何かわからないのですが、楽しい時間はあっという間に過ぎていしまいます。逆に、夜眠れない時にはものすごく時間が長く感じられます。時計を見て、「あれまだ5分しか経っていない」などです。また、大人になると時間が速くすぎるという事もよく聞きます。この時間の感じ方がなぜ違うかについて調べてみました。
楽しいことをしている時、時間が「あっという間」に過ぎる
楽しい活動への没頭時、時間の経過を意識しにくくなるのは、主に以下の要因が挙げられます。これらの要因のどれが優位かを判断することは難しいです。また、これらの3つ要因が同じこと、事象を別の側面で捉えている可能性もあります。
考えられる要因
- 注意の集中と情報の圧縮: 夢中になっている時、注意は目の前の活動に強く集中しています。脳は外部からの情報や時間の経過に関する情報を積極的に処理をしません。そして、意識が「今」の体験に没頭します。また、振り返った時に、時間の経過を示す具体的な出来事の記憶が少なくなります。そして、情報が圧縮されたように感じられ、時間が短く感じられます。
- 「フロー状態」: 心理学では、非常に集中し、時間の感覚が歪む状態を「フロー状態」と呼びます。この状態では、自己意識が薄れ、時間の経過をほとんど感じなくなります。このフロー状態より集中レベルが高いものがゾーンと思われます。例えば、パッターが打席で、投げられた球が止まって見えるといわれるものです。
- 感情との結びつき: 楽しい感情は、時間の経過に対する私たちの知覚を歪ませる傾向があります。心地よさや興奮は、脳が時間に関する情報を処理する優先順位を下げさせる可能性があります。
眠れない時に時間が遅く感じる
眠れない時に加え、暇な時なども同じような感覚になります。このような、眠れない時に時間が長く感じるのは、主に以下の要因が絡み合っています。これらの要因は、前の「楽しいことをしている」状況の反対の状況に近いような感じます。楽しいことをしている時の要因は、活動への注意の集中、情報量の多さ、感情との結びつきでした。眠れない時は、これらの要因への逆の一面、表裏一体のような感じです。その他の要である身体状態への意識を考えられる要因2に分けました。
考えられる要因1
- 注意が時間の経過に集中する: 楽しいことに没頭している時は、活動自体に注意が向かいます。そのため、時間の経過を意識しません。しかし、眠れない時は、何もすることがなく、注意が他に逸れることが少ないです。そのため、意識が時間の経過そのものに集中しています。「あとどれくらいで眠れるだろうか」「もうこんな時間なのにまだ眠れない」といった思考です。加えて、秒針の音や時計の数字など、時間の進行を示す小さな情報にも敏感になります。この時間への意識的な集中が、時間の流れを長く感じさせます。
- 情報量の少なさと単調さ: 眠れない夜は、ベッドの中で動きも、目新しい情報もほとんどありません。単調な状況が続くため、脳が処理する情報量が極端に少なくなります。そのため、記憶に残る「出来事の目印」が少なくなります。その結果、振り返った時も、その瞬間も時間が長く引き延ばされて感じます。
- ネガティブな感情との結びつき: 眠れない状況は、不安、焦燥感、イライラ、孤独感といったネガティブな感情を伴うことが多いです。こうしたネガティブな感情は、時間知覚に影響を与えると示唆されています。
考えられる要因2
- 身体感覚への意識の高まり: 眠れない時、私たちは自分の身体の状態に意識が向きやすくなります。ここでの身体の状態は、寝返りの回数、呼吸の深さ、心臓の鼓動などです。ちょっとした体勢の不快感や、わずかな物音など、通常は意識しないような感覚にも敏感になります。そして、それらを情報として処理しようとします。これもまた、脳が処理する情報量を増やし、結果的に時間が長く感じられる要因となります。
大人になると時間が速く過ぎる
「大人になると時間が速く過ぎる」という感覚は、多くの人が経験する普遍的な現象です。これには複数の要因が絡み合っています。
相対的な時間の長さの変化
- 人生全体の割合: これが最もよく言われる理由の一つです。例えば、10歳の子供にとっての1年は人生の10分の1ですが、50歳の人にとっての1年は人生の50分の1に過ぎません。人生の総体的な長さに対する1年の割合が小さくなるため、相対的に1年が短く感じられます。
新しい経験の減少とルーティンの増加
- 情報の新規性: 子供の頃は、初めての経験(入学、旅行、新しい遊び、初めての場所など)が非常に多く、毎日が新しい発見に満ちています。脳は新しい情報をより詳細に記憶し、後で思い出す時に多くの情報量があるため、時間が長く感じられます。
- 日常のルーティン化: 大人になると、仕事や家事などで日々の生活がルーティン化しやすくなります。新しい経験が減り、同じような出来事が繰り返されます。そのため、脳が記憶する具体的な情報量が少なくなります。これにより、後で振り返った時に「あれ?もう1週間経った?」のように、時間の経過を示す記憶の指標が少なく、時間が速く過ぎたように感じられます。
- 脳の情報処理の変化: 子供の脳は、新しい情報を積極的に吸収し、シナプス結合を活発に行っています。大人になると、情報処理の効率化が進む一方で、新しい情報に対する注意が散漫になりがちです。
記憶の形成と呼び出し
- エピソード記憶の減少: 私たちは「〇〇の時にこんなことがあった」といった具体的なエピソード記憶に基づいて時間を認識することが多いです。大人になると、エピソード記憶の頻度が減り、記憶に残る「 landmark(目印)」となる出来事が少なくなります。そのため、時間が連続的で単調に感じられ、速く過ぎたと錯覚します。
- 展望的記憶と回顧的記憶:
- 展望的記憶 (Prospective Memory): これから何をするか、という未来の計画に関する記憶。
- 回顧的記憶 (Retrospective Memory): 過去の出来事に関する記憶。
大人になると、未来の予定や目標に意識が向きがちです。そして、過去を詳細に振り返る機会が減ります。回顧的に過去を振り返る際に、具体的な出来事が少ないと、時間が短く感じられます。
身体的・生理的な変化
- 代謝速度の変化: 一部の説では、年齢とともに身体の代謝速度が遅くなります。これが時間の知覚に影響を与える可能性も指摘されています。ただし、これはまだ確固たる証拠があるわけではありません。しかし、脳内の情報処理速度や神経活動の変化が時間の知覚に影響を与える可能性はあります。
それぞれ時間感覚の比較
「楽しいことをしている時」と「眠れない時」
楽しいことをしている時は、脳は意識的に時間の経過を監視するのではなく、目の前のタスクや体験にその注意資源のほとんどを割り当てます。これにより、時間の経過に関する情報処理が抑制され新しい情報や変化に富んだ出来事をより詳細に記憶するような処理がされます。そして、楽しい感情による心地よさや興奮は、脳が時間に関する情報を処理する優先順位を下げさせる可能性があります。
眠れない時は、脳は寝る以外に活動の対象がないため、時間に意識が向きます。また、眠る時には、ベッドの中で動きがなく、目新しい情報もありません。そのため、脳が処理する情報量が極端に少なくなります。また、眠れない状況は、不安、焦燥感、イライラ、孤独感といったネガティブな感情を伴うことが多いです。こうしたネガティブな感情は、時間知覚に影響を与えることが示唆されています。
このように「楽しいことをしている時」と「眠れない時」の要因は同じと考えられます。ただ、「時間」を感じる状況が、注意が向くような活動をしているか、脳に入ってくる情報量が多いなどで異っているだけのような気がします。
「大人になる」と上記2つの要因
よく考えてみると「大人になると時間が速く過ぎる」という感覚の時間の単位は、1週間や半年、1年などのように他の2つの分、時間より長いような気がします。つまり、時間という言葉ですが、対象の長さが異なるため要因が異なるのは当然であると考えられます。
また、要因の新しい経験の減少とルーティンの増加は、あてはまりそうです。大人になるにつれ、仕事や毎日の生活などに慣れ、いろいろ経験を積み重ねていきます。そして、新しく取り組むことが減り、ルーティンが増えると両方で脳の処理する情報量が減ります。得られる情報量が減り、処理している時間が同程度の場合、情報処理量が少ないため短く感じてしまう可能性はあると思われます。あくまでも、この長い時間単位での場合になります。大人でも、楽しいことをやっている時は、あっという間という感覚も眠れない時の時間を長いと感じると思われます。
人生全体の割合という、10歳の子供と50歳の大人では、1年に対する割合が異なるというものです。これがよく言われているようですが、過ごしている1年間は同じなのでなんとなく納得できません。しかし、新しく得られる情報量という視点では、大人と子供では大きく異なります。大人が過去の記憶で子供の頃の時間感覚を比較すると「大人になると時間が速くすぎる」と感じることについて納得できます。
まとめ
「楽しい時はなぜあっという間なの?」というテーマで色々調べてきました。これまで適当に「時間」が速く感じる、遅く感じると捉えてきましたが、なんとなく雰囲気が理解できた気がします。また、よく考えてみると「楽しいことをしている時」や「眠れない時」と「大人になって時間が速くすぎる」の時間単位が違うのではないかという発見もあり、時間に対して再認識できました。
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