1973年のオイルショック、2020年のパンデミックによる原油価格高騰などがありました。このように、形を変えて繰り返される「棚から紙が消える」光景がありました。そして、今、イラン情勢のため原油不足、トイレットペーパーが買い占めの報道がありました。しかし、冷静に見ればデマだとわかるはずなのに、なぜか多くの人がスーパーに向かっています。そして、「自分も」この猛烈な焦燥感の正体は何でしょうか?なお、前回のブログでは、「安心を買っているはずが、不安を招く?ストックが増え続ける人の心理学と賢い付き合い方」でストックについて書いています。
そこで、今回、原油ショックから現代まで繰り返される「購入パニック」の裏に潜む、集団心理のメカニズムに注目しました。そして、脳の防衛本能と、現代特有の「SNSエコーチェンバー現象」が引き起こすパニックのメカニズムについて調べました。トイレットペーパー騒動がもたらすパニックの要因、隠れたコスト、脳の動きについて以下に説明します。
パニックが広がる3つの段階
第1段階
火種の段階です。デマや不確実なニュースにより小さな不安がSNSなどで可視化されます。
第2段階
増幅される段階です。ニュースで流れる「空の棚」や「行列」を見ることで視覚的トリガーを受けます。そして、脳が「戦時モード」に切り替わります。
第3段階
正当化される段階です。冷静な人さえも「念のため」「家族のために」と自分を正当化します。そして、列に並び始めてしまいます。これは、生存本能によるものです。
【心理的要因】なぜ「トイレットペーパー」なのか?
個人のストック心理が、社会不安の中でどう変質するかについて説明します。
- 「視覚的空白」による扁桃体(不安中枢)の刺激
- トイレットペーパーは1つが大きく、数個売れるだけで棚に大きな「穴」が開きます。そして、この視覚的な欠乏情報が、脳の扁桃体に「生存の危機」をダイレクトに伝えます。
- ゼロリスク志向とコントロールの回復
- 国際情勢や原油価格は個人では制御できません。しかし、「紙を買う」行為は、自分で完結できる「自分を守る具体的な行動」です。つまり、無力感から逃れるための代替行為としての購入になります。
- 社会的証明(Social Proof)
- 「みんなが買っている=それが正解だ」と脳が判断します。これは、合理的な思考よりも、周囲に合わせる本能が勝ってしまう瞬間です。
【現代の加速装置】SNSとパニックの関係
SNSがどのように人々の不安を増幅させるかを説明します。そして、そこでは「賢い人」さえもパニックに巻き込むかについても説明します。
- エコーチェンバー(共鳴)現象
- SNSでは自分と似た不安を持つ人の投稿が優先的に表示されます。そして、「紙がない」という少数の投稿が、タイムラインを埋め尽くします。その結果、「世の中のすべてがそうなっている」という錯覚を生みます。
- 善意の拡散が招く「情報のカスケード」
- 「デマだから気をつけて!」という注意喚起の投稿があります。しかし、「トイレットペーパー」という言葉と空の棚の画像をセットで拡散されます。そして、結果として不安を広げる燃料になってしまいます。
- 「デジタルな行列」の可視化
- 昔は店舗に行かなければ行列は見えませんでした。しかし、今はスマホの中で「売り切れ」文字や行列写真をリアルタイムで見てしまいます。これがFOMO(取り残される恐怖)を最大化させます。
隠れたコスト:パニック買いが招く「二次被害」
- 価格のつり上がりと機会損失: 転売ヤーの横行や、本当に必要な人に届かない社会的コストがあります。例えば、本当に必要な人には高齢者や医療施設などがあります。
- 脳の疲弊: 常に「在庫情報」をスマホで追いかけ続けます。そして、この行為により、脳のワーキングメモリが占領されてしまいます。その結果、冷静な判断力がさらに低下するコストがあります。
トイレットペーパー騒動の時の脳
扁桃体による「生存本能」のハイジャック
通常、私たちは「トイレットペーパーがなくても死ぬわけではない」と理性で理解しています。しかし、パニック時は脳の奥にある「扁桃体」が主導権を握ります。
- 「空の棚」という視覚的ショック:
SNSで拡散される「空っぽの棚」の画像は、脳にとって強力なストレス因子です。そして、これを見た瞬間、扁桃体は「生存に必要な資源が枯渇した!」と誤認します。そこで、強力な不安信号を発信します。 - 理性のシャットダウン:
扁桃体が興奮すると、論理的思考を司る「前頭前野」の働きが抑制されます。そして、「デマかもしれない」「在庫はあるはずだ」という冷静な判断ができなくなります。そこで、「とにかく確保せよ」という本能的な命令が優先されます。
「社会的証明」による脳の同調
脳には、周囲の行動を模倣しようとする「ミラーニューロン」があります。また、集団から外れることを恐れる仕組みもあります。
- 「みんな」が正しいという誤解:
SNSで「行列」や「カートいっぱいの紙」の写真を見ます。すると、脳は「自分だけが知らない重要な情報があるに違いない」と判断します。そして、これを社会的証明と呼びます。 - 報酬系と安堵感:
行列に並んで商品を確保した瞬間、脳内ではドーパミンが放出されます。これは「危機を回避した」という報酬です。また、SNSで「買えました!」と報告する行為も、この達成感を強化します。そして、さらなるパニックの連鎖(他者への刺激)を生んでしまいます。
SNSが引き起こす「情報の過負荷」と認知の歪み
現代特有の現象として、スマホを通じた情報の入り方が脳をパニックに陥れやすくしています。
- 可用性ヒューリスティックの罠:
脳は「目立つ情報」を「頻度が高い・重要だ」と勘違いするクセがあります。そこで、SNSで何度も「品切れ」の投稿を目にします。すると、実際には一部の店舗だけの出来事であっても、脳内では「世界中から紙が消えた」という極端な認知の歪みが発生します。 - FOMO(取り残される恐怖)の増幅:
SNSはリアルタイム性が高いものです。そのため、「今行かないとなくなる」という時間的プレッシャーを脳に与え続けます。そして、この焦燥感は脳にとって大きな負荷となります。その結果、IQが一時的に低下した、目先の利益しか考えられない状態に陥ります。
内容の整理とまとめ
内容の整理
ここまで、トイレットペーパー騒動がもたらすパニックの要因と脳の動きについて説明しました。まず、パニックについて、パニックの拡散のステップ、要因について、心理的要因、SNSとパニックの関係について説明しました。次に、隠れたコストについて、価格のつり上がりと機会損失、脳の疲弊を説明しました。最後に、脳の動きとして、扁桃体による「生存本能」のハイジャック、「社会的証明」による脳の同調、SNSが引き起こす「情報の過負荷」と認知の歪みを説明しました。
まず、なぜトイレットペーパーなのかと思っていましたが理解できました。無くなった時の視覚のインパクトが大きいという要因には気がつきませんでした。しかし、トイレットペーパーの国内自給率は97%以上という事実には反する行動でした。そのため、国内自給率が高いなどの情報原の内容を確認することの重要性がわかりました。
まとめ
前回のブログでも示しましたが、「適正な備蓄」を日常から持つという「ローリングストック」をしていれば、騒動を静観できるような気がしました。また、不安な時ほどスマホを置き、目の前の「ローリングストック」を確認して脳を安心させるSNSデトックスの重要性も感じました。
そして、現在のイラン情勢の原油不足が専門家以外に何に影響があるかがわからない状態です。例えば、ナフサが影響を受けると言われてもナフサが何の原料になるかはわかりません。報道で知ることになります。このような状況でも、パニックにならず行動することが重要な気がします。パニックになって特定の人の使われないストックになってしまうよりは、多くの人が安心を担保できることの方が良いような気がします。

コメント