間違いを指摘された時、「そんなつもりじゃなかった」などととっさに言ってしまう、聞いたことがあります。また、「状況が悪かっただけ」ということもあります。気づけば口から言い訳が出ていたということが多いかもしれません。また、芸能人の方が、遅刻した時に、渋滞していましたということなども聞きます。素直に寝坊したと謝る人もいます。つまり、普通に言い訳をせずに指摘を認めることも多々あります。また、指摘している人との過去の経験が影響するかもしれません。
しかし、誰もが経験するこの反応のような言い訳は、決して性格の弱さではないようです。そして、心理学では、言い訳は“自己イメージを守るための自動的な防衛反応”と説明されています。
そこで、このブログでは、なぜ人は指摘されると弁解したくなるのかに注目します。そして、そのメカニズム、過去の経験との関係、対処法について調べましたので以下に説明します。
言い訳は「自分を守るための反射」である
人は誰しも、「自分はまともな人間だ」「ある程度は有能だ」という自己イメージを持っています。そして、 このイメージは、日常生活の中で自信や安心感を支える“心の土台”のようなものです。しかし、間違いを指摘される瞬間、その土台が揺らぐことになります。そこで、自分はそんなにダメな人間なのか?、能力がないと思われたのでは?という不安が頭をよぎります。不安が一瞬で頭をよぎることで、脳はその不快感を減らすために“反射的に”言い訳を生成してしまいます。つまり、これは、ほぼ自動的に起こる心理的防衛反応です。そのため、性格の弱さではありません。むしろ、脳が自分を守ろうとする自然な働きによるものです。
認知的不協和:自分のイメージと現実がズレる苦痛
心理学で最も有名な概念のひとつに認知的不協和というものがあります。 これは「自分の信念」と「実際の行動」が矛盾したときに生じる心理的ストレスのことです。例えば、以下のようなことがあります。
- 「自分は仕事ができる」
- 「しかし、ミスをした」
そこで、この矛盾が不快感を生み、脳はその苦痛を減らすために言い訳を作り出します。例えば、「指示が曖昧だった」 「時間が足りなかった」 「他の人も同じミスをしていた」などです。そして、こうした言い訳は、脳が不協和を解消するための“心の調整”です。そして、この認知的不協和は、言い訳だけでなく、日常のあらゆる場面で現れます。例として、以下のようなことがあります。
- 自分の行動を正当化する。
- 他人の評価を歪めて受け取る。
- 自分に都合の良い解釈をする。など
つまり、言い訳は「自分を守るための合理的な心理戦略」ということになります。
自己奉仕バイアス:成功は自分、失敗は外部のせい
人は成功したときには自分の能力のおかげと考え、失敗したときには状況が悪かったと考える傾向があります。そして、この現象を自己奉仕バイアスと呼びます。このバイアスは、私たちの自尊心を守るために働きます。そこで、失敗を自分の能力不足として受け止めると、自己イメージが傷きます。そのため、脳は自然と「外部要因のせい」にしてしまいます。その例には、以下のようなものがあります。
- 渋滞していた
- 予想外のトラブルがあった
- 他の人の対応が遅かった
そして、こうした言い訳は、自己奉仕バイアスの典型的な表れでもあります。そこで、興味深いのは、他人の失敗には厳しく、自分の失敗には甘くなるという点です。これは人間関係の摩擦を生む原因にもなりますが、心理学的にはごく自然な反応になります。
恥の回避:人は「悪い人」に見られたくない
間違いを指摘されると、多くの人は「恥」を感じます。恥は非常に強い社会的感情であり、脳はこれを避けようとします。恥は、以下のような強烈な感情を伴います。
- 自分の価値が下がったように感じる。
- 他者からの評価が気になる。
- 自分の存在が否定されたように感じる。
そのため、言い訳は自分は悪い人ではないというメッセージを相手に伝えるための行動にもなる。つまり、本当はちゃんとやろうとしていた、悪気はなかった、状況が悪かっただけということを言います。そして、こうした言い訳は、恥を避けるためのコミュニケーション戦略でもあります。
過去の経験が言い訳の癖を強める
言い訳は、環境によって強化されることがあります。
怒られやすい環境で育った
子どもの頃から「ミス=怒られる」という経験が多いことがあります。すると、大人になってもミスを認めることが怖くなります。
完璧主義の家庭・職場
「ミスは許されない」という空気が強い環境では、 言い訳は自己防衛として学習されやすくなります。
過度に競争的な環境
他者との比較が常に行われる環境では、 自分の評価を守るために言い訳が増えることになります。そして、こうした言い訳の習慣を自己防衛戦略の学習パターンです。
言い訳を減らすための実践的なヒント
言い訳は自然な反応です。しかし、減らす可能性はあります。
一拍置く習慣をつける
反射的な言い訳を防ぐために、指摘された瞬間に「3秒だけ沈黙する」習慣をつけます。
事実と感情を分ける
「指摘=人格否定」ではないと捉え直します。そして、事実だけを受け止める練習をします。
“理由”と“言い訳”を区別する
説明は必要ですが、責任転嫁は不要と理由と言い訳を区別して考えるようにします。自分の行動の責任をどこまで取れるかを意識するようにします。
自尊心を他者評価に依存しすぎない
他者の評価に過度に依存すると、言い訳が増えることになります。そこで、自分の価値を「行動」ではなく「存在」に置くことで、言い訳の必要性が減ります。
ミスを認めるほうが早く楽になる
ミスを認めることは、実は最も早くストレスを減らす方法です。つまり、ミスを認めることで、脳は不協和を解消し、次の行動に集中できるようになります。
まとめ
ここまで、そのメカニズム、過去の経験との関係、対処法について説明しました。まず、そのメカニズムについて、言い訳は「自分を守るための反射」として、3つの心理メカニズムを説明しました。つぎに、過去の経験との関係について、過去の経験が言い訳の癖を強めるを説明しました。最後に、対処法について、言い訳を減らすための実践的なヒントとして、5項目を説明しました。
まず、言い訳は「弱さ」ではなく、脳が自分を守るために働く自然な防衛反応でした。そして、そこには認知的不協和、自己奉仕バイアス、恥の回避、過去の経験など、複数の心理メカニズムが重なっていました。しかし、言い訳を減らすことの可能性はあります。そして、その対処法には以下のようなものがありました。
- 返答、回答には、一拍置くようにする。
- 事実と感情を分けるようにする。
- 自尊心の置き場所を変えるようにする。
このような事柄を習慣化することによって、より健全なコミュニケーションと自己成長につながります。ただし、すでにこのようなことが習慣化されている人は、言い訳が少ないと考えられます。そのため、すでに習慣化され言い訳が少なくなっている方にとっては効果が少ないかもしれません。ただし、状況で反射的に出てしまう言い訳には注意しなければならないと感じました。

コメント