「デマだとわかっているのに、なぜか足がスーパーに向かってしまう」人がいます。また、「行列を見ると、買わなきゃ損だと焦り出す」という人もいます。そして、社会不安が広がるたびに繰り返されるパニックがあります。私たちは、情報に踊らされている自分に嫌気がさしながらも、その衝動を止めることができません。実は、このパニックの正体は「脳のハイジャック」です。つまり、誰かが意図的に流した嘘ではありません。誰かの「家族を守りたい」という切実で真剣な生存本能によるものです。そして、これが、SNSを通じてあなたの脳の不安スイッチを強制的にオンにしてしまいます。そして、なぜ冷静な人までがこの「脳の乗っ取り」に抗えないのか?このようなことも疑問に残ります。
なお、以前のブログで、ストックしてしまう心理やトイレットペーパー騒動の心理について書いています。「安心を買っているはずが、不安を招く?ストックが増え続ける人の心理学と賢い付き合い方」「なぜ繰り返される?トイレットペーパー騒動の心理学。SNSが加速させる『空の棚』の恐怖 」
今回のブログでは、一部の人の真実味がパニックの火種となる心理的メカニズムに注目しました。そして、脳内で起きている「本能と理性の攻防」を調べることにしました。そこで脳のハイジャックにより起きるパニックがどう拡散されているかについて、対策について調べましたので以下に説明します。
パニックが広がっていく流れ
このような社会的パニックには、広がっていく流れがあります。まず、第1フェーズとして、個人レベルから始まる火種は「真剣すぎる生存本能」があります。続いて、第2フェーズとして、社会に広がり始めるSNSによる「恐怖の増幅」と可視化があります。そして、第3フェーズとして冷静な人の「合理的なパニック」がおきます。以下パニックの流れについて、順を追って説明します。
第1フェーズ:火種は「真剣すぎる生存本能」
まず、火種となる人の最初はデマを流そうとしているわけではないようです。
- パニックになりやすい人の正体:
パニックになりやすい人は、心理学でいう「神経症傾向」が高い人がいます。そして、責任感が強く「家族を守らなければ」という思いが人一倍強い人もそうです。そして、彼らにとって、欠乏の予兆は「生死に関わる大問題」として映ってしまいます。 - 真剣さが生む「説得力」:
「本当に困っている人の言葉」は、嘘や冗談よりも強いエネルギーを持ちます。それは、脳のミラーニューロンが、その「真剣な恐怖」をダイレクトに受信してしまうからです。 - 脳の状態:
まず、この段階で、最初の一人(先駆者)の扁桃体が完全にハイジャックされます。そして、「戦うか逃げるか(買いに行くか)」のモードに切り替わっています。
第2フェーズ:SNSによる「恐怖の増幅」と可視化
ここが現代特有のポイントでSNSの影響が多く含まれている段階になります。
- 「真剣な善意」の拡散:
「みんなも気をつけて!」という善意の投稿が、恐怖の種をまきます。つまり、SNSは、本来なら見えないはずの「他人の焦り」を可視化してしまいます。 - 情報のカスケード現象:
「あの人があんなに真剣に言っているなら……」と、次々に脳がハイジャックされる人が増えます。そして、個人の不安が「社会全体の事実」へと上書きされていく過程です。
第3フェーズ:冷静な人の「合理的なパニック」
そして、恐ろしいことに普段は冷静な人も、最終的には買いに走ってしまいます。
- 「社会的証明」の臨界点:
「紙がなくなるのはデマだ」と理性(前頭前野)で分かっています。しかし、目の前の棚が空になり、みんながカートを山盛りにしているのを見てしまいます。すると、脳は「この状況下では、買わない方がリスクだ」と判断を変えてしまいます。 - 「防衛的購入」への転換:
「なくなるのが怖い」から買うのではありません。「パニックを起こしている人たちのせいで、自分が買えなくなるのが困る」というものです。つまり、極めて現実的で冷静な判断の結果として、パニックに加担することになります。
「脳のハイジャック」へのパニック対策
【初期段階】パニックの「火種」になる人の要因と対策
この段階の人は、周囲の影響より「自分自身の生存本能」が敏感に反応してしまうタイプです。
心理的要因
- 感受性の高さと責任感:「家族を守らなければ」「最悪の事態に備えなければ」という強い責任感があります。そして、責任感が脳の扁桃体を常に「警戒モード」にしています。
- 高い想像力:わずかなニュースから「物流が止まる→食料が尽きる→……」と考えてしまいます。つまり、ネガティブな未来をリアルにシミュレーションしてしまう脳のクセがあります。
対策方法:脳を「なだめる」
- 「事実」と「感情」の仕分け:
「紙がない」という投稿を見たとき、発信者の不安か、事実かを判断します。例えば、「これは発信者の『不安』か? それとも公的な『在庫データ(事実)』か?」と紙に書いて分類します。そこで、主観的な言葉(「大変だ!」「絶望的」など)を脳から排除します。 - 予備の「見える化」:
不安は「分からないこと」から生まれます。普段からローリングストックを行い、「うちは1ヶ月分ある」と視覚的に確認しておきます。そして、これにより、扁桃体のアラートを物理的にオフにします。なお、ローリングストックとは、日常的に使う食品や日用品を少し多めに購入し、古いものから消費・買い足しを行うことで、備蓄品の期限切れを防ぎつつ、常に一定量のストックを維持する「日常備蓄」の防災対策です。
【拍車段階】パニックを「加速」させる人の要因と対策
この段階の人は、情報そのものよりも「他人の行動」に脳がジャックされてしまうタイプです。
心理的要因
- 社会的証明への同調:「みんなが買っているなら、それが正解だ」と脳が判断する仕組みが強い状態です。つまり、ミラーニューロンの働きが強くなっています。
- 防衛的・合理的な判断:「デマだとは思うが、みんなが買い占めたせいで、本当に必要な時に自分が買えなくなるのが一番困る」という、二次的な不足への恐怖です。
対策方法:脳を「隔離」する
- SNSデトックス(情報の遮断):
タイムラインに流れる「空の棚」や「行列」の画像を目にします。そして、この画像は、見るだけで脳をパニックモードに引きずり込みます。そのため、騒動の時は意識的にSNSを閉じ、物理的な行列を見ないようにします。 - 「非同調」のメリットを考える:
「今、行列に並んで2時間消耗するコスト」と「1週間後に落ち着いてから5分で買うメリット」を天秤にかけます。そして、あえて「群れから離れる」ことを自分の中で「賢い選択」として定義し直します。
まとめ
ここまで、脳のハイジャックにより起きるパニックがどう拡散過程、対策について説明しました。まず、拡散過程について、第1フェーズの火種は「真剣すぎる生存本能」、第2フェーズのSNSによる「恐怖の増幅」と可視化、第3フェーズの冷静な人の「合理的なパニック」を説明しました。次に、対策について、パニックの「火種」になる人の要因と対策、パニックを「加速」させる人の要因と対策、パニックを「加速」させる人の要因と対策を説明しました。
ここまでパニック状態に至るまでの火種からの要因と状況を説明してきました。そして、すべてのステップで人間の本能が関係していました。そして、いつもは冷静な人も最終段階ではパニックになることもあることが示されました。これは、扁桃体の感じる恐怖と冷静に考える前頭前野の攻防というようにも捉えることができます。それゆえ、SNSの個人の声ではなく、情報源に戻ることが重要になります。つまり、メーカーの公式発表や経済産業省などの公的機関の「在庫は十分あります」という数字(客観的な事実)です。そして、情報源に戻ることを脳に叩き込むことが重要になると考えられます。
また、脳がパニックになると酸素不足になるようです。そして、前頭前野(理性)が働かなくなります。そのため、深く息を吐くことで副交感神経を刺激し、ハイジャックされた主導権を理性に取り戻すことも必要です。そして、「あ、今自分の脳がハイジャックされているな」と客観的に自分を実況中継して冷静になることも重要な気がしました。

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