初めて来た場所なのに、なぜか以前にも来たことがあるような気がする。また、友人と話しているこの瞬間、まったく同じシーンを前にも経験した気がしてならない。そして、そんな不思議な感覚「デジャブ(既視感)」にあなたも一度は驚かされたことがあるはずです。私もデジャブの感覚を何度もあじわったことがあるような気がします。そして、あまりに強烈な既視感に、「これは予知夢ではないか?」と神秘的な力を感じてしまうこともあるかもしれません。
しかし、脳科学で、この現象の正体は「脳内の情報の送り間違い」であることが分かってきました。私たちの脳は、現実の情報処理の際、一瞬だけ「今」と「過去」を履き違えることがあるようです。そこで、このブログでは、この時、海馬や側頭葉で何が起きているのかに注目することにしました。なお、デジャブについては過去のブログて取り上げています。初めて来た場所なのに懐かしい理由|脳科学でわかる“デジャヴの正体”
今回のブログでは、デジャブがなぜ起きるかについてその要因、どういう条件で起きやすいのか、逆の現象のジャメヴについて調べましたので以下に説明します。
脳内の「情報の仕分けエラー」:デジャブ
二重処理のタイムラグ説(通信エラー)
脳は入ってきた情報を2つの場所に同時に送ります。それは、「今のこと」として認識する部署と「記憶」として保管する部署に送ります。
- 通常時: 両方の情報が同時に届くことで、「今体験している」と正しく認識されます。
- デジャブ時: 何らかの原因で「今のこと」として認識するルートが数ミリ秒だけ遅れます。すると、先に「記憶」の部署に届いた情報が処理されます。そして、後から届いた情報に対して脳が「あ、これさっき(過去に)見たやつだ!」と勘違いしてしまう現象です。
ホログラム説・パターン補完(似ている記憶の混同)
- 海馬の働き: 脳の記憶担当は「海馬」です。そして、海馬は、過去の膨大なデータから現在の状況と似た断片を見つけ出します。また、似た断面の例として、光の当たり方、壁の色、配置などがあります。
- 強引な結びつけ: 今の風景が過去の別の風景の一部と似ているとします。例えば、10年前に行った公園などです。そして、それだけで、海馬が「これは知っている光景だ!」と断定します。そして、全体が既視感に包まれる現象です。
なぜ「若者」や「疲れている時」にデジャブが多いのか?
1. 若者に多い理由:脳の「神経回路」が非常に活発だから
統計的にデジャブは15歳〜25歳の間で最も多く発生すると言われています。これには、脳の「若さ」ゆえの性質が関係しています。
- 神経伝達のハイスピード化: 若い脳は神経の伝達速度が非常に速く、情報を処理する感度も鋭いです。その分、情報の「二重送り」や「わずかな信号のズレ」が起きた際、脳がその矛盾に敏感に反応してしまいます。
- ドーパミンの分泌量: 若い時期は、意欲や快楽、学習に関わる脳内物質「ドーパミン」の分泌が活発です。また、ドーパミンは脳の探索機能を高めます。しかし、過剰になると脳が「意味のない一致」を「重要な記憶」と結びつけやすくなります。そして、その結果デジャブを引き起こしやすくなると考えられています。
- 新しい経験の多さ: 脳が新しい環境や未知の刺激に常にさらされています。そのため、脳の記憶担当(海馬)がフル回転で「過去に似たデータはないか?」と検索し続けている状態であることも一因です。
2. 疲れている時に多い理由:脳の「交通整理」が追いつかないから
脳が疲労したり、寝不足だったりします。そして、そのような状況では、脳内の「情報の交通整理」がスムーズにいかなくなります。
- 情報の「遅延」が発生しやすくなる: 疲労によって脳の処理能力が落ちます。すると、左右の脳や、異なる経路(短期記憶と長期記憶のルート)の間で、情報の到着時間にコンマ数秒の「ズレ」が生じやすくなります。この「ズレ」が、デジャブの正体である「情報の二重体験」を招きます。
- 前頭葉の抑制機能の低下: 冷静な判断を下す「前頭葉」が疲れています。すると、脳の「勘違い(バグ)」を訂正できなくなります。普段なら「ただの似た光景だ」と流せるものです。しかし、疲れた脳は「絶対に前に見たことがある!」と強引に信じ込んでしまいます。
- ストレスの影響: ストレス下では脳が過敏になり、周囲の状況を過剰に読み取ろうとします。そして、これが記憶回路のショート(誤作動)を引き起こす引き金になります。
3. 進化心理学的な視点:脳の「検索エンジンの感度」
進化の過程で、私たちは「過去の危険な経験」を瞬時に思い出す必要がありました。
- 「似ている」は「生存」に有利: 初めて見る光景でも、過去の記憶から「あ、あそこの茂みは以前蛇がいた場所に似ている」と瞬時に(デジャブのように)判断できる個体の方が生き残れました。
- 感度の高さの副作用: 若者や活動的な時期にデジャブが多いのは、生存のために脳の「類似検索エンジン」の感度を最大に設定している副作用とも言えます。
デジャブの逆「ジャメヴ(未視感)」
ジャメヴ(未視感)とは何か?
ジャメヴという言葉の意味はフランス語で「決して見ていない」です。 毎日見ているはずの風景や、よく知っているはずの単語、親しい人の顔などが対象です。そして、ある瞬間「まったく知らない、初めて見るもの」のように感じられる現象です。
- 具体例:
- 自分の部屋にいるのに、「なぜ自分はここにいるのか?ここはどこの部屋だ?」と違和感を抱くものです。
- よく使う漢字(例:「今」や「鼻」など)をじっと見ていると、「こんな複雑で変な形だったっけ?」と文字として認識できなくなります。
- 親友や家族の顔を見て、造形としては認識できます。しかし、その人であるという「実感」が一時的に失われるものです。
脳内で何が起きているのか?
デジャブが「情報のダブり」なら、ジャメヴは「情報の切り離し」です。なお、脳は通常、物体を認識する際に以下の2つをセットで行います。
- 視覚情報の処理: 「これはペンだ」「これは母の顔だ」という形や色の認識をします。
- 意味・感情の照合: 「これは私が毎日使っている」「これは大切な人だ」という記憶との結びつきをさせます。
そして、ジャメヴが起きるときは、この2番目の「意味や感情との結びつき」が一時的にブロックされます。そして、視覚情報だけが孤立して処理されています。その結果、「形は見えているけれど、それが何であるかという実感が伴わない」という奇妙な感覚に陥ります。
ジャメヴを体験する簡単な方法(ゲシュタルト崩壊)
- 実験: 同じ漢字を一分間じっと見つめ続けたり、何度も書き続けたりします。
- 結果: 次第に「線の集まり」にしか見えなくなり、その漢字の意味がわからなくなるはずです。これも一種のジャメヴ体験です。脳が同じ刺激を受け続けることで、処理を「自動化」から切り離してしまった状態です。
なぜジャメヴが起きるのか?
- 脳のオーバーフロー: 特定の情報に集中しすぎたり、同じ刺激が繰り返されたりします。そして、その時脳の回路が一時的に「飽和状態」になり、認識をリセットしようとする動きです。
- 疲労とストレス: デジャブと同様、脳が疲れているときに「意味の照合」という高度な処理をサボってしまうことで発生しやすくなります。
まとめ
ここまで、デジャブがなぜ起きる要因、起きやすい条件、逆の現象のジャメヴについて説明しました。まず、要因について、二重処理のタイムラグ説、ホログラム説・パターン補完を説明しました。次に、起きやすい条件について、若者に多い理由、疲れている時に多い理由、進化心理学的な視点を説明しました。続いて、メジャヴについて説明しました。
まず、デジャブを感じるのはは脳が故障しているのではありませんでした。むしろ、「今起きていることが過去に無かったか?」を常に高速で検索している証拠でした。そして、優秀さゆえの副産物であるのかもしれません。そして、このブログを読んだ後のデジャブを感じたら、『今、脳が一生懸命アップデート中なんだな』と思ってみることで安心できるかもしれません。私もデジャブを感じたことがあります。それは、住宅街の道路や地方の駅の周りなどが多いようです。たぶん、自分の経験というか記憶に残っていることから起きるようなのでデジャブを感じる場面も個人個人で異なるような気がしました。


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