あの時、もう一つの内定先を選んでいれば、もっと輝かしいキャリアがあったのかもしれない。また、もしあの時、別の人を選んでいれば、今頃もっと幸せな結婚生活を送れていた。そして、人生の分岐点を振り返っては、「選ばなかった方の未来」がまるで正解のように感じれる。また、キラキラと輝いて見える……。そんな切ないモヤモヤを抱えていませんか?
それは、今の生活に不満があるわけでないのに、ふとした瞬間に頭をよぎる「もしも」の物語です。これは、脳内で都合よくリメイクされた「選ばなかった素晴らしい人生」です。そして、現実の泥臭い毎日とを比べています。そして、「自分の選択は間違いだったのではないか」とため息をついてしまうことになります。
しかし、安心してください。あなたが過去を振り返って後悔してしまうのは、決断力が足りないからでも、今の人生をないがしろにしているからでもないようです。実は、脳が「現実のコスト」と「妄想の理想」をありえないほど不公平に戦わせている、脳の防衛本能(バグ)の仕業のようです。そして、人は選ばなかった選択肢を都合よく美化してしまっていることになります
このブログでは、「選ばなかった方が輝いて見え」てしまう要因、その対応策、その際の脳の動きについて調べましたので以下に説明します。そして、自分が選んだ「今の道」をもう一度愛せるようになることを目ざしています。
「選ばなかった方」が輝いて見える要因
心理学的免疫システム(Psychological Immune System)の片落ち
概要:心理学的免疫システム
- 「選んだ道」を守る免疫システム
- 人間には、自分が下した決断を「これで良かったんだ!」と正当化し、メンタルを守る「心理学的免疫システム」が備わっています。そして、辛い職場でも「給料はいいし」「スキルは身につくし」と言い訳を探すのがこれです。
- 選ばなかった方には「免疫」が働かないパラドックス
- しかし、選ばなかった選択肢に対してはこの免疫システムが作動しません。 なぜなら、実際に体験していないので「傷つく(不満に直面する)」ことがないからです。
- 結果として、選んだ道は「免疫でなんとか保っている状態」です。しかし、選ばなかった道は「無菌室で守られた綺麗なままの状態」になります。その結果、後者の方が魅力的に見えてしまうという心理的バグが起こります。
影響について
- 内容: 人間の脳には、自分が「選んだ方」の不満や欠点に直面します。その際、メンタルを保つために「これで良かったんだ」と言い訳を見つける防衛本能があります。そして、これを「心理学的免疫システム」と呼びます。
- 具体化: しかし、「選ばなかった方」に対してはこの免疫システムが働きません。 実際に選んでいないのでその選択肢に存在しているリアルな泥臭さや欠点を体験していません。例えば、転職先の人間関係の悪さなどを体験していません。そのため、脳内で良いところだけが純化されてしまいます。
現実(コスト・欠点)vs 妄想(100%の理想)
- 内容: 自分が「選んだ道」には、日々の満員電車や上司の小言、生活のリアルな「コスト(欠点)」が100%ついて回ります。
- 具体化: 一方で「選ばなかった道」は、脳内というファンタジーの世界にしか存在しません。そのため、すべての欠点が削ぎ落とされた「100%ピュアな理想郷」になります。つまり、「現実の泥臭い道」が「妄想の綺麗な道」に勝てるわけがないという、脳内の不公平なバトルです。
反事実的思考(Counterfactual Thinking)と記憶の改ざん
- 内容: 「もし〜だったら」と過去をシミュレーションする脳の働きがあります。これは、「反事実的思考」と呼ばれています。そして、脳は、過去の記憶を思い出すたびに、そのデータを都合よく書き換える性質があります。
- 具体化: 思い出すたびに「選ばなかった方」に都合の良いエピソードが付け足されます。そして、記憶の中でどんどん美化が加速していくバグです。
対応策:過去のゴーストを消し去る3つの脳科学処方箋
選ばなかった方の「リアルな地獄」を書き出す:ファンタジーの解体
脳内で美化されている選択肢(例:別の会社、別の恋人)を選んでいた場合について考えます。それは、高確率で直面したであろう「リアルな泥臭さ、デメリット、新たな人間関係のストレス」です。そして、これをあえて3つ以上ノートに書き殴ります。これにより、脳の無菌室に「現実のウイルス」を注入し、美化の魔法を強制的に解きます。
「あ、また脳が映画を再生してる」と実況する:ラベル貼り(客観視)
過去を美化して切なくなったら、客観視するようにします。そして、これは今の人生に不満があるんではない。単に、脳のDMNが『もしものフィクション映画』を上映しているだけ。このように心の中で実況中継(ラベル貼り)します。つまり、主観から一歩引くことで、切ない感情の波に飲み込まれなくなります。
「過去のシミュレーション」を「未来の作戦」に変換する:エネルギーの再配分
「あの時どうすれば」と過去を予測しようとする脳の強力なエネルギーがあります。これを、「じゃあ、今この場所から、自分の人生を1%面白くするために何ができるか?」という未来への作戦(CENの起動)へと強制的にシフトさせます。そこで、今夜やりたいこと、今週末の予定を具体的に1つ決めます。そして、これだけで、脳のモードは過去から現在へと引き戻されます。
通常状態から「選ばなかった過去」を美化して落ち込むまでの脳の動き
フェーズ1:通常状態
1番目の段階は、今を生きている通常状態になります。
- 脳の動き: あなたの脳は、目の前の仕事や日常に集中しています。この時は過去の未練など1ミリも考えていません。なお、この状態は、CEN(セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク)と呼ばれるものです。そして、私たちが仕事、勉強、問題解決など、意識的に何かに集中したり判断したりする際に活発化する脳の神経ネットワークです。
フェーズ2:トリガーの発動
2番目の段階は、現在の「退屈」や「小さなストレス」がある状態です。
- 脳の動き: 仕事で少し嫌なことがあった。または、なんとなく将来が不安になった。このようなことおきます。すると、この瞬間、脳のセンサー(サリエンス・ネットワーク)が反応します。そして、現在の不快感を和らげるために、脳をアイドリング状態へ切り替えます。なお、アイドリング状態は脳で、DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が働いている状態です。
フェーズ3:不公平な比較の始まり
3番目の段階は、過去の記憶のつまみ食いしている状態になります。
- 脳の動き: DMNが活発になります。すると、脳は過去の記憶から「別の選択肢のポジティブな情報」だけをつまみ食いします。
- ここがバグ!:自分が「選んだ道」には、日々の満員電車や人間関係のストレスなどがあります。つまり、「リアルな欠点(コスト)」が100%紐づいています。しかし、「選ばなかった道」は脳内のファンタジーです。そのため、欠点がすべて脱色された「100%ピュアな理想郷」になります。そこで、脳は「泥臭い現実」と「完璧な妄想」を同じ土俵で戦わせるという、絶対勝てない不公平なバトルを開始します。
フェーズ4:切ない後悔と脳内リメイクの完成
4番目の段階は、選ばなかった方がよく思える状態になります。
- 脳の動き: 脳内で何度も「もしあっちを選んでいたら…」と妄想をリプレイします。つまり、反事実的思考になります。そして、その妄想のデータが「本物の記憶」のように強化され、現在の人生に対する深い溜め息(後悔)へと変わります。
まとめ
ここまで、選ばなかった方が輝いて見える要因、対応策、その際の脳の動きについて説明しました。まず、その要因について、心理学的免疫システムの片落ち、現実vs 妄想、反事実的思考と記憶の改ざんについて説明しました。次に、対処策として、選ばなかった方の「リアルな地獄」を書き出す、客観視、「過去のシミュレーション」を「未来の作戦」に変換するを説明しました。最後に、脳の動きとして、通常状態、トリガーの発動、不公平な比較の始まり、切ない後悔と脳内リメイクの完成を説明しました。
まず、あなたが選ばなかった方が輝いて見えるのは、決断力が足りないからでも、今の人生をないがしろにしているからでもありませんでした。それは、現実のリアルな重みと戦っているからこそ起きる現象です。そして、脳はあなたをちょっとだけ現実逃避させるために「選ばなかった美しい物語」を見せているだけです。しかし、その物語は、今のあなたを否定するものではありません。つまり、あなたが過去を美化してしまうのは、あなたが今、一生懸命に生きている証拠になります。そして、対策を行いこれを脳のバグとして捉え、笑い飛ばすようにできれば楽になれるような気がしました。
私も、選ばなかったこと、もしくは、やらないと判断したことを思い起こすことがあります。しかし、今更どうにもならないと考え直していました。それが大きくは間違っていなかったような気がしました。そして、これより先のことに意識を向ける重要性を実感しました。


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