同じ意見でも、「隣の田中さん」が言うのと「東大教授」が言うのとでは、なぜ納得感が違う。つまり、同じ言葉でも、肩書きがつくだけで説得力が増す。また、新入社員が言うことは怪しいが、部長が言うなら間違いないだろう。そして、専門家がそう言うなら信じていいはずだなどがあります。つまり、肩書きは単なるラベルにすぎないのに、私たちはそこに“権威”を感じまいます。そして、判断をゆだねてしまいます。そして、この傾向は、職場の意思決定から日常の買い物まで広く影響しています。確かに、私も納得感が違うような気がしますが、理由はなく何となくです。
肩書きはその人の能力を保証するものではないのに、なぜ影響されるのかについて調べました。このブログでは、脳が肩書きに頼る「思考の節約」、権威への服従、「ハロー効果」と「ラベル効果」の相乗効果、具体例、社会的証明(Social Proof)との関係、認知的経済性(Cognitive Economy)との関係、肩書きを巡る「社会的証明」と「認知的経済性」の連携について以下に説明しています。
肩書に弱い要因
脳が肩書きに頼る「思考の節約」
私たちの脳は、体重の約2%の重さしかありません。しかし、全エネルギーの約20%を消費する「大食い」な臓器です。そのため、常に「省エネ(思考の節約)」をしようとします。これを心理学でヒューリスティクスと呼びます。
- 肩書きという「ショートカット」:
相手が信頼できるかどうかを、その人の過去の発言や行動から精査しようとします。すると、脳は膨大なエネルギーを消費して疲弊してしまいます。脳は、教授、社長、医者の肩書きを見た瞬間、信頼できるという答えを自動的に導き出します。そして、思考を停止させます。 - 認知的経済性:
複雑な現代社会において、すべての情報を検証するのは不可能です。そして、肩書きという記号を信じることは、脳に非常に効率的な経済的な判断なのです。
権威への服従(ミルグラム実験の教訓)
なぜ人は、自分の道徳心に反してまで「肩書き」に従ってしまうのかという問題があります。それを証明したのが、1960年代に行われた悪名高い「ミルグラム実験(アイヒマン実験)」です。なお、ミルグラム実験については、以前のブログ「なぜ人は疑問を抱えても上司に従うのか?: 権威への服従」で説明しています。必要な場合は、参照してください。
- 実験の内容:
「学習に関する実験」と称して集められた一般人が被験者です。そして、被験者、隣の部屋の学習者(実はサクラ)が問題を間違えるたびに、電気ショックを与えるボタンを押すよう指示されます。 - 驚愕の結果:
白衣を着た「権威ある実験者」に「責任は私が持つ、続けてください」と言われます。すると、65%もの人が、相手が悲鳴を上げているにもかかわらず、致死レベルの最大電圧(450ボルト)までスイッチを押し続けました。 - 肩書きの魔力:
この実験は、人間は「専門家」や「責任者」という肩書きを持つ人から命令されます。すると、自らの良心を麻痺させ、エージェント(身代わり)として従順に振る舞います。そして、このような性質があることを暴きました。
「ハロー効果」と「ラベル効果」の相乗効果
肩書きは、その人の「一つの属性」に過ぎませんが、私たちの認識全体を歪めます。
- ハロー効果(後光効果):
「一流企業のCEO」という輝かしい肩書き(後光)があるとします。そして、その人の専門外のことまで、すべてが正しく、優れたものに見えてしまう現象です。例えば、政治への意見、健康法、子育て論などがあります。 - ラベル効果:
「肩書き」というラベルを貼られた瞬間、その人自身も、周囲も、そのラベルにふさわしい人間であるかのように振る舞い、評価し始める現象です。
相乗効果:
- 周囲の反応: 「部長」というラベルの人には、無意識に敬語を使い、意見を仰ぎます。
- 本人の変化: 「自分は部長だ」という自覚が、本人の態度を堂々とさせます。そして、さらに周囲に権威を感じさせるという循環が生まれます。
具体例
- ワインの実験:
中身は安いワインでも、ラベルにフランスのシャトー直送、1980年熟成と書いています。すると、被験者の脳の報酬系が活性化し、本当においしく感じてしまう現象です。つまり、ラベルに肩書きを与えることにより起きます。 - 服装による違い:
スーツを着た人と、ラフな格好の人についてに違いがあります。どちらが赤信号を渡った時に、後ろの人がついていきやすいか?という実験があります。そして、スーツの方が後を追う人が増えるという結果が出ています。
肩書と社会的証明、認知的経済性の関係について
社会的証明(Social Proof)との関係
「自分の判断よりも、周囲(社会)の判断を信じる」という心理法則が社会的証明です。
- 肩書きとの関係:
肩書きは、その人が社会的に「認められた存在である」という証です。例えば、医者や教授の肩書きは、国や大学という巨大な組織が、能力を保証した結果です。 - なぜ肩書きに弱いのか:
私たちは「みんなが認めている人(=社会的証明がある人)」の意見に従います。そして、「自分一人で判断して間違えるリスク」を回避しようとします。 - 例: 無名の「この健康法がいい」より、テレビの「有名医」が言う方を信じてしまいます。それは、「テレビや医療界が認めている」という社会的証明に依存しているからです。
認知的経済性(Cognitive Economy)との関係
「脳のエネルギー消費を最小限に抑えるために、物事をシンプルに整理する」という性質が認知的経済性と言われるものです。
- 肩書きとの関係:
本来、目の前の人物が「本当に有能か」を判断するには、検証をします。そして、その検証では、その人の過去の論文を読み、実績を調べ、論理性について検証します。しかし、これには膨大な脳のエネルギー(認知資源)が必要です。 - 「脳の節約」の仕組み:
脳は「肩書き」というラベルを一目見るだけで、一気に処理を終わらせます。つまり、「この人は専門家 = 話を聞く価値がある = 検証は不要」という処理です。 - 例: 講演会で、登壇者の経歴が豪華なほど、聴衆は最初から正しいことを言うはずだと心を開いて聞きます。つまり、これは脳が「検証」というコストをカットして「経済的」に動いている状態です。
肩書きを巡る「社会的証明」と「認知的経済性」の連携
この「社会的証明」と「認知的経済性」2つが組み合わせられます。そして、強力な「思考停止」がされてしまいます。
- 認知的経済性によって、私たちは「肩書き」というショートカット(近道)を選びます。
- そのショートカットが正しいことを裏付けるために、社会的証明を利用します。つまり、みんなが認めているという事実を利用します
- 結果として、中身を精査せずに、肩書きだけで信じるという行動が正当化されてしまいます。
まとめ
ここまで、脳が肩書きに頼る思考の節約、権威への服従、ハロー効果とラベル効果の相乗効果、具体例、社会的証明との関係、認知的経済性との関係、肩書きを巡る社会的証明と認知的経済性の連携について説明しました。まず肩書に要因について、脳が肩書きに頼る「思考の節約」、権威への服従、「ハロー効果」と「ラベル効果」の相乗効果、具体例について説明しました。肩書と社会的証明、認知的経済性について、社会的証明、認知的経済性、肩書きを巡る「社会的証明」と「認知的経済性」の連携について説明しました。
まず、肩書きは、脳にとっては最高の「省エネツール」です。しかし、エネルギーを節約して楽をしようとする時、同時に「自分の頭で考えること」を放棄しているかもしれません。そのため、すべてについて楽をするのではなく、重要度が高いものについては、自分でしっかり考えるという使い分けが必要な気がしました。しかし、本来脳が楽をしたいので、どうするかについって判断する習慣をつける必要があるようにも感じました。


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