正しいことを言っているはずなのに、なぜか相手が動いてくれない。このような経験は、誰にでもあると思います。そして、職場でも家庭でも、正論はしばしば“正しいのに届かない”という不思議な現象を引き起こします。そこで、なぜ正論は人を動かせないのかという疑問が浮かびます。そして、その理由は、人の心の仕組みにあるようです。
そこで、今回、この心の仕組みを調べることにしました。また、その内容は、人は論理ではなく“感情”で動く理由、正論がときに“距離”を生むメカニズム、人が動くために必要な“共感→安心→行動”のプロセスなどです。そして、これらを心理学的、脳科学的な視点からとらえます。
このブログでは、なぜ正論は人を動かせないのかについて、感情のメカニズム、正論が人を動かせない脳機能について調べましたので以下に説明します。
感情のメカニズムについて
人は論理ではなく“感情”で動く
私たちは「人は論理的に判断する」と思いがちですが、実際にはその逆です。そして、心理学では、人の意思決定は次の順番で行われると言われています。
- まず感情が反応する
- その後に論理が理由付けをする
つまり、論理は“後付け”になりやすいことになります。つまり、正論が刺さらないのは「心」が動いていないからということになります。まず、正論は「頭」に届きます。しかし、行動を決めるのは「心」です。どれだけ正しいことを言われても、心が動かなければ行動は変わらないということになります。
例:「もっと早く寝たほうがいいよ」
→ 正しい。でも、疲れている人には“責められた”と感じさせるだになります。
つまり、正論が届かないのは、心に届かず感情の扉が閉じたままだからということになります。
正論は“距離”を生むことがある
内容そのものは正しいのに、なぜか相手との距離を広げてしまうことがあります。
メカニズム
正論を受け取る側は、次のように感じやすくなります。例えば、上から目線に聞こえる、自分の状況を理解されていない、否定された気持ちになるなどです。また、正論そのものは正しいことです。しかし、「言われた側の感情」がネガティブになることで距離が生まれます。
人は「正しさ」より「尊重されている感覚」を求める
人は、正しいかどうかよりも、「自分を理解してくれているか」、「自分の立場を尊重してくれているか」を重視します。そのため、正論は、相手の背景や気持ちを無視して聞こえやすくなります。その結果、「この人はわかってくれない」という印象を与えてしまいます。
人が動くのは“共感→安心→行動”の順番
人が行動を変えるには、次の心理的プロセスが必要です。
- 共感:「わかるよ」「大変だったね」
- 安心:「この人は敵じゃない」
- 行動:「じゃあやってみようかな」
正論は、この3つのプロセスを飛ばしてしまうことが多くあります。そのため、以下のような状況クリアしていないことがあります。
- 共感がないと心は開かない:
共感がない状態で正論を言われると、相手は心を閉ざし、防御モードに入ります。 - 安心があって初めて行動が生まれる:
人は「安全だ」と感じたときに初めて行動できます。そして、安心が生まれると、相手はあなたの言葉を受け入れる準備が整います。
そのため、正論は“最後に出す”からこそ効くことになります。
正論が人を動かせない脳機能
扁桃体:正論は“攻撃”として処理されやすい
扁桃体は、危険や否定に敏感に反応する脳のアラーム装置です。そして、正論を言われたとき、相手の脳はこう反応します。
- 「自分が間違っていたと言われた」
- 「否定された」
- 「攻撃された」
たとえ事実として正しくても、扁桃体は “自分の立場が脅かされた” と判断してしまいます。そして、防御反応(怒り・反発・無視)を引き起こします。つまり、正論は脳にとって“危険信号”になりやすいということが言えます。
前頭前皮質:感情が強いと論理が働かなくなる
前頭前皮質は、論理的思考・判断・理解を司る領域です。しかし、扁桃体が刺激されて感情が高ぶると、前頭前皮質の働きが弱まります。つまり、感情が動いている状態では、論理が入らないということになります。つまり、正論がどれだけ正しくても、相手が感情的になっていると理解されないのはこのためになります。
自尊心ネットワーク(前帯状皮質・内側前頭前皮質):正論は“自分の価値”を脅かす
人は「自分は正しい」「自分は悪くない」という自己イメージを守りたい生き物です。そのため、正論に対して、自分の判断が間違っていた、自分の行動が良くなかったと認める必要が出てきます。また、脳ではこれが 自尊心の脅威 として処理されることになります。そして、その結果、脳は反射的に拒否反応を起こします。そのため、「正論=自分の価値を下げる刺激」として扱われ、受け入れにくくなります。
島皮質:正論は“痛み”として感じられることがある
島皮質は、身体的な痛みだけでなく、心理的な痛み(恥・後悔・屈辱)にも反応する領域です。そこで、正論を言われると、恥ずかしい、責められた気がする、自分の弱さを突かれたといった感覚が生まれます。そして、島皮質が“痛み”として処理することになります。つまり、正論は 脳にとって痛み刺激 になりやすいといえます。そして、痛みを感じれば、人は当然避けようとすることになります。
ミラーニューロン:共感がないと心が開かない
ミラーニューロンは、相手の感情を読み取る仕組みです。それため、正論を言う前に、わかるよ、大変だったね、その気持ちは自然だよといった共感を表現します。すると、これの共感により、ミラーニューロンが働き、相手の心が開きます。しかし、逆に共感がないと、「この人は自分を理解していない」と脳が判断することになります。そして、その結果、その後の正論が一切入らなくなってしまいます。
内容の整理とまとめ
内容の整理
ここまでこのブログでは、なぜ正論は人を動かせないのかについて、感情のメカニズム、正論が人を動かせない脳機能について説明しました。まず、感情のメカニズムについて、人は論理ではなく“感情”で動く、正論は“距離”を生むことがある、人が動くのは“共感→安心→行動”の順番を説明しました。次に、正論が人を動かせない脳機能について、扁桃体、前頭前皮質、自尊心ネットワーク(前帯状皮質・内側前頭前皮質)、島皮質、ミラーニューロンを説明しました。
また、正論は、内容そのものは正しいものです。しかし、人が動くのは“正しさ”ではなく、“心が動いたとき”でした。これらの内容を整理すると以下のようになります。
- 感情が動かないと、論理は届かない
- 正論は、相手の状況や気持ちを無視すると距離を生む
- 人が行動するには、共感→安心→行動の順番が必要
また、脳機能の観点から整理すると、正論が届かない理由は次のようになります。
- 扁桃体:正論を“攻撃”として処理する
- 前頭前皮質:感情が動くと論理が働かない
- 自尊心ネットワーク:正論は自己価値を脅かす
- 島皮質:正論は“痛み”として感じられる
- ミラーニューロン:共感がないと心が開かない
まとめ
正論が人を動かさないのは、人間の脳がそういう構造になっているからでした。そして、だからこそ、「共感 → 安心 → 正論」という順番が大切になります。
そのため、正論は「最初に言う言葉」ではないということになります。そして、相手の心が整った“最後にそっと添える言葉”というものになります。まず、相手の感情に寄り添い、安心をつくり、そのうえで正論を“提案”として差し出す。それが、人を動かすコミュニケーションの本質であるような気がしました。
そして、私が正論を言われても内容は正しいことはわかるけどなんとなく納得できないという感情がありました。そして、このような原因なのかというようになっとくする部分がありました。また、正論を言うタイミングがあったと思いますが、ここで示されたような配慮はしていなかったような気がします。今後、この点を配慮したほうがコミュニケーションがうまくいくような気がしました。

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