人と仲良くなるきっかけには、うまくいった話よりも失敗談を共有した瞬間の方が距離が縮まっていることがあります。例えば、仕事でやらかした話、学生時代の黒歴史、勘違いして恥をかいたエピソードなどです。そして、こうした失敗談を打ち明けると相手が笑ってくれたりします。また、「自分も似たようなことがあって…」と話してくれることもあります。そうして、一気に空気が柔らかくなることがあります。そこで、なぜ、失敗というネガティブな出来事が コミュニケーションを強くするのかという疑問が浮かびます。
そこで、このブログでは、失敗談が人間関係を深める心理メカニズムに注目することにしました。そして、類似性、自己開示、恥の軽減、ナラティブ、温かさ、支援活動について調べましたので以下に説明します。
失敗談は「類似性の法則」を強く刺激する
人には、自分と似た人に好意を持ちやすいという類似性の法則が当てはまります。そして、失敗談は、強みや成功よりも、「自分もそういうことある」と感じやすい共通点を提供します。例えば、以下のような事柄です。
- 同じようなミス
- 同じような勘違い
- 同じような恥ずかしさ
そして、こうした共通点は、「この人は自分と同じ側の人だ」という感覚を生み、親近感を一気に高めます。
失敗談は「自己開示」の中でも“信頼度の高い情報”
自己開示にはレベルがあります。なお、前のブログ弱みを見せすぎると逆効果になる境界線:心理学が示す“適量”とは で取り上げています。関心がある場合は参照してください。
自己開示の段階
- 表面的な情報(趣味・好きな食べ物)
- 少し深い情報(価値観・考え方)
- 脆弱な情報(失敗・コンプレックス・恥ずかしい経験)
- 最深層(トラウマ・深刻な悩み)
また、失敗談はこの「脆弱な情報」に属します。そして、脆弱な情報を開示すると、相手は次のように感じます。
- 信頼されている
- 心を開いてくれている
- 自分も本音を話していいかもしれない
そして、その結果心理的安全性を生み、コミュニケーションが一気に深まることがあります。
失敗談は「恥の軽減」を共有する行為
失敗には恥が伴います。しかし、失敗談を話すことで、その恥が「笑い」や「共感」に変わります。そこで、以下のように思えます。
- 自分だけじゃない
- みんな何かしらやらかしている
- 失敗しても大丈夫だと思える
そして、この「恥の軽減」は、話し手だけでなく、聞き手にも作用します。そこで、聞き手は、「この人の前なら、自分も失敗していい」と感じるようになります。そして、関係性が柔らかく、強くなっていきます。
失敗談は「ナラティブ(物語)」を共有する
人は、他者を「物語」で理解します。つまり、失敗談は、その人の物語の“人間らしい部分”を見せる行為になります。例えば、以下のような失敗談がそう言えます。
- うまくいかなかった過去
- そこからどう感じたか
- どう立ち直ったか、あるいはまだ立ち直れていないか
そして、こうした物語は、聞き手の中に「この人の人生に少し関わった」という感覚を生みます。つまり、物語が重なると、「この人とは話が合う」「この人のことをもっと知りたい」という感情が生まれます。そして、コミュニケーションが深まります。
失敗談は「ウォームス(温かさ)」を伝える
社会心理学では、人は他者を評価するとき、有能さよりも温かさを重視すると言われています。つまり、失敗談は、以下のようなという「温かさのシグナル」を強く伝えます。
- 完璧ではない
- 人間らしい
- 自分と同じように悩む
そして、その結果、相手は話し手を「信頼できる」「安心できる」存在として認識します。そして、その結果、コミュニケーションが深まります。
失敗談は「支援行動」を引き出し、好意を強化する
失敗談を聞いた相手は、以下のような支援行動を取りやすくなります。
- 励ましたくなる
- 共感したくなる
- 自分の経験を話したくなる
また、人は「助けた相手」を好きになる傾向があります。そして、これは、自分の行動を正当化するために、「この人は良い人だ」と認知を調整する心理が働くからです。つまり、失敗談を話す → 相手が支援する → 相手の中で好意が強化されるという流れが生まれます。
まとめ
内容の整理
ここまで、類似性、自己開示、恥の軽減、ナラティブ、温かさ、支援活動について説明しました。まず、類似性について、失敗談は「類似性の法則」を強く刺激するを説明しました。つぎに、自己開示について、失敗談は「自己開示」の中でも“信頼度の高い情報”を説明しました。続いて、恥の軽減について、失敗談は「恥の軽減」を共有する行為を説明しました。加えて、ナラティブについて、失敗談は「ナラティブ(物語)」を共有するを説明しました。続いて、温かさについて、失敗談は「ウォームス(温かさ)」を伝えるを説明しました。最後に、支援活動について、失敗談は「支援行動」を引き出し、好意を強化するを説明しました。
まとめ
まず、失敗談がコミュニケーションを強くするのは、単に「面白いから」でも「ネタになるから」でもありませんでした。そして、そこには、以下の心理メカニズムが重なっていました。
- 類似性の法則:自分と似た人を好きになる
- 自己開示:脆弱な情報の開示が信頼を生む
- 恥の軽減:失敗を共有することで安心感が生まれる
- ナラティブ心理学:物語の共有が関係性を深める
- ウォームス効果:失敗が人間らしさと温かさを伝える
- 支援行動:助けた相手を好きになる心理が働く
つまり、失敗談は、人間関係を深めるための“コミュニケーションのブースター”と言えます。そして、成功談よりも、少し笑える失敗談の方が、人を近づけます。それは、人が「完璧さ」ではなく「人間らしさ」に惹かれるからということになります。前回のブログの弱みを見せすぎると逆効果になる境界線:心理学が示す“適量”とはと多くの共通点があるような気がしました。つまり、弱みの中に失敗談が含まれ、その中の比較的軽い弱みであるような気がしました。

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