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待ち時間が長いのは気のせい? 脳が生み出す“時間の錯覚”

心理
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 予約した新幹線などを待っている時、なかなか電車が来ないという感覚の時があります。そして、時間を確認しても、10分ぐらい待った感覚4~5分しか経っていない。このような感じのときがあります。これは、病院で診察を待っていたり、会計を待っていたり、薬を待っているときも同じ様の感覚です。また、お腹が痛くなった時でも、10分ぐらい経った感覚で時計を見ると5分も経っていないことがありました。

 このような、私たちが体験する「待ち時間の長さ」と「心理的に感じる時間」は必ずしも一致しません。その理由には、人間の脳と心理が大きく関わっています。そして、今回実際の時計の針よりも、体感的な時間がずっと長く伸びてしまうのはなぜかをテーマにしました。ここでは、時間を長く感じていしまう理由、このような時間を長く感じないようにするための方法等について心と脳の関係を含めて説明します。

時間を長く感じる理由

「暇」だと時間が長く感じる

 人は何もしていない時間を「退屈」と感じやすく、退屈は時間を引き延ばす効果を持ちます。たとえばスマホを見たり、本を読んだりしているときは同じ時間でもあっという間に感じるのに、何もせずじっと待っていると数分がすごく長く感じられます。

 これに脳が関係しています。まず、脳には時間を処理する仕組みがあります。具体的には、前頭前野基底核小脳といった領域が「どれくらい時間が経ったか」を感じ取っています。そして、何もしていないと、この仕組みが敏感に働いてしまいます。そして、この仕組みが敏感に働くことで、「まだ? まだ?」と時間ばかりに注意が向いてしまいます。

 具体例:病院の待合室で、雑誌もなくスマホもバッテリー切れました。そして、やることがなくただ座っていると、5分が15分くらいに感じられることがあります。

先が見えない不安が影響する

 「あと何分で来るのかわからない」状況では、予測できない不安が心にストレスを与えます。このストレスによって脳が時間を過剰に意識し、体感的に長く感じてしまうのです。逆に「あと5分で来ます」と表示されると、不思議と気持ちは落ち着きます。

 まず、「いつ来るのかわからない」状況は、脳の扁桃体が活性化してイライラを増幅します。そして、扁桃体が強く働くと、脳は「細かく時間を刻んでチェック」し始めます。これにより、実際の時間より長く感じてしまいます。

 具体例:電車のホームで「遅延しています」とだけアナウンスされます。すると、実際には10分待っただけでも「もう20分以上経ってるんじゃない?」と感じることがあります。

時間を長く感じないようにするために

脳の「注意の向け方」が時間の長さを変える

 時間の感じ方は「どこに注意を向けているか」に左右されます。
    ・ → 時間そのものに注意が向く → 長く感じる
    ・夢中になっている → 時間に注意を向けない → 短く感じる
 つまり、待ち時間を「いかに気をそらせるか」で体感が変わるのです。

注意の向き先が違うと体感が変わる

 前頭前野は「どこに注意を向けるか」をコントロールします。時計や到着予定ばかりに意識を向けていると時間は長く感じられます。しかし、他のことに夢中になれば「短く」感じます。

 具体例:同じ15分でも、スマホゲームをしていたら一瞬で過ぎるのに、ただ列に並んで待っているだけだと「まだ5分しか経ってないの?」と驚くほど差があります。

ネガティブ感情は時間を遅くする

 イライラ、退屈、不安といったネガティブな感情は、時間の進みを遅く感じさせます。一方で、ワクワクしているときや好きなことをしているときは、逆に時間があっという間に過ぎていきます。これは、脳内物質のドーパミンは「楽しみ」「ワクワク」と深く関わっています。つまり、ドーパミンが多いと、脳の基底核が時間を粗くカウントし、時間が短く感じられます。
 具体例:ディズニーランドやUSJなどのテーマパークでは、アトラクションの待ち列に映像や装飾があり、世界観に没入できます。これは、脳をワクワクさせ、待ち時間を「体感的に短く」する工夫です。

 内容の整理

  • 情報を与える:「あと◯分で来ます」と表示する
  • 注意をそらす:スマホ、読書、音楽などで気を紛らわせる
  • 快適さを整える:座れる場所や空調の工夫で不快感を減らす

 前項目でも示しましたが、実際に、空港やテーマパークなどでは「並んでいる感覚を楽しませる仕掛け(展示や映像)」が使われています。

まとめ

 ここまで、待っている時間を長く感じる理由、長く感じなくする方法を説明しました。そして、待ち時間が実際より長く感じるのは、脳が「暇・不安・不快」に敏感だからということを示しました。そして、逆に言えば、気をそらしたり安心感を与えることで、同じ待ち時間でもずっと短く感じられることになります。以下に、脳の仕組みを整理します。

  • → 時間感覚が過敏に働く
  • 不安 → 脳の扁桃体が刺激され、時間を細かく意識する
  • 注意の向き → 時計に集中すると長く、他のことに夢中になると短く感じる
  • ドーパミン → ワクワクすると時間が一気に短くなる

 このようなことを知っておけば、時間を長く感じそうになった時に思い出せば、イライラしなくてすむような気がします。

 

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