前のブログ脳と識別能力1では、似たような犬を区別できる人とできない人の違いは?というテーマで調べました。これに対して、今回はTVの番組で高級楽器と初心者用楽器の音の聞き分けをクイズを見たことを思い出して調べることにしました。この番組では弦楽6重奏の演奏を聞き判定するものでした。これは、同じ場所にいて、鳴っている音は同じなのに違いがわかる、わからないがあるという疑問です。まず、そのままの内容を生成AIに聞いてみました。
生成AIに聞いてみる
次の質問文で回答を求めました。
質問文:高級楽器と初心者用楽器の音の違いを聞き分けられる人とそうでない人の違いを教えて下さい。
聞き分けられる人
以下のような特徴を持っていることが多いです。
- 音響的な知識: 楽器の構造や素材の音への影響。また、演奏技術が音色にどう反映されるかといった知識を持っていることの影響。これらの知識により、より深く音の違いを理解できます。
- 豊富な演奏経験や鑑賞経験: 長年楽器を演奏している人や、頻繁にコンサートなどで生演奏を聴いている人。このような人は、様々な楽器の音色に触れる機会が多く、それぞれの楽器が持つ微妙なニュアンスや特性を理解しています。
- 音の構成要素への理解: 音の3要素(音高、音の大きさ、音色)の理解、聞き分け。特に「音色」に注目し、音色の違いを生み出す倍音の構成、アタック(音の立ち上がり)、サスティン(音の持続)、リリース(音の減衰)といった要素を意識して聴いています。
- 集中して音を聴く習慣: 漠然と音を聴いていない。つまり、「この音はどのように響いているのか」「この楽器の個性は何か」といった問いを持ちながら、積極的に音を分析的に聴こうとします。
聞き分けられない人
一方で、聞き分けられない人は、以下のような特徴が挙げられます。
- 音への関心が薄い: 普段から音楽を聴く習慣があっても、BGMとして流すことが多い。それは、個々の音色に深く注意を払うことが少ないです。
- 経験の不足: 楽器演奏の経験がなかったり、生演奏を聴く機会が少ないこと。つまり、比較対象となる音のデータが少ないため、違いを認識しにくいです。
- 音の構成要素への無理解: 音色の違いが具体的にどのような要素によって生み出されているのかを知らないこと。そのため、漠然とした「良い音」「悪い音」という印象でしか捉えられません。
- 集中力の欠如: 音を細かく分析して聴く習慣がない。そのため、全体的な印象でしか音を捉えられず、微妙な差を拾い上げることが難しいです。
具体的な音の違いのポイント
高級楽器と初心者用楽器の音には、一般的に以下のような違いが見られます。
- 響きの広がり: 高級楽器は、ホール全体に音が広がるような豊かな響きを持っています。
- 音の深みと豊かさ: 高級楽器は、より複雑で豊かな倍音を含み、深みのある響きを持っています。初心者用楽器は、音が平坦に聞こえることがあります。
- 音の伸び(サスティン): 高級楽器は、音が長く美しく伸びる傾向があります。初心者用楽器は、音がすぐに減衰してしまうことがあります。
- 音の均一性: 高級楽器は、どの音域でも均一で安定した音色が出やすいです。初心者用楽器は、音域によって音質にばらつきが出ることがあります。
- 反応の良さ: 高級楽器は、奏者の意図するニュアンスに敏感に反応し、表現の幅が広いです。初心者用楽器は、意図した通りの音を出すのが難しい場合があります。
AIの回答のまとめ
結局のところ、高級楽器と初心者用楽器の音の違いを聞き分けられるようになるには、意識的に音を聴く練習と、様々な楽器の音に触れる経験を積むことが重要です。普段から音楽を聴く際に「この楽器の音はどんな特徴があるのだろう?」と考えてみたり、機会があればコンサートに足を運んで生演奏を聴いてみたりすると、少しずつ音の聞き分けができるようになっていくでしょう。
AIの回答について
聞き分けられる人に4項目ありました。この4項目は、「豊富な演奏経験や鑑賞経験と集中して音を聴く習慣」と「音響的な知識、音の構成要素への理解」に分けられます。音響的な知識と音の構成要素への理解」の2つの中の知識面については、重要度が低いと考えられます。これに対し、豊富な演奏経験や鑑賞経験と集中して音を聴く習慣の2項目は、実際に音を聞く、音を出して聞くといった音を聞く経験を積むことに直結します。つまり、脳の可塑性、シナプスの可塑性に関係するので重要度が高いと思われます。これらは、まとめに書かれている内容に合致はしています。
脳科学では
ここもAIを多く頼りにしています。高級楽器と初心者用楽器の音の聞き分け能力には、聴覚情報処理と脳の可塑性が大きく関わっています。これは単に「耳が良い」「悪い」という話ではありません。つまり、脳が音をどのように分析し、意味づけしているかの違いと言えます。
聞き分けられる人の脳機能
聞き分けられる人の脳では、以下のような機能がより発達していると考えられます。
聴覚野の専門化と活性化:
- 音の処理を司る脳の聴覚野(特に側頭葉)が、音楽の訓練や豊富な聴取経験によって専門的に発達しています。これにより、音の高さ、音の大きさ、そして最も重要な「音色」といった複雑な要素をより詳細に分析する能力が高まります。
- 特に、楽器の音色を構成する「倍音(ハーモニクス)」のパターンを詳細に認識が重要です。倍音の、その微妙な違いを区別する能力が優れています。高級楽器は倍音が豊かで複雑な響きを持つため、この倍音の分析能力が重要になります。
脳の可塑性(Plasticity):
- 脳には、経験や学習によって構造や機能が変化する「可塑性」という性質があります。楽器の演奏や集中的な音楽鑑賞を続けることが重要です。この継続により、聴覚野だけでなく、音の情報を統合する前頭葉や、音に合わせて体を動かす運動野など、複数の脳領域間の連携が強化されます。
- この脳の可塑性によって、楽器の音の微妙な違いを「学習」し、脳内に「データベース」として蓄積していきます。これにより、その音が高級楽器かそうでないかという情報が素早く引き出されるようになります。
注意と選択的注意:
- 音を細部まで分析するには、音の中から特定の情報に意識を向ける選択的注意の機能が重要です。聞き分けられる人は、単に音を聴いているだけではありません。つまり、音の立ち上がり(アタック)、持続(サスティン)、消え方(リリース)など、音色の特徴的な部分に意識的に焦点を当てることができます。これは、脳の注意を司るネットワークがより効率的に機能していることを示唆します。
聞き分けられない人の脳機能
一方、聞き分けられない人の脳では、上記の機能がそれほど発達していないと考えられます。
聴覚野の未分化:
- 音楽的な訓練や集中的な聴取経験が少ない場合、聴覚野は音の基本的な情報(音高、音量)は処理できます。しかし、音色の複雑な要素(倍音構成など)を詳細に分析する能力は限定的である可能性があります。
情報処理の粗さ:
- 脳が音の情報を大まかにしか処理せず、微細な違いを拾い上げにくい状態です。これは、特定の音の特徴を脳内で分類・記憶する経験が不足しているためと考えられます。
関連領域との連携不足:
- 聴覚野と、音の意味を理解したり判断したりする前頭葉などの連携が十分に強化されていない。そのため、「良い音」といった漠然とした感覚でしか音を捉えることができません。それゆえ、その具体的な要因(なぜ良いのか)を分析的に捉えるのが難しいことがあります。
これらを整理してみる
脳がどれだけその「音色」という複雑な情報パターンを詳細に分析することができる。そして、経験に基づいて分類・記憶できるかにかかっています。これは、楽器の演奏や集中的な音楽鑑賞といった経験を通じて、脳の聴覚野をはじめとする関連領域が訓練されること。これによる脳の構造的・機能的に変化する(脳の可塑性)ことで発達する能力と言えます。
トレーニングによって脳は変化します。そのため、意識的に様々な音に触れ、その違いに注目することで、聞き分けの能力は向上させることができます。
考察
注目のポイント
私は、大きなポイントは、生楽器の音をどれだけ聞いてきたかにあると考えています。ギター、バイオリン、ピアノなどの楽器は、いろいろな形状をしています。楽器の形状で、倍音や共鳴音などが豊かに発生し、「楽器の鳴り」などと言われているようです。しかしながら、CDなどの録音された音源は、音の録音する周波数の範囲が限られています。また、音をデジタル化する際、サンプリングや量子化(デジタル化)されるます。区別はつきにくいのですが、生音から省かれる部分があります。生音の迫力というのは省かれていない部分を感じることができることから来ていると推測します。そのために、楽器の生音をどれだけ聞いてきたかが鍵になると考えます。
ピアノやギター
ピアノの有名な海外メーカーにスタインウェイ&サンズ、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファーがあります。日本のメーカには、ヤマハ、カワイなどがあります。これらピアノの音を聞き分けることができる人がいます。これは、スタインウェイの音だ、これはヤマハの音だというようなことを聞いたことがあります。
また、アコーステックギターにはマーティン、ギブソン、テイラーなどの有名なメーカがあります。これらの音についても聞き分けることができる人がいます。これはマーティンのきれいな音だ、パワフルな低音のギブソンの音だということも聞いたことがあります。場合によっては、メーカーだけでなく型式まで区別できるのも聞いたことがあります。例えば、マーティンD-45の音だというのも聞いたことがありました。
これらを聞き分けることのできる人
これらを聴き比べることのできる人は、ピアノやギターを弾いている人に多いと思われます。耳で聞いている音だけではなく、体が感じている振動も関係しているような気もします。特に、アコーステックギター等では、ギターを体に抱きかかえて弾きます。そのため、耳から入ってくる音以外にも振動を感じていると思われます。このような経験を積み重ねることで脳にも変化が起きるものと思われます。
脳の変化について
前のブログでは「似たような犬を区別できる人とできない人の違いは?」について考えました。その際に脳では「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」による影響があると推測しました。音に聴覚やを中心とした脳細胞に関しても同じ傾向であることが言えると考えています。
生楽器の音について
まず、生の楽器の音が通常の生活音と脳での処理が異なっている可能性があります。この2つの音が同じ処理の場合、大多数の人が聞き分けることができると推定される。しかし、実際には、聞き分ける人と聞き分けれれない人がいる。そのため生の楽器音と通常の生活音に違いがあると考える。また、その相違点について、それぞれの楽器の発生する倍音やホディの共鳴による本体の鳴りによる生じる音であり振動であると思われます。
脳内での処理について
生の楽器を演奏したり聞いたりすることで、脳内に変化が生じる。この音や振動を聞いたり感じたりすることで脳内で「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」が起きる。これにより、この生音に反応することのできる細胞の数が増え、音を感知する能力が高くなる可能性があります。
また、生の楽器音の振動についても、どこで処理されているかはわかりません。しかし、その振動感覚を感じ脳内で「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」が起きと考えられます。
加えて、耳から聞いた生音の情報と体で感じた振動が統合されます。そして、これらの情報を処理するために「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」が起きていると考えられます。
「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」が起きた後
生の楽器音に対する「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」が起きた後について考察します。生の楽器音に対する脳の変化が落ち着いた後には、生の楽器音を処理する脳の細胞数が増えていると考えられます。これにより、同様の楽器に対する区別能力も向上すると考えられます。つまり、ピアノでは、スタインウェイの音だ、これはヤマハの音だ等という音の区別ができるようになる。また、ギターでのマーティンのきれいな音だ、パワフルな低音のギブソンの音だという区別ができるようになる。そして、高級楽器と初心者用楽器の音の区別がつくようになると考えられます。
まとめ
前のブログでは「似たような犬を区別できる人とできない人の違いは?」について考えました。そして、視覚情報の処理を中心とした「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」が影響していると考えました。
聴覚情報、振動情報の処理についても「ニューロンの新生」や「シナプスの可塑性」が影響していると考察しました。振動については、体性感覚野、視床、小脳、大脳基底核などがどう関わっているかはわかりません。しかし何らかの関与をしていると思います。
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