「このサプリは体にいいです」と言われるより、「利用者の92%が効果を実感!」と言われた方が信用してしまうような気がします。そして、「限定10個」という文字を見ただけで、欲しくもなかった物を買ってしまった。加えて、「満足度98%」という広告を見て、他の選択肢を検討するのをやめた。このようなことはよくありそうです。また、私たちの日常は、数字に溢れています。そして驚くほど簡単に、その数字によって行動をコントロールされています。
そして、私たちの脳は、複雑な説明を聞くよりも、パッと見てわかる「数字」を好みます。また、数字は脳にとって、考える手間を省く「情報のファストフード」のようなものです。なぜ、私たちはこれほどまでに数字に弱いのでしょうか?それは、あなたの数学的センスがないからではなく、人間の脳が「数字を信じるように設計されているから」かもしれません。そして、今回、行動経済学の視点から、数字が私たちの判断を狂わせる「魔法の力」の正体について調べました。
このブログでは、なぜ人は数字に弱いのかについて、数字の心理学的な影響、脳は数字を「ショートカット」に使う、数字に操られるマーケティングの罠、数字の「罠」を見抜くコツ、「数字に強い人」と「弱い人」の差について調べましたので以下に説明します。
”数字に弱い”心理学的な影響
- アンカリング効果: 最初に提示された数字(定価1万円が今なら3千円!)が「基準(アンカー)」になります。そして、その後の判断が歪められる現象です。
- 客観性の錯覚: 数字は「事実」に見えるため、疑いを持つのが難しくなります。そして、たとえ根拠が薄くても、数字が入っているだけで脳は「正しい」と判断しがちです。
- 社会的比較とドーパミン: テストの点数、いいね数、年収など、数字は「他人との比較」を可視化します。そして、数値が上がった瞬間に脳内でドーパミン(報酬系)が出ます。そのため、数字を追うこと自体が目的化(依存)してしまいます。
脳は数字を「ショートカット」に使う
なぜ脳が数字を無批判に受け入れてしまうのか、その省エネメカニズムについて説明します。
- 直感 vs 論理(システム1とシステム2): 心理学者ダニエル・カーネマンの理論(後述)
- 脳は、エネルギーを使う「論理的思考(システム2)」を嫌います。そして、パッと判断できる「直感的思考(システム1)」を優先します。
- 数字は「精密」「正確」というイメージが強くあります。そして、そのため、脳は中身を検証せずに「これは正しい」と判断をショートカットしてしまいます。
- 客観性のマジック:
「とても多い」は主観ですが、「10,000人」は客観的に見えます。そして、この「数字=客観的な事実」という思い込みが、ガードを下げさせてしまいます。
数字に操られるマーケティングの罠
実際に世の中で使われている心理テクニックを説明します。
- アンカリング効果:
最初に「10万円」という数字を見せられます。すると、次に見た「5万円」が安く感じてしまいます。このように、最初の数字が心の「錨(アンカー)」になる仕組みです。なお、アンカリング効果については以前のブログ「アンカリング効果 最初の情報に縛られてしまう心理」で取り上げています。興味がある場合は参照してください。 - フレーミング効果:
同じ事実でも数字の見せ方で印象を変える手法です。- 「生存率90%」と言われると安心します。しかし、「10人に1人が死ぬ」と言われると怖くなります。つまり、中身は同じでも、数字の「枠組み(フレーム)」で感情は操作されます。
- 希少性の原理:
「残り3個」という数字があります。また、数が減っているという情報だけで、脳は「価値があるものだ」と誤認します。そして、奪い合いに参加しようとしてしまいます。
数字の「罠」を見抜くコツ
明日から使える「防御術」について説明します。
- 「分母」を確認する:
「満足度100%」とあっても、回答者が3人だけなら意味がありません。つまり、数字の裏側にある「母数」を見る癖を推奨します。 - 「単位」を変換してみる:
「年間で36,500円お得!」と言われると大きく感じます。しかし、「1日100円」と言い換えると、「そこまででもないな」と冷静になれます。 - 「なぜこの数字を出したのか?」と自問する:
数字は、誰かの意図を持って提示されることが多いと意識させます。そして、誰かの意図とは、買わせたい、信じさせたいなどがあります。
「数字に強い人」と「弱い人」の差について
脳の使い方:直感(システム1)vs 論理(システム2)
心理学者のダニエル・カーネマンが提唱した「二重過程理論」を説明します。なお、この「二重過程理論」(システム1、システム2)については、以前のブログで取り上げています。「素早く判断 いろいろなヒューリスティック」、「「いかにも!」で判断を誤る心理 :代表性ヒューリスティック」を参照してください。
- 数字に弱い人:【システム1(直感)を優先】
数字を「感情的な刺激」として受け取ります。まず、「90%オフ」「限定3個」という数字を見た瞬間、脳の扁桃体(感情)が反応します。そして、「すごい!」「急がなきゃ!」という興奮が理性を上回ってしまいます。 - 数字に強い人:【システム2(論理)を起動】
数字を見た瞬間に、あえて一呼吸置いて前頭前野(理性)を起動させます。そこで、「なぜこの数字が提示されているのか?」という背景を疑う癖がついています。そして、脳のエネルギーを使って「計算」や「比較」モードに入ります。
視点の違い:単一の数字 vs 比較の構造
- 数字に弱い人:【点で見ている】
提示された数字をそのまま「絶対的な事実」として受け取ります。- 例:「満足度95%」→「ほとんどの人が満足しているんだ!」と素直に感動します。
- 数字に強い人:【線や面で見ている】
数字の「裏側」や「比較対象」を無意識に探します。- 例:「満足度95%」→「分母は何人?」「残りの5%はどういう不満を持った?」「他の類似商品は何%?」という確認をします。そして、相対的な位置関係を確認します。
リテラシーの違い:平均の罠と中央値
- 数字に弱い人:【平均という言葉に安心する】
「平均年収」や「平均寿命」などの「平均」を用いた言葉があります。そして、これらの数値を自分にそのまま当てはまる「中央の数値」だと思い込みがちです。 - 数字に強い人:【データの偏りを疑う】
一部の極端な数値(億万長者など)が平均を釣り上げている可能性を知っています。そのため、「平均」よりも「中央値」や「最頻値」を重視します。そして、実態に近い数字を探ろうとします。
感情のコントロール:ドーパミンとの付き合い方
- 数字に弱い人:【数字に支配される】
SNSの「いいね」やスマホの歩数、貯金額など、「増えていく数字」に脳の報酬系(側坐核)が強く反応しすぎてしまいます。そして、数字を上げること自体が目的になり、本来の目的を見失いがちです。なお、本来の目的は、楽しむ、健康になるなどです。 - 数字に強い人:【数字を計測器として使う】
数字はあくまで現状を把握するための「定規」に過ぎないと割り切っています。そして、数字に一喜一憂せず、目標達成のための客観的なデータとして「利用」します。
数字に強くなるためのトレーニング
- 「分母は何?」と唱える:
大きな数字に出会ったら、必ず「全体のうちの何人(何個)か」を確認するようにします。 - 単位を自分の生活に置き換える: 「
「年間12万円の節約」を「1日約330円(コーヒー1杯分)」に変換します。そして、実感を伴わせるようにします。 - 「3秒待つ」:
魅力的な数字を見て「欲しい!」と思ったら、3秒間だけ目を逸らします。ただ、これだけで、暴走した扁桃体が落ち着き、前頭前野が主導権を取り戻せます。
内容の整理とまとめ
内容の整理
ここまでこのブログでは、なぜ人は数字に弱いのかについて、”数字に弱い”心理学的な影響、脳は数字を「ショートカット」に使う、数字に操られるマーケティングの罠、数字の「罠」を見抜くコツ、「数字に強い人」と「弱い人」の差、数字に強くなるためのトレーニングについて説明しました。
まず、”数字に弱い”心理学的な影響について、アンカリング効果、客観性の錯覚、希少性の原理を説明しました。次に、脳は数字を「ショートカット」に使うについて、直感 vs 論理(システム1とシステム2)、客観性のマジックを説明しました。そして、数字に操られるマーケティングの罠について、アンカリング効果、フレーミング効果、希少性の原理を説明しました。
更に、数字の「罠」を見抜くコツについて、「分母」を確認する、「単位」を変換してみる、「なぜこの数字を出したのか?」と自問するを説明しました。加えて、「数字に強い人」と「弱い人」の差について、脳の使い方、視点の違い、リテラシーの違い、感情のコントロールについて説明しました。最後に、数字に強くなるためのトレーニングについて、「分母は何?」と唱える、単位を自分の生活に置き換える、3秒待つを説明しました。
まとめ
まず、数字は便利な「道具」であって、あなたの「価値」を決めるものではないと捉えます。例えば、SNSのフォロワー数、年収、体重などがあります。しかし、それらはあなたの人生のほんの一部を表す数字に過ぎないものです。そのため、数字に怯えたり、盲信したりする必要はないのです。つまり、自分の人生をより良くするための便利な「ツール」のようなものです。そして、使いこなすことが大切になると考えられます。
私は数字に弱い方ではありません。そのため、強い人のデメリットが強く出ているような気がします。ただし、数字に弱いことで説明した部分に該当する部分もあります。そのため、いろいろ参考になりそうな部分をつまみ食いして、個人個人に合わせて使うことが良いような気がしました。

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