なぜか楽しかった出来事はすぐに忘れてしまいます。しかし、嫌だったこと、恥ずかしかったこと、傷ついた言葉だけは何年経っても鮮明に思い出せます。そして、ふとした瞬間に蘇ってくることがあります。そこで、「どうしてあの記憶だけ消えないんだろう」と思う人も多いかもしれません。
しかし、これは、あなたの性格の問題でも、心が弱いからでもないようです。また、脳には「危険だったことを強く記憶する」という、生存のための仕組みがあります。そして、嫌な記憶が鮮明なのは、脳があなたを守ろうとして働いた結果ということです。つまり、嫌な記憶が鮮明なのは、脳があなたを守ろうとして働いた結果なのです。そして、今回は、なぜ嫌な記憶が鮮明なのかに注目することにしました。
このブログでは、なぜ人は嫌な記憶ほど鮮明に覚えているのかについて、嫌な記憶ほど鮮明に覚えている要因、対応策について調べましたので以下に説明します。
「嫌な記憶」ほど鮮明に覚えている要因
脳は「危険だったこと」を最優先で覚えるようにできている
人間の脳は、進化の過程で「危険を避けること」=生き延びるための最重要課題 として設計されてきました。そのため、脳は、痛み、恐怖、失敗、恥、拒絶といった“危険につながる可能性のある出来事”を、強く・長く・鮮明に記憶するようにできています。そして、これを心理学ではネガティブバイアス、脳科学では生存バイアスと呼びます。
扁桃体が「危険だ」と判断すると、記憶が強化される
嫌な出来事が起きた瞬間、脳の警報装置である扁桃体が反応します。なお、扁桃体は、危険、脅威、恥、拒絶、不安に敏感です。そして、これらを察知すると「これは重要だ、絶対に忘れるな」 という信号を脳全体に送ります。この“強い感情”こそが、記憶を強化する最大の要因です。
- 扁桃体が反応すると起きること
- 心拍が上がる
- 胸がざわつく
- 身体が緊張する
- 感情が強く動く
海馬が“危険な記憶”を優先的に保存する
記憶を司る海馬は、扁桃体からの信号を受け取ると、その出来事を優先的に長期記憶として保存します。つまり、「嫌な記憶」=脳にとって“生き延びるための重要情報” になります。
- 海馬が優先する記憶
- 命の危険につながるもの
- 社会的な危険(恥・拒絶)
- 強い感情を伴うもの
楽しい記憶より嫌な記憶が残りやすい理由
楽しい記憶は、安全、安心、危険ではないため、脳にとって“優先度が低い”情報です。その一方、嫌な記憶は、危険の可能性、社会的なダメージ、自尊心の揺らぎなど、生存に関わる要素を含みます。そのため、脳が「絶対に忘れるな」と強く刻み込みます。なお、これは脳の“正常な働き”です。
- 起きる現象
- 嫌な記憶だけ鮮明
- 何年経っても思い出す
- ふとした瞬間に蘇る
- 楽しい記憶は薄れやすい
嫌な記憶が繰り返し蘇る理由
また、嫌な記憶は、扁桃体と海馬が強く結びつき保存されるため、ちょっとした刺激で再生されます。そして、脳は「また危険が来るかもしれない」と判断し、過去の記憶を呼び出してあなたを守ろうとします。
- 記憶が蘇るトリガー
- 似た状況
- 似た言葉
- 同じ場所
- 同じ表情
- 同じ匂い
嫌な記憶が“強化され続ける”悪循環
嫌な記憶を思い出すと、扁桃体が再び反応します。すると、感情が動く、身体が緊張する、不安が生まれます。また、この“感情の再体験”が、記憶をさらに強化するという悪循環を生みます。そして、これが「嫌な記憶だけが消えない」理由になります。
- 悪循環の流れ
- 嫌な記憶を思い出す
- → 扁桃体が反応
- → 感情が強く動く
- → 記憶がさらに強化
- → また思い出しやすくなる
対応策:嫌な記憶と上手に付き合うための脳科学的アプローチ
記憶を書き換える「再評価」
嫌な出来事の意味づけを変えるために記憶を書き換えることで、扁桃体の反応が弱まります。
- あの時の自分は精一杯だった
- あれは相手の問題だった
- 今の自分なら対処できる
マインドフルネスで扁桃体を落ち着かせる
呼吸に意識を向けるマインドフルネスなどをおこなうだけで、扁桃体の過剰反応が抑えられます。
記憶の“再生”を減らす環境づくり
- SNSの比較を減らす
- 不安を煽る情報を避ける
- 休息を増やす
そして、これらの行動は、扁桃体の興奮を下げる効果があります。
まとめ
内容の整理
ここまで、なぜ人は嫌な記憶ほど鮮明に覚えているのかについて、嫌な記憶ほど鮮明に覚えている要因、対応策について説明しました。まず、その要因について、脳は「危険だったこと」を最優先で覚えるようにできている、扁桃体が「危険だ」と判断すると、記憶が強化される、海馬が“危険な記憶”を優先的に保存する、楽しい記憶より嫌な記憶が残りやすい理由、嫌な記憶が繰り返し蘇る理由、嫌な記憶が“強化され続ける”悪循環を説明しました。つぎに、対応策として、記憶を書き換える「再評価」、マインドフルネスで扁桃体を落ち着かせる、記憶の“再生”を減らす環境づくりを説明しました。
まず、嫌な記憶が消えないのは、あなたが弱いからではなく、脳があなたを守ろうとした結果でした。そして、嫌な記憶が鮮明に残るのは、扁桃体が危険を検知、海馬が記憶を強化、生存バイアスが働く、感情が記憶を固定する、思い出すたびに強化されるという脳の仕組みがあるからでした。また、脳の仕組み、脳がどう動いているかを理解することで対策も立てることができます。つまり、嫌な記憶との距離の取り方がわかるようになると思われます。
まとめ
今回も扁桃体の影響が大きいものでした。つまり、扁桃体の関与する、痛み、恐怖、失敗、恥、拒絶といった“危険につながる可能性のある出来事”が生存に関わる重要な部分であることを再認識しました。
また、ここ最近のブログ、「なぜ“やるべきこと”ほど後回しにしてしまうのか?脳の回避戦略 」「なぜ「忙しいのに暇が怖い」のか?脳が求める“刺激依存” 」「なぜ「やる気」は出ないのに、スマホだけは触れるのか?報酬系のハイジャック」に扁桃体が大きく影響していました。そして、嫌な記憶、やる気、後回し、忙しいのに暇が怖いなど多様な部分に影響していました。なお、これらのテーマは意図的に同時期に選定したものではありませんでした。
しかし、今回の「嫌な記憶」については、人類の進化に伴って身についたものだと考えられます。そのため、スマホや刺激依存などとは異なったものと考えられます。つまり、古代からあった生きるために必要な反応ということになります。嫌な記憶を持っていないと同じことを繰り返してしまいます。それを回避するために長い間記憶していることになります。現在の社会がインターネットを含めいろいろな面で情報過多や即時報酬に満ちている状況のような間接的影響とは異なります。そして、扁桃体が関与する反応がどんどん増えていくような気がしました。

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