良い」
- 「とりあえずコーヒーを飲んで、部屋を片付けてからの方がはかどる」
こうして、脳内で「今やらないことの正当防衛」が成立します。そして、めでたく「あとでやる」という命令が身体に出力されます。
主観(オピニオン)と客観(アナリスト)でタスクを解剖する
これまでのテーマにあった「情報の見極め」を、自分のタスク管理にも応用します。
- あなたの感情(主観的なオピニオン):
「あの資料作成、すっごく大変そうだし時間もかかる。今の私には無理(=めんどくさい)」 - 事実のデータ(客観的なアナリストの視点):
「過去のデータを見る限り、この資料作成にかかる時間は実質30分。手順は3ステップ。今1ステップ目だけやるなら、5分で終わる」

このように、「めんどくさい」という主観的なオピニオン(脳の錯覚)に騙されないようにします。そして、タスクをデータとして客観的に見ることで、脳の恐怖センサーを騙すことができます。
対応策:精神論は不要!「あとでやる」を撃退する3つのアプローチ
「2分ルール」で脳の5速ギアを入れる(作業興奮)
脳には、やり始めると気分が乗ってくる「作業興奮」という仕組みがあります。まず、2分以内でできる超ミニマムな行動からスタートします。例えば、パソコンの電源を入れるだけ、最初の1行を書くだけなどです。
タスクを「これ以上細かくできない」まで解体する
「資料を作る」だと脳が拒絶します。そのため、「デスクトップのフォルダを開く」「テンプレートをコピーする」「タイトルを入力する」といったレベルまで細分化します。すると、脳はストレスを感じず、スッと動けます。
「If-Thenプランニング」で行動を自動化する
「〇〇したら、▲▲する」とあらかじめ決めておく心理学の手法です。例えば、「朝コーヒーを一口飲んだら(If)、すぐにメールを3通返す(Then)」です。このように、意志の力ではなく「条件反射」で体を動かします。
まとめ
ここまで、「あとでやる」の発生する理由、その際の脳の動き、主観と客観でのタスク分け、対応策について説明しました。まず、「あとでやる」の発生する理由について、現状維持バイアス、扁桃体のハイジャック、評価への恐怖を説明しました。次に、その際の脳の動きについて、タスクの認知と「防衛センサー」の作動、理性の司令塔による反論、本能の「ハイジャック」と現状維持バイアス、言い訳の自動生成を説明しました。続いて、主観と客観でのタスク分けで、情報の見極めを説明しました。最後に、対応策について、「2分ルール」で脳の5速ギアを入れる、タスクを「これ以上細かくできない」まで解体する、「If-Thenプランニング」で行動を自動化するを説明しました。
まず、「あとでやる」の発生する理由は、あなたの意志の弱さや怠け癖ではありませんでした。現状維持バイアス、扁桃体のハイジャック、評価への恐怖などの脳の防衛本能からきていました。そして、そこで対応策として、タスクを着手しやすく小さくする、簡単な作業をするという容易に着手できるようしました。または、「If-Thenプランニング」で行動を自動化をするでした。これらは脳をなるべく使わないで作業ができるようにしています。つまり、扁桃体に苦痛を与えず、暴走させないようにしていると捉えられました。そして、脳のふるまいを踏まえた的確な対応策のように思えました。

コメント