私は、無料サンプルをもらったり、試食をさせてもらったりすると買わないといけない感じになります。そのため、できるだけ無料サンプルや試食をしないようにしています。しかし、なぜ、無料サンプルをもらたりすると商品を買いたくなるのかという疑問が浮かびます。実は、それは強力な心理作用である「返報性の原理」が働くかららしいです。この原理は、受けた好意に対してお返しをせずにはいられないという人間の根源的な衝動らしいです。また、ビジネス、チーム運営、恋愛などで「好意の返報性」が使えるらしいです。
このブログでは、返報性の原理がどのようなものか、どのような種類があるのか、この原理を活用するシーンや例について調べました。以下にこれらの内容について説明します。
返報性の原理とは?
返報性の原理(Norm of reciprocity)は、人から何かを受け取ったり、してもらったりします。すると、お返しをしなければならない、恩を返したいという強い心理作用が働く現象のことです。
アメリカの社会心理学者ロバート・B・チャルディーニが提唱したものです。これは、「好意の返報性」とも呼ばれます。私たち人間が社会生活を送る上で、お互いに助け合い、集団で生活を維持するために根付いたものです。そして、普遍的な心理であると考えられています。
返報性の原理の4つの分類
返報性の原理は、好意だけでなく、ネガティブな感情や譲歩といった行動にも働きます。主な分類は以下の4つです。
1. 好意の返報性
好意の返報性は、好意や親切を受けた際に、こちらも何かお返しをしなければと感じる心理傾向です。この心理は、プレゼントをもらったらお返しをする、親切にされたら親切にしたくなることです。そして、親切にされた日常的な場面で現れます。そして、恋愛やビジネスなど、さまざまな人間関係で良好な関係を築くための基本とされています。
- 困っている時に助けてもらったので、今度はその人の手助けをしたいと思うようになる。
- スーパーで試食をさせてもらったら、何か買いたくなる。
- 上司が部下に対してリスペクトや感謝を示すことで、部下のモチベーションが向上する。
2. 敵意の返報性
敵意の返報性は、敵意や否定的な言動を受けた際に、自分も同様に敵意で返したくなる心理状態です。これは、相手からの攻撃に対して、自分も仕返しをしたいと感じる心理効果です。また、敵意の連鎖を断ち切るためには、感情的に反応せず、冷静に状況を分析します。そして、建設的な対応を心がけることが重要です。
- 相手が横柄な態度をとると、自分も同じような態度をとりたくなる。
- 接客態度が悪かった店に対して、インターネットの口コミに悪い評価をつけたりします。また、批判的なコメントを返したりします。これらの行為もこれにあたります。
- 上司や同僚から厳しい言葉をかけられたり、アイディアを否定されたりします。すると、感情的に反発したくなることがあります。
3. 譲歩の返報性
譲歩の返報性とは、相手が譲歩してくれたことに対して、「自分も何かお返しをしなければ」と感じます。そして、相手に譲歩したくなる心理効果です。この心理は、先方に譲歩されたことで、恩義や感謝を感じます。そして、自分も相手の要求に応じたい、あるいは妥協したいという気持ちになることで起こります。また、交渉術では、この心理を利用したドア・イン・ザ・フェイス・テクニックなどが応用されています。先に「お土産をもらった」から、次は自分もお土産を買っていく好意の返報性に近いと言えます。
- 高額な要求(大きなドア)を断った後、本命の小さな要求(小さな窓)をされました。そして、相手の譲歩に対して受け入れてしまう「ドア・イン・ザ・フェイス」というテクニックです。
- 商品価格の交渉で、相手が大幅な値引きを提案してくれました。そして、「自分も購入を決断しよう」と感じるケースです。
- エレベーターで相手が「お先にどうぞ」と席を譲ってくれました。そして、降りる時に「こちらこそ」と譲り返す心理です。
ポイント:
適切な譲歩を通じて相手との信頼関係を築き、交渉を円滑に進めることができます。そして、単なる妥協ではなく、相互の信頼関係を深める有効なコミュニケーション手段となり得ます。
注:
以前のブログ「小さなお願いから大きなお願いを通すフット・イン・ザ・ドア技法」でドア・イン・ザ・フェイスについて説明しています。
4. 自己開示の返報性
自己開示の返報性とは、相手が先に自分の情報や秘密を打ち明けます。すると、自分も同じように相手へ心を開き、情報を開示する傾向があるという心理作用です。まず、相手が自己開示をすると、相手に心を開いてもらえたと感じます。そして、自分も相手に心を開かなければならない、あるいは同程度に伝えたい気持ちになります。このような気持ちが自然に働くため、お互いに心を開きやすくなります。
- 初対面の相手に心を開く:初対面の相手が自身の緊張や不安を打ち明けます。すると、自分も安心して本音を話せるようになります。
- 信頼関係の構築:部下から悩みを聞き出したい場合、まず自分のプライベートな話や経験を打ち明けます。すると、部下の警戒心がなくなり、心を開いて話してもらいやすくなります。
- 顧客との関係構築:営業の場面で、営業担当者が仕事観や商品への思いを率直に話します。すると、顧客との共感が生まれ、より深い関係を築きやすくなります。
返報性の原理の活用シーン
この原理は、人間関係を円滑にします。しかし、これだけではなくビジネスやマーケティングにおいても強力なツールとなります。
ビジネス・マーケティングでの具体的な使い方
- 試食・試供品:デパ地下での試食、化粧品の無料サンプル、無料体験などの提供です。なお、無料体験には、ジム、エステ、学習塾などがあります。
⇒「試させてもらったから、少しは買わないと」という気持ちから、商品購入や契約につながる。 - 無料コンテンツ:ブログの有料級情報公開、無料メールマガジンの提供、初回無料相談などです。
⇒読者や見込み客からの信頼獲得、後の商品・サービスへの申し込みにつながります。 - 営業・商談:相手の会社や業界の事前調査に基づいた、具体的な改善提案を無料で提供します。または、訪問時に手土産を持参します。
⇒「この人は親身になってくれている」と感じます。そして、商談が円滑に進み、契約につながります。 - カスタマーサポート:質問された内容以上のプラスαの情報や解決策を提供します。忙しい時でも相談に誠実に対応します。
⇒顧客ロイヤルティ(愛着)の向上、リピート購入、口コミでの好意的な評判が得られます。 - SNS運用:相手の投稿に積極的に「いいね」やコメントを残します。例えば、いいね返し、コメント返しです。
⇒相手からの「いいね」やフォローが返ってきます。そして、関係性の構築をすることができます。 - 小さな贈り物:サービス利用者や取引先誕生日にメッセージカードやちょっとしたギフトを送ります。
⇒「大切にされている」と感じます。そして、長期的な取引継続や紹介につながります。
人間関係・コミュニケーションでの具体的な使い方
職場の同僚、友人、恋愛など、あらゆる人間関係の改善と深化に役立ちます。
- ポジティブな感情:相手に笑顔で接します。積極的で明るい挨拶を自分からします。
⇒相手からも笑顔が返ってきます。そして、円滑なコミュニケーションと好意的な印象が持たれます。 - 褒め言葉:相手の具体的な行動や長所を褒めます。例えば、「〇〇さんの、△△なところが素敵です」。このような分かりやすい言葉で伝えます。
⇒相手からの好意的な評価が得られます。そして、協力や手助けを得やすくなります。 - 自己開示:自分から先に、プライベートな情報(出身地、趣味、軽い悩みなど)を開示します。
⇒自己開示の返報性も働き、相手も心を開いて自分の情報を話してくれるようになります。そして、信頼関係が深まります。 - 助け合い:相手が困っているときに、見返りを求めずに積極的に手助けをします。
⇒自分が困ったときに、相手から進んで助けてもらえます。そして、協力的な関係が築かれます。
好意の返報性を使う上での重要な注意点
「好意の返報性」は強力ですが、使い方を間違えると逆効果になることがあります。
見返りを求めない姿勢が大切
「これだけしてあげたのだから、お返ししてよ」という下心が透けて見えたり、お返しを強要したりします。すると、相手は心理的な負担を感じ、不快感や敵意を抱いてしまいます。あくまで「相手に喜んでもらいたい」という気持ちが最優先です。
過度な「貸し」を作らない
相手の状況や関係性を無視した高価すぎる贈り物や過度な親切は避けます。これは、相手に「重いお返しをしなければならない」というプレッシャーを与えます。そして、かえって距離を置かれる原因になります。相手が無理なく受け取れる範囲の「ギブ」を心がることが重要です。
「ギブ」はさりげなく
恩着せがましい態度で「ギブ」をしても、好意的に受け取られません。あくまでもさりげなく、自然な形で価値を提供することが、好意の返報性を最大限に引き出すポイントです。
まとめ
ここまで返報性の原理がどのようなものか、どのような種類があるのか、この原理を活用するシーンや例について説明しました。また、返報性の原理は、人から何かを受け取ったり、してもらったりします。このような時に生じる、お返しをしなければならない、恩を返したいという強い心理作用でした。そして、返報性の原理には、好意の返報性、敵意の返報性、譲歩の返報性、自己開示の返報性の4つがありました。また、人間関係、ビジネス、マーケティングにおいても強力なツールとして使用されていました。
この返報性の原理は、受けた好意に対してお返しをせずにはいられないという人間の根源的な衝動から来ています。つまりこの人間の根源的な衝動に後から返報性の原理という名前が付いたということになります。


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