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“なんとなく不安”はどこから生まれるのか?

心理
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 「特に何かあったわけじゃないのに、なんとなく不安…」ということが私にはあります。ただ、予定も順調、トラブルもないのに、胸の奥がざわざわしてしまう。そんな気持ちになったことはありませんでしょうか? そして、特に問題もないのに、不安になるのはなぜでしょう?本当に、「理由がない不安」ほどやっかいなものはないような気がします。しかし、その感情は、実は脳があなたを守ろうとしているサインらしいです。

 このブログでは、この“理由のない不安”について脳のはたらきがどのように不安を作り出しているのか、何となく不安になりやすい理由、この不安と付き合う方法などについて調べました。以下にこれらの内容について説明します。

不安は「危険を回避するためのアラーム」

 まず、不安という感情は「悪者」ではありません。そして、本来は危険を察知して身を守るためのサインです。たとえば、昔の人間にとっては「獣が潜んでいるかもしれない森」や「見知らぬ集団との接触」は命に関わるリスクでした。このとき脳は「何が起こるかわからない状況」を危険とみなします。そして、不安という感情を生み出して慎重に行動させるようにしていたのです。つまり、不安は“生き残るためのアラーム”でもあるのです。

「不安」をつくり出す脳のしくみ

 不安の中心を担うのは、脳の奥にある扁桃体(へんとうたい)という部分です。ここは「危険を察知するセンサー」です。そして、外部からの刺激に対して“怖い”や“不安”という感情を素早く発動させます。問題は、扁桃体はとても敏感だということです。たとえ、明確な危険がなくても「何か変だ」「いつもと違う」と感じるだけで反応してしまいます。次に例を示します。

  • SNSで他人の投稿を見て焦りを感じたとき。
  • 仕事が一段落して、ふと“次は何をすれば…”と考えたとき。
  • 天気が悪く、光が少ないとき。

 こうした些細な変化も、扁桃体にとっては「異常信号」として処理されます。そして、不安を生み出すきっかけになります。

「不安の連鎖」を生むのは“思考のクセ”

 不安を感じたとき、脳は「なぜ不安なのか?」と理由を探そうとします。しかし、明確な原因がない場合、人は想像で穴埋めをしてしまいます。例えば、「もしかして、あの仕事が失敗してるかも…」、「LINEの返事が遅いのは嫌われたのかな…」などです。このようにして、根拠のない不安が「思考の連鎖」によってどんどん強化されていきます。心理学ではこれを「反すう思考」と呼び、うつや不安障害にもつながることが知られています。

 注:反すう(反芻)思考とは、過去の失敗や嫌な出来事などのネガティブな事柄について、解決策を考えずに何度も繰り返し考え続けてしまう思考パターンです。もともと反芻は、まず、牛などの動物が食物(通常は植物)を口で咀嚼します。そして、反芻胃に送って部分的に消化します。その後、再び口に戻して咀嚼すします。このような過程を繰り返すことで食物を擦り潰し消化することです。

現代人が“なんとなく不安”になりやすい理由

 昔と比べて、私たちは安全で便利な生活を送っています。しかしながら、不安は減っていません。その理由の一つに、情報の過多があります。例えば、スマホの通知、ニュース、SNS、広告などです。そして、脳は常に「何か起こっている」状態にさらされ、扁桃体が休む時間がなくなります。つまり、現代社会は「常時アラーム鳴りっぱなし」の状態ということになります。この結果、明確な理由がなくても不安を感じやすくなっています。

“なんとなく不安”と脳の関係

「不安」をつくり出す中心 ― 扁桃体

 脳の奥にある扁桃体は、「恐れ」や「不安」などの感情を司る中枢です。本来は、危険を察知して命を守るために働く重要な部分です。たとえば、物音がした瞬間に体がビクッと反応するのも、扁桃体が“危険かもしれない”と判断して体を守ろうとするからです。

 しかし、現代社会では「命に関わる危険」はほとんどありません。それでも扁桃体は、仕事のストレスや将来の不確実さ、SNSの情報などにまで反応しやすくなっています。その結果、「明確な理由がないのに不安を感じる」。つまり、“なんとなく不安”という状態が生まれます。

「扁桃体」と「前頭前野」のバランスがカギ

 私たちの脳には、感情を調整する前頭前野(ぜんとうぜんや)という部分があります。前頭前野は、「理性」や「判断力」を司る場所です。そして、扁桃体の暴走を抑えるブレーキのような役割を持ちます。ところが、疲労・睡眠不足・情報過多などの影響で前頭前野の働きが弱まります。そのような状態では、扁桃体が過剰に興奮し、「なんだか不安」という状態が続きやすくなります。つまり、不安の感じやすさは扁桃体(感情)と前頭前野(理性)のバランスで決まるのです。

「未来を想像する脳」=不安を生む脳

 人間の脳は「未来を想像する能力」に優れています。これは生き延びるために非常に重要な力です。しかし、裏を返すと「起きていないことを心配できる脳」でもあります。

 とくに、脳のデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれる領域(内側前頭前野や後帯状皮質など)が過活動になるります。このような場合にと、「過去の失敗」や「まだ起きていない未来の不安」を繰り返し思い出すようになります。これが、“理由のない不安”を感じる大きな要因です。

「不安をやわらげる」ためにできること

 脳科学的に見ると、不安を完全に消すことはできません。なぜなら、不安は「危険を避けるための防衛本能」だからです。しかし、和らげることは可能です。扁桃体の過剰な反応を落ち着かせ、前頭前野を活性化することで、“不安に振り回されにくく”なります。

  • 呼吸を整える
     深呼吸をゆっくり行うことで、自律神経が整い、扁桃体の興奮を抑えます。
  • 体を動かす
     軽い運動や散歩は、セロトニン(心の安定に関わる物質)を増やします。そして、前頭前野の働きを助けます。
  • 情報を減らす
     SNSやニュースの“刺激過多”が扁桃体を疲弊させます。1日のうち「デジタル断食」時間をつくるのも有効です。
  • 「いま」に意識を戻す
     マインドフルネス(瞑想)は、DMNの過活動を抑えることが知られています。「未来を考えすぎる脳」を休ませる効果があります。
  • 考えを書き出す
     頭の中で回っている不安を“見える化”します。そして、見える化することで、思考のループを断ち切ります。

まとめ

 ここまで、“理由のない不安”について脳のはたらきがどのように不安を作り出しているのか、何となく不安になりやすい理由、この不安と付き合う方法などについて説明しました。そして、“なんとなく不安”の正体は、扁桃体が発する「生存アラーム」、理由を探そうとする脳のクセ、情報過多による刺激の蓄積といった要因の組み合わせでした。また、脳視点では扁桃体が危険に敏感になりすぎていること、前頭前野の調整力が低下していること、未来を想像する脳(DMN)が働きすぎていることの3つが重なった状態でした。

 不安があると「あ、今アラームが鳴ってるな」と気づくことが必要な気がします。そうすると、自分の心を客観的に見られるようになると、“なんとなく不安”も、少しずつ静まっていくような気がします。つまり、不安を感じやすいのは「弱さ」ではなく、脳が自分を守ろうとしている証拠であると思います。そう思えると“なんとなく不安”は少しやわらぎ、心が軽くなるような気がします。

 

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