標準語というのは聞いたことがありました。ただ、共通語は、聞いたことがあるかもしれないのですが記憶にはありませんでした。また、NHKで使用している言葉が何かの基準になっていると聞いたことがあります。その時点では、標準語しか知らなかったのでNHKが使用しているのが標準語と思っていました。しかし、調査前まで残念ながらこれが標準語であるか、共通語であるかがわかっていませんでした。
そこで、今回のブログでは、標準語と共通語について、その違い、そのルーツ、そして、地方の言葉について調べました。以下にこれらの内容について説明します。
標準語と共通語はなぜ違うのか?
標準語と共通語は、どちらも東京の言葉をベースにしています。しかし、その定義(規範性)と歴史的な成り立ちが異なります。
1. 「規範」としての標準語
「標準語」は、ある言語の中で規範的な正式の言い方と見なされています。そして、「こうあるべき」という理想的な言葉を指しています。
- 定義: 規範的な言語変種。音韻・語彙・語法などあらゆる点について理想的に磨き上げられた言語(理想)です。
- 歴史: 明治時代以降、近代国家を形成する中で、「国語」教育の目標として設定されました。これは、地域によって大きく異なっていた当時の話し言葉を統一し、公的な場や教育、書き言葉で使えるようにするためでした。
- 現状: 現在でも、NHKのアナウンサーが使用する言葉など、「正しい日本語」として強く意識される言葉です。
2. 「通用」としての共通語
方言の違いを越えて互いに通じ合うことを目的とした現実の言葉が「共通語」です。
- 定義: 異なる言語を使用する人々の間でコミュニケーションのために用いられる言語です。通用性が重要で、「ゆれ」をある程度許容するゆるい規範です。
- 歴史: 戦後、国立国語研究所によって提唱されました。そして、1951年以降は学習指導要領でも「標準語」に代わり「共通語」という言葉が使われるようになりました。これは、地方の方言を否定した「標準語」教育の反省からきています。そして、方言との共存を目指す姿勢への転換を意味します。
- 現状: 「見レル」や若者言葉で使われる「すごい」(例:「すごいかわいい」)などです。これらは、広く全国で使われていますが標準語としては認められにくい表現も、共通語としては通用します。
共通語の基盤は「東京の山の手言葉」
共通語は、無数にある方言の中から自然発生的に選ばれたのではなく、明治時代に意図的に整備されました。
1. 共通語のルーツは「山の手言葉」
共通語の基礎となったのは、江戸時代から明治時代にかけての「東京の言葉」です。特に、山の手(やまのて)地域の中流階層が使っていた言葉です。
- 山の手言葉: 明治維新後、中央官僚や知識人、新興の富裕層が多く住んだ山の手で使われた言葉です。山の手は、現在の文京区、渋谷区などの高台エリアです。山の手エリアで使われた言葉は、比較的新しく洗練された言葉です。
- 江戸弁(下町言葉)との区別: それまでの江戸の中心であった下町で使われた、荒っぽいイメージのある「江戸弁」(べらんめえ調など)とは区別されました。
東京の言葉が選ばれた理由
東京の言葉が全国共通語のベースとして選ばれたのは、その地理的な優位性と社会的影響力があったからです。
| 選定理由 | 具体的な意味 |
| 政治・文化の中心 | 明治維新以降、東京が日本の政治、経済、文化の中心地となり、人の移動や情報の伝達が集中したこと。 |
| 普及しやすさ | 優勢な地域の方言を基にすることで、全国に広がりやすいという条件を満たしていたこと。 |
| 方言色の少なさ | 多くの地方出身者が集まる中で、他の地域の方言と比べて比較的「方言色が少なく、理解しやすい」と見なされたこと。 |
東京方言≠共通語
共通語は東京の言葉を基にしています。しかし、両者は厳密には異なります。
- 共通語: 東京の言葉から、一部の地域特有の表現や癖(訛り)を取り除きます。そして、文法や発音を規範化して、全国どこでも通じることを目指して理想的に磨き上げた言葉です。
- 東京方言: 現代の東京でも、「〜しちゃう」「〜しとく」や独特のイントネーション、語尾の「さ」といった地域特有の表現が残っています。これらは、日常的に使われていても、規範的な共通語からは外れる場合があります。
したがって、「東京で使われている言葉が、調整・規範化されて共通語になった」というのが正確な理解です。
日本語の地域差の面白さ:音の体系が根本から違う!
日本語の地域差、すなわち「方言」は、単に語彙が違うだけではありません。また、音の体系(アクセント・イントネーション)が根本から異なる点に面白さがあります。
1. 語彙の違い:伝わるようで伝わらない?
地域によって特定の単語が大きく異なり、旅行先で驚くことがあります。
| 方言 | 意味 |
| いずい(北海道など) | なんとなく具合が悪い、しっくりこない |
| なおす(九州・中国地方など) | 片付ける、しまう |
| だんだん(山陰地方など) | ありがとう |
2. アクセントの違い:京阪式と東京式
日本語のアクセント(音の高低)は大きく京阪式と東京式に分類されます。特に名詞では、同じ単語でも地域によってアクセントの型が異なります。
| 単語 | 東京式(標準語) | 京阪式(関西など) |
| 雨(あめ) | 高低(頭高型) | 低高(尾高型) |
| 飴(あめ) | 低高(尾高型/平板型) | 高高(平板型) |
このように、標準語では「雨」と「飴」がアクセントで区別されます。しかし、京阪式では両者のアクセントが逆になったり、さらに複雑な体系を持っています。
3. イントネーションの違い:疑問文の音の動き
文全体の音の動きであるイントネーションにも、大きな地域差が見られます。
- 標準語・近畿方言: 疑問文は文末を上げる。例えば、雨?があります。
- 鹿児島方言: 疑問文は文末を下げることによって疑問を表します。例えば、雨?があります。
このように、方言の面白さは、単語や語尾の違いだけでなく、コミュニケーションの根幹をなす音のシステムが地域ごとに独自の進化を遂げている点にあります。
まとめ
ここまで標準語と共通語について、その違い、そのルーツ、そして、地方の言葉について説明しました。まず、「標準語」は、ある言語の中で規範的な正式の言い方と見なされていました。そして、「こうあるべき」という理想的な言葉を指していました。その一方で、方言の違いを越えて互いに通じ合うことを目的とした現実の言葉が「共通語」でした。
また、私は共通語については認識していないことがわかりました。いまだに?です。ただ、一般の人が「標準語」と「共通語」を聞き分けたりする必要がないこともわかりました。大勢の人がわかっていないような気もします。そして、正しい日本語の使い方って何?という疑問も浮かびました。ただし、イントネーションの地方差については混乱することがあります。何とか文脈から理解はすることはできますが。例えば、橋、端、箸などは単語で聞いたら区別することができません。これらを含めて、ここで取り上げたのはごく一部なのですが日本語の奥深さを改めて感じました。

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