晴れの日は「今日はツイてる!」と思いやすいです。また、雨の日は「なんだかうまくいかない」と感じやすいです。そして、「今日はなんだかうまくいきそう!」そんな気分のときに、つい大胆な決断をしてしまうことが多いようです。また、気分が落ち込んでいるときに、本当は楽しいはずの出来事があまり魅力的に感じられなかいこともあります。
私たちは自分では「冷静に判断している」と思いがちです。しかし、実はこれ、私たちの「判断」が 感情に強く影響されています。そして、このように感情や気分が意思決定にバイアスをかける現象を 感情ヒューリスティック(affect heuristic) と呼びます。ここでは、感情ヒューリスティックがどういうものなのか、日常への影響、気分に左右されないようにするコツ、脳でどのようなことが起きているのかについて説明します。
感情ヒューリスティック
概要
感情ヒューリスティックとは、気分や感情が私たちの判断に直接的な影響を与える心理現象のことです。また、「ヒューリスティック」とは、脳が瞬時に下す“直感的な近道判断”のことを言います。これは、合理的な情報処理を省略できる一方で、感情に引っ張られて誤った結論にたどりつくこともあります。しかし、人は本来、論理的に情報を集め、冷静に判断できるはずです。ところが実際には、「そのときの気分」や「直感的な印象」 が判断に大きな役割を果たします。
つまり、感情は「判断のフィルター」となり、同じ出来事でもそのときの気分次第で見え方が変わってしまいます。そして、感情ヒューリスティックとは、気分が思考の近道(ヒューリスティック)となって、判断基準を歪めてしまう現象ということです。
具体例
- 天気が良いと気分が上がり、リスクのある投資でも「大丈夫」と思いやすい。
- 好きな俳優が宣伝している商品に「信頼できそう」と感じ、つい購入してしまう。
- ニュースで事故の映像を見たあと、「世の中は危ない」と思い込み、外出を控える。
- 気分が沈んでいる時、リスクを大きく見積もり「やめておこう」と考えやすい
日常生活への影響
感情ヒューリスティックは、私たちの生活のあらゆる場面に影響しています。
- 買い物:パッケージや広告の雰囲気に惹かれて、必要以上に買ってしまう。
- 投資やギャンブル:その日の気分次第でリスクを小さく見積もってしまう。
- 人間関係:相手の第一印象や雰囲気だけで「この人は信用できる」と思い込む。
気分に左右されるのは自然なことです。しかし、時には「これは感情の影響かな?」と立ち止まることが大切です。
気分に左右されないためのコツ
感情ヒューリスティックを完全に避けるのは難しいことです。しかし、意識するだけで大きく変わります。
- 重要な判断は「時間をおく」
感情は一時的なものです。買い物や契約などの大きな決断は、一晩寝かせてから考えると冷静さが戻ります。 - 「気分チェック」をする
「今の自分の気分は?」と意識するだけで、判断への影響に気づきやすくなります。
(例:イライラしている → つい厳しい評価をしていないか?) - 複数の視点を持つ
自分一人の感覚に頼らず、他人の意見を聞いたり、データを確認したりすることで、感情に偏った判断を修正できます。 - 書き出してみる
頭の中だけで考えるより、紙にメリット・デメリットを書き出すと感情に流されにくくなります。
脳の中で何が起きているのか?
私たちの脳には、以下のような役割があります。しかし、感情ヒューリスティックが働くと、扁桃体が強く反応し、前頭前野の冷静な判断を上書きしてしまいます。脳は「効率」を優先するため、考えるよりも「感じる」を頼りにしてしまうのですね。
- 扁桃体:恐怖や不安などの感情を素早く処理
- 前頭前野:冷静に考え、合理的に判断する
まとめ
ここまで、感情ヒューリスティックがどういうものなのか、日常への影響、気分に左右されないようにするコツ、脳でどのようなことが起きているのかについて説明しました。そして、感情ヒューリスティックは、「そのときの気分が、思っている以上に私たちの判断を支配している」という、合理的に決断できない場面を説明する重要な心理学の概念でした。
しかし、冷静に考えたつもりでも、実は気分が意思決定を導いていることは少なくありません。そして、「今の判断は、感情に流されていないかな?」と一歩引いて考えることが、より良い選択につながると考えられます。また、「気分が先、判断は後」になっていることを自覚するだけでも、少し冷静に物事を考えられるようになると思われます。
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