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なぜ人は“話しかけられそうな人”を無意識に選ぶのか?

心理
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 街中で道に迷ったとき、目の前に何人もの人が歩いています。なぜか「この人なら教えてくれそう」と特定の誰かを選んで話しかけたことはありませんか? あるいは、なぜか昔から「よく道を聞かれる」「駅で外国人に話しかけられる」という人もいます。また、学校に入学時、会社に入社時には、周りを見て話しかけそうな人を探すことがあります。このように、新しい環境に入った時には、話しかけられる人を探しているような気がします。

 しかし、私たちは普段、誰に話しかけるかをじっくり時間をかけて考えているわけではありません。つまり、ほんの「一瞬」のうちに、完全に無意識に相手を選別しています。そこで、「なんとなく優しそうだから」で片付けてしまいがちです。しかし、この「なんとなく」の裏には、人間の脳が生き残るために編み出した、超高精度な『リスクとコストの自動計算システム』が働いているようです。そこで、今回はこの点に注目することにしました。なお、話しかけることに関して以前のブログを書いています。あわせてお読みください。なぜ人は「話しかけるタイミング」を考えすぎてしまうのか:心理と脳のメカニズム

 このブログでは、人が「話しかけられそうな人」を無意識に選ぶ理由、話しかけられそうな人のサイン、その際の脳の動きについて調べましたので以下に説明します。

一瞬で計算!脳が「話しかけやすい人」を選ぶ3つの科学的理由

拒絶される恐怖を避けたい(脳科学:扁桃体のリスク回避)

 人にとって、見知らぬ人や目上の人に話しかける行為は、大きなストレス(脅威)です。そのため、脳の恐怖センサーである「扁桃体」が反応します。例えば、「無視されたらどうしよう」、「冷たい目をされたら傷つく」などです。つまり、嫌われたくない心理が発動し防衛本能が警戒します。

 そのため脳は、最も拒絶される確率が低そうな相手を探します。つまり、受け入れてくれそうな笑顔、開かれた体勢等のサインを出している人を一瞬で見抜きます。そして、安全牌として選択します。

話しかけるエネルギーをケチりたい(行動経済学:認知の省力化)

 人間の脳は、体重のわずか2%の重さです。しかし、全体の20%ものエネルギーを消費する大食い機関です。そのため、できるだけ脳の体力を使いたくないという「省エネ本能(認知の省力化)」があります。

 例えば、話しかけたら、どんな反応が返ってくるか予想がつかない人は、高コストな存在です。例えば、無表情、スマホに没頭している人などです。なお、高コストとは、脳にとって脳内メモリ(ワーキングメモリ)を激しく消費することです。逆に、雰囲気が柔らかく反応が予測しやすい人は「低コストで済む相手」です。そこで、脳が自動的にロックオンします。

自分と似た人を本能的に好む(心理学:類似性の法則と敵味方識別)

 私たちの脳の大脳辺縁系は、自分と共通点がある人を瞬時に「味方(仲間)」と識別します。逆に、全く異なる人を「他者・外敵」と識別します。(イングループ・バイアス) なお、共通点としては、年齢層、服装の系統、雰囲気などです。

 自分と似た空気感を持っている人と対面時、無意識に「この人は自分を害さない」と判断します。そして、心理的な心理的安全性(安心感)を感じて足がそちらへ向きます。

脳のレーダーがキャッチしている「話しかけられそうな人」のサイン

 人が無意識に選んでいる相手は、どんな「客観的サイン」を出しているのかについて説明します。

視線の「余白」:

 スマホを凝視していたり、眉間にシワを寄せている人は、前頭前野が「ハイコスト」と判断します。一方で、ぼんやりと周りを眺めている人は「視線の余白」があり、ローコストと判断します。つまり、話しかける隙があると判断します。

身体の向き(オープン・クエスチョン状態):

 胸が開いており、いつでもウェルカムな姿勢をとっている人がいます。そのような人は、他人のスポットライト効果(自意識過剰な不安)を優しく解除してあげる力を持ちます。逆に、腕を組んだり、背中を向けたりしているようなクローズドな状態では不安を解除してあげる力を持ちません。

話しかけられそうな人を見つけている脳の動き

ステップ1:0.03秒の超光速顔スキャン

 あなたが誰かに声をかけようと周囲を見渡します。そして、その瞬間、視覚情報が脳の顔認識専門チームである紡錘状顔回に飛び込みます。そして、意識が「あの人は優しそうだな」と認識することになります。その前のわずかな時間で、相手の「目元の開き具合」「口角の角度」「眉間のシワ」をミリ秒単位で自動計測します。

ステップ2:危険センサーによる「審査」

 スキャンされたデータは、すぐに危険センサーである扁桃体に送られます。他人に話しかける行為は、脳には「拒絶されて心が傷つくかもしれない」というリスクを伴います。そのため、扁桃体は非常に慎重です。つまり、嫌われたくない心理が働きます。

脳内の動き:

 相手の顔データに「口角が下がっている」「目が泳いでいる」といった拒絶のサインを見つます。すると、扁桃体が「あの人に話しかけると拒絶されるリスクあり!」とアラートを出します。逆に、穏やかな表情やアイコンタクトの「余白」をキャッチします。すると、「安全である」と判断します。

ステップ3:コスト・ベネフィットの自動計算

 安全性が確認されると、次は前頭眼窩皮質(計算機)が出番を迎えます。ここでは、「脳の省エネ」に基づき、以下の計算が瞬時に行われます。

  • 高コストな人: スマホを凝視している、イヤホンをしている、早歩きでイライラしている。
    ➔ 話しかけたら、状況を理解してもらうまでにものすごい脳のワーキングメモリを消費する。そのため脳が嫌がります。
  • 低コストな人: 歩行スピードが穏やか、手元が空いている、こちらに気づいて少し体を向けている。
    ➔ この人なら最低限の言葉(低エネルギー)で会話が成立する!と脳が判断します。

ステップ4:「なんとなく」という直感の出力

 扁桃体が「安全(低リスク)」と太鼓判を押します。そして、前頭眼窩皮質が「省エネ(低コスト)」と計算した相手が見つかります。そして、その瞬間、脳は前頭前野(理性)に向けて「あの人にしなさい」という指令を送ります。

 このとき、私たちの意識には小難しい計算式は見えません。ただ「なんとなく、あの人が話しかけやすそうだな」という主観として、体に行動を促します。

まとめ

 ここまで、人が「話しかけられそうな人」を無意識に選ぶ理由、話しかけられそうな人のサイン、その際の脳の動きについて説明しました。まず、その理由について、拒絶される恐怖を避けたい話しかけるエネルギーをケチりたい自分と似た人を本能的に好むを説明しました。次に、話しかけられそうなサインについて、視線の「余白」身体の向きを説明しました。最後に、脳の動きについて、0.03秒の超光速顔スキャン危険センサーによる「審査」コスト・ベネフィットの自動計算「なんとなく」という直感の出力を説明しました。

 まず、脳が生存するために編み出した、超高精度な『リスクとコストの自動計算システム』が働いていました。そして、私たちが誰かに「なんとなく話しかけやすい」と感じます。その裏には、相手の表情や姿勢から「安全で省エネだ」と弾き出した膨大な客観データが存在していました。

 また、「話しかけられやすい」ということは、周囲の人の脳に「私はあなたを拒絶しません」というメッセージを自動で配っている状態です。そして、ほんの少しスマホを置いて「視線の余白」を作ったり、胸を開いた姿勢をとるだけで、周りの人の脳のセンサーはあなたを「安全・低コストな味方」だと認識されやすくなります。そうすることで、自然と人が集まるようになっていくように思えました。

 

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