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また同じ車両の電車に乗っている…:現状維持バイアス

心理
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 現状の仕事には不満があるが、変化への漠然とした不安から転職をためらってしまう。また、通勤、通学で慣れ親しんだ経路や、同じ時刻の同じ車両の電車に乗ってしまう。加えて、失敗を恐れて新しいやり方を取り入れずそのままの方法を続けてしまう。このような変化への不安から新しいことができないことを現状維持バイアスと言います。私にはこれらの行動は想像がつくのですが、現状維持バイアスという現象として定義されているものがあることは知りませんでした。

 今回のブログでは、現状維持バイアスについて、どういうものか、なぜ起きるのか、日常生活の例、乗り越えるための方法、脳機能との関係などについて調べたので説明します。

現状維持バイアスとは

 現状維持バイアスとは、リスクや失敗を避けたい、あるいは変化への不安から、客観的に見ればより良い選択肢があるにも関わらず、現在の状態をそのまま維持しようとする心理傾向のことです。心理学や行動経済学の分野で知られる認知バイアスの一つで、日常生活の小さな選択から企業の組織改革、マーケティング施策など幅広い場面で影響を与えます。

 現状維持バイアスは、人間が変化を避け、現状を維持しようとする心理的な傾向です。また、私たちは、新しい選択肢や変化には潜在的なリスクや不確実性があると感じます。そして、たとえ現状が最適でなくても、慣れ親しんだ状態を選びがちになります。

なぜ現状維持バイアスが起こるのか?

 このバイアスには、主に以下の心理が関係しています。

  • 認知的負荷の軽減: 変化には、新しい知識を学んだり、新しい環境に適応したりするためのエネルギーが必要です。そのため、現状維持を選ぶことで、こうした精神的な負担(認知的負荷)を避けようとします。
  • 損失回避の心理: 新しいことに挑戦して失敗するリスクを避けたいという心理が働きます。つまり、私たちは利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛をより強く感じます。そして、変化に伴う損失の可能性を過大評価してしまいます。なお、損失回避については、以前のブログ「投資・買い物・仕事など幅広く使える:損失回避」で取り上げています。

日常生活における例

  • 転職をためらう: 「今の仕事には不満もあるけど、新しい会社に馴染めるか不安を感じます。そして、給料が下がるかもしれない」と考えて、転職に踏み切れません。
  • 携帯電話の機種変更: 「新しい機種は機能が多すぎて使い方が難しそうと感じます。そして、今の機種でも特に困っていない」と、古い機種を使い続けてしまいます。
  • 投資や貯蓄: 「今はリスクを取りたくない」と、金利の低い預金口座に貯金をそのままにします。そして、より高いリターンが得られる可能性のある投資を始めません。

現状維持バイアスを乗り越えるには

  1. 変化に伴うメリットとデメリットを具体的に書き出す: 感情的な不安ではなく、客観的な事実に基づいて判断します。それにより、より合理的な選択ができるようになります。
  2. 小さな変化から始める: いきなり大きな変化に挑戦することはしません。まず、小さな一歩から始めて、変化に慣れていくようにします。
  3. 「もし変化しなかったら?」を考える: 現状を維持し続けた場合に失う機会(機会費用)について考えます。これにより、現状維持のリスクに気づくことができます。

 現状維持バイアスを理解することで、より柔軟な思考で物事を捉えます。そして、変化を恐れずに新しい選択ができるようになります。

現状維持バイアスと脳の関係

損失回避と扁桃体

 扁桃体は、危険や恐怖などの感情反応を司る脳の部位です。新しい選択肢や変化には、潜在的なリスクや不確実性が伴います。そして、この不確実性が、脳に「危険だ」と認識され、扁桃体が活性化します。これにより、人は不安や恐怖を感じ、変化を避け、現状に留まろうとする心理が強まります。

 認知的負荷と前頭前野

 前頭前野は、論理的な思考や意思決定、計画立案といった高度な認知機能を担当しています。変化には、新しい情報を学び、異なる判断を下すためのエネルギーが必要です。つまり、現状維持は、認知的負荷を最小限に抑え、脳のエネルギーを節約につながります。そして、前頭前野は「楽な道」を選びたがる傾向があるため、現状維持バイアスが働きます。

ドーパミンと報酬予測

 ドーパミンは、快感や報酬と結びつく神経伝達物質です。現状維持で得られる予測可能な報酬(安定した生活など)は、脳の報酬系を活性化させます。一方、変化に伴う不確実な報酬は、脳が正確に予測することが難しくなります。そして、ドーパミンの分泌が不安定になりがちです。この予測の不安定さが、現状維持を選択する理由の一つとなります。

まとめ

 ここまで現状維持バイアスについて、日常生活の例、対策、脳との関係などに説明しました。そして、現状維持バイアスは、人間が変化を避け、現状を維持しようとする心理的な傾向ということを説明しました。そして、新しい選択肢や変化には潜在的なリスクや不確実性があると感じ、たとえ現状が最適でなくても、慣れ親しんだ状態を選びがちになることも説明しました。また、脳内では、新しい選択肢や変化には不確実性が伴い危険だと認識され扁桃体が活性化します。そして、前頭前野は「楽な道」を選びやすく現状維持バイアスが働きます。現状維持バイアスが働くことでドーパミンの分櫃が安定します。

 これらの脳の働きが相互に作用し、私たちは無意識のうちに「慣れ親しんだ現状」をより安全で魅力的なものだと感じ、変化を避ける傾向が強まります。しかし、必ずしも正しい選択ではありません。そのためどこかで客観的な見方を持つことが必要な気がしました。

 

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