テレビ番組を見ていて、「あれ、このタレント、Aさんに似てると思ったことはあります。また、有名人でなくてもテレビに出てきた容疑者に対してあれ!あの人に似ている。このようなことがあります。つまり、なぜかまったく接点のない赤の他人に、なぜか身近な知人の面影を探してしまっています。そして、一度気になると、その人が映るたびに知り合いの顔が浮かんでしまうこともあります。
また、「自分の錯覚かな?」と思うかもしれません。しかし、私が別の人にあの容疑者あの人に似ていない?と聞くとそう言えばという回答がありました。そして、この行動は、私たちの脳が日常的に行っている高度な情報処理が関係しているようです。
そこで、このブログでは、知らぬ間に「知らない人」と「身近な人」を結びつけてしまうことに注目しました。そして、脳の省エネとパターン認識、記憶のネットワーク、「類同性の心理」と「確証バイアス」、相貌認識について調べましたので以下に説明します。
脳は超・省エネ主義!「パターン認識」の仕組み
人間の脳は、目から入ってくる膨大な視覚情報を毎日処理しています。もし、画面の中に映る「全く知らない人」を、ゼロから新しい情報として1から10まで分析しようします。すると、脳はすぐに情報オーバーロードを起こしてしまいます。そこで、オーバーロード回避のために脳が使うのが「パターン認識」という機能です。
脳の記憶庫には、これまでに会った無数の人々の顔のデータが蓄積されています。例えば、「目・鼻・口の配置」「顔の輪郭」「表情の変化」などです。そして、未知の人物を見たとき、脳は無意識のうちに「この顔は過去のどのパターンに近いか?」を瞬時に検索します。そして、もっとも照合率が高い「身近な知人」のデータを引き出します。つまり、「似た人を探す」のは、脳がエネルギーを節約しながら素早く相手を認識するためのものです。そして、きわめて合理的なショートカット機能ということになります。
記憶のネットワークを刺激する「アソシエーション」
また、顔の造形だけでなく、人の「動き」や「声」も強力な検索キーになります。そして、ひとつの刺激から関連する記憶が次々と呼び出される現象を「アソシエーション(連想)」と呼びます。例えば、以下のようなものです。
- ミクロな共通点: まばたきの頻度、笑ったときの口元の上がり方、首の傾げ方
- 声とテンポ: 声のトーン、話し始める際の間(ま)、笑い声
テレビの有名人が見せたほんの1秒にも満たない仕草やクセが連想させます。また、あなたの脳内にある「友人Aさん」の記憶の引き出しをカチッと開けてしまうことがあります。そして、一度その引き出しが開くと、「なんだかAさんに見えてくる」という連想が生じます。
不安を解消し親近感を抱く「類同性の心理」と「確証バイアス」
また、人は「自分に似ているもの」や「自分になじみがあるもの」があります。そして、これらに対して無意識に好意や安心感を抱くことが知られています。(類同性の法則)。
そして、画面越しの完全な他人は、脳にとって「未知の存在」です。そして、そのため、わずかながら警戒の対象となります。そこで、無意識に身近な誰かの影を重ね合わせることで、「知っている存在」に変換します。そして、安心感を得ようとする心理的防衛メカニズムが働きます。一度「この人、地元のBくんに似ているな」と思うと、脳は「確証バイアス」のモードに入ります。つまり、以下のような状態になります。
- 似ている部分(例:眉毛の形、笑い方)ばかりに目が行きます。
- 似ていない部分(例:輪郭、身長)を無意識に無視をします。
そして、このバイアスが働くことで、「探せば探すほど、やっぱりBくんにしか見えない!」という状態が完成します。
脳の顔認知専門チーム「相貌認識」の働き
脳の側頭葉には、人の顔を認識するためだけに働く「紡錘状顔領域(FFA:Fusiform Face Area)」という専門の部位の紡錘状回が存在します。この部位は、単なる「物体」として顔を見るのではなく、目・鼻・口の位置関係(選好構造)を高度に処理しています。非常に感度が高いため、コンセントの穴や車のフロントグリルが人の顔に見えてしまう現象(パレイドリア現象)を引き起こすほどです。
そして、この高性能な顔認知チームが日々フル稼働しているからこそ、私たちはテレビの画面越しであっても、一瞬のうちに「あの人に似ている!」という高度な照合を行えることになります。
まとめ
ここまで、脳の省エネとパターン認識、記憶のネットワーク、「類同性の心理」と「確証バイアス」、相貌認識について説明しました。まず、脳の省エネとパターン認識について、脳の省エネのためにパターン認識を使用していることを説明しました。つぎに、記憶のネットワークについて、記憶の連想について説明しました。続いて、「類同性の心理」と「確証バイアス」について、不安を解消し親近感を抱くためにあることを説明しました。最後に、相貌認識について、人の顔を認識するための紡錘状回が存在していることを説明しました。
まず、テレビで見かけた知らない人に身近な人を重ねてしまう現象がありました。それは、脳の省エネの「パターン認識」や、安心感を求める心理的な働きによるものでした。今度、「あの人に似てるな」と感じた時があったとします。その時は、脳が過去の思い出や人間関係のデータをフル活用して、世界を理解しようとしている証拠です。そこで、「今、脳が頑張って検索中だな」と考えてみることができそうです。

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