エレベーターに乗り込んだ瞬間、行き先階ボタンよりも先に『閉』ボタンを連打しているのをテレビで見ました。そして、私も実際に見たことがあります。ただ、 1回押せば扉は閉まると頭では分かっているのに、指が止まらない……。そして、実はこれ、単なる『せっかち』や『マナー違反』の問題ではないようです。また、意味がないと知りつつ連打するその行動の裏には、脳のストレス解消が関係しているようです。また、北国育ちで、電車の扉が手動で開けて入ったらすぐ閉めないと怒られた。(ストレス)このような習慣が体に根付いてエレベーターに乗ったらすぐ閉めるようになった。このようなこともあるようです
このブログでは、脳がなぜ『連打』という報酬を求めてしまうのかについて注目しました。そして、ボタンを連打したくなる自分の心を客観的に観察できるようになることができることを目指します。また、その中に、数秒の待ち時間を『余裕』に変えるヒントになればと考えています。
以下に、この「無意味な連打」をする心理メカニズム、その際の脳の動きについて説明します。
エレベーターの閉ボタンを連打する心理
安心感を買う「コントロールの錯覚」
- 解説: 「自分の行動が結果に影響を与えている」と信じたい心理です。
- 心理的欲求: 人間は「何もできない状況」を大きなストレスに感じます実際には扉の閉まる速度が変わらないことを知っています。それでも、ボタンを連打します。そこで、「自分の意志で操作している」という感覚(自己効力感)を得ます。そして、無力感によるストレスを解消しようとしています。
- 例: 横断歩道の押しボタンや、実は繋がっていないオフィスの温度調節つまみと同じ役割です。
脳の誤学習「間欠強化」
- 解説: ギャンブルやSNSの通知と同じ仕組みです。
- 偶然の成功: 「たまたま連打した時に、誰かが乗ってこずスムーズに閉まった」という経験ができます。すると、脳に強烈な「報酬」として記憶されます。
- 強化される行動: 毎回うまくいくわけではないからこそ、脳は「次はうまくいくかも」と期待します。そして、その動作(連打)を繰り返す依存的なループに陥ります。
時間感覚の歪みと「作業による気晴らし」
- 解説: 何もしない1秒と、作業をしている1秒では体感時間が異なります。
- 待機コストの削減: 「待つ」という受動的な苦痛を、「連打する」という能動的な作業に変換します。そして、脳内の「待ち時間のタイマー」を紛らわせようとしている状態です。
- 現代病: 常に刺激にさらされている人は、わずか数秒の「空白」に耐えるのが難しくなっています。
最新のエレベーター事情と連打
- 機能的側面: 最近の機種には、連打すると「ペットモード」に切り替わるものがあります。また、逆に「キャンセル」とみなされたりするものもあります。そして、連打自体をプログラムで無視するように設計されているものが多くなっています。
- 結論: 連打は物理的な効率を上げるためではありません。あくまで「自分の心を落ち着かせるための儀式」です。
なお、ペットモード(ペットボタン)とは、主にペット飼育可のマンションにおいて、エレベーター内にペットが同乗していることを他階の利用者に知らせる機能です。
エレベーターの閉ボタンを連打時の脳の動き
エレベーターの閉ボタンを連打しているときの脳内の動きについて説明します。その際、脳内では「焦り(感情)」と「報酬(快感)」のサイクルが高速で回転しています。そして、物理的には意味がないとわかっていても指が動いてしまう。その行動の裏側にある3つの脳の動きを説明します。
ドーパミンによる「報酬系」のハッキング
ボタンを押すという行為は、脳にとって「スイッチ」を入れる快感(報酬)を伴います。
- 即時フィードバックへの依存: ボタンを押すと「カチッ」という感触があります。そして、パネルが光り、扉が動き出します。そこで、脳は自分のアクションに対して世界が反応したことに微量のドーパミンを放出します。
- 連打によるブースト: 1回のドーパミンでは焦りを打ち消せないとき、脳は連打します。そして、これにより報酬を「重ね掛け」し、手っ取り早く安心感を得ようとします。
前頭葉の「抑制機能」の低下
本来、理性を司る前頭葉は、「連打しても速度は変わらない」という客観的な事実を知っています。
- 感情の乗っ取り(ハイジャック): 急いでいる時やストレスを感じている時、脳の深部にある「焦燥感」が強くなりすぎます。すると、前頭葉のブレーキ機能が弱まります。
- 原始的な行動: 理性が機能しなくなります。脳は「とにかく何かをすれば状況が変わるはずだ」という原始的な生存本能に従います。そして、反射的に指を動かし続けてしまいます。
「時間知覚」の歪み
脳は、何もしていない時間は長く感じます。そして、何らかの作業をしている時間は短く感じるようにできています。
- ワーキングメモリの占有: 「連打する」という動作に脳の資源(ワーキングメモリ)を割きます。それにより、扉が閉まるまでの「空白の数秒間」から意識をそらします。
- 脳内の時間操作: つまり、脳は物理的に扉を早く閉めているのではありません。つまり、「連打という作業」によって、あなたの体感時間を縮めようとしているのです。
- 「脳は『待つ』のが大嫌い」 脳にとって、何もせずに扉が閉まるのを待つ「数秒間」は、退屈という名の苦痛です。そして、連打は、その苦痛を紛らわすための「脳によるセルフ・エンターテインメント」です。また、連打している間、あなたの脳は「仕事をしているぞ!」という充実感を得ることができます。このようにして、待ち時間のイライラを必死に麻痺させていることになります。
内容の整理とまとめ
内容の整理
ここまで、「無意味な連打」をする心理メカニズム、その際の脳の動きについて説明しました。まず、心理メカニズムについて、安心感を買う「コントロールの錯覚」、脳の誤学習「間欠強化」、時間感覚の歪みと「作業による気晴らし」を説明しました。次に、脳の動きについて、ドーパミンによる「報酬系」のハッキング、前頭葉の「抑制機能」の低下、「時間知覚」の歪みを説明しました。
まず、「無意味な連打」にはいくつかの要因がありました。そして、それらの要因にはストレスが関係していました。まず、ストレスにより安心感を得るためのコントロール錯覚がありました。次に、過去にうまくいった成功体験によるものがありました。そして、空白の時間を埋めるための行為でした。
まとめ
まず、1回ボタンを押して、ドアが閉まるのを静かに待ちます。そして、「連打したくなったら、今自分は余裕がないんだな」と気づくきっかけにします。そして、その数秒を「深呼吸の時間」に変えるようにします。それにより、心の余裕を取り戻すようにします。このような方法で「無意味な連打」を防ぐ対策になるかもしれません。しかし、周りに迷惑をかけていないなどであれば別に直そうとも思うことがないかもしれません。
また、育ってきた環境の影響があるかもしれません。前書きに書いた北国の電車に乗っていて「閉」ボタンを押さなければならない状況もありました。過去の経験や習慣で空白の時間を埋めることに意識下の強迫観念が強ければ強いほど影響しそうな気もしました。そして、「せっかちな人」も空白の時間を埋めるためにやっているような気がしました。

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