誰かと意見が食い違ったとき、「ここは折れたほうが楽だ」と頭ではわかっています。しかし、どうしても譲れない瞬間があります。そして、時間を失ったり、関係が悪くなったり、自分が損をすることがわかっています。しかし、“正しくありたい”という気持ちが勝ってしまうことがあります。そして、なぜ人は、合理性よりも“正しさ”を優先してしまうという疑問が浮かびます。
つまり、人は損得で動くはずなのに、なぜか「損してでも正しくありたい」と思う瞬間があります。例えば、相手に譲ればいいのに譲れない、自分が不利になるのに正しさを主張してしまう、後で疲れたり後悔したりするなどです。そして、この“非合理な行動”は、意志の強さや性格の問題ではないようです。むしろ、脳がそう感じるようにできているからです。そして、実はこの不思議な行動には、脳の仕組みが深く関わっているようです。ここでは、この不思議な行動をテーマにして調べることにしました。
このブログでは、「損してでも正しくありたい」について、「損してでも正しくありたい」要因、脳機能との関係について調べましたので以下に説明します。
「損してでも正しくありたい」要因について
正しさは“社会的な価値”であり、自己イメージを守る
人は、以下のように「自分は正しい人間でありたい」という欲求を持っています。例えば、誠実でいたい、嘘をつきたくない、公平でありたいなどです。
そして、これは、自分のアイデンティティ(自己イメージ)を守るために行われています。そして、「正しい自分でいたい」という欲求が、損得より強いからということがあります。つまり、損をしてでも正しくありたいということが背景にあります。
正しさは“集団の秩序”を守るための本能
人間は社会的な生き物で、集団の中で生きるように進化してきました。そのため、秩序を守るため、ルールを守る、公平である、不正を許さないなどをおこなってきました。
また、このような行動は、集団の秩序を保つために重要なものでした。つまり、正しさは 生存戦略としての本能 でもあると言えます。それゆえ、人は、損をしてでも正しさを優先することがあります。
正しさは“自尊心”と深く結びついている
正しくあることは、自尊心(自分を大切に思う気持ち)と直結しています。例えば、正しい行動をした、正しい判断をした、正しい選択をした等は自尊心を満たします。
逆に、間違っていた、不正を見逃した、自分の価値観に反したなどの状況は、自尊心を傷つけます。そのため、人は自尊心を守るために損をしてでも正しさを選びます。
正しさは“道徳的報酬”を生む(損しても気持ちよい)
心理学では、正しい行動をすると脳に“道徳的報酬”が生まれると言われています。例えば、誰かを助けた、公平に振る舞った、嘘をつかなかったなどです。そして、こうした行動は、損をしても 「気持ちよさ」 を生みます。つまり、正しさは 内的な報酬(心の快感) を伴うため、損得を超えて選ばれます。
脳機能との関係:正しさは“脳の快感回路”と結びついている
前頭前皮質:道徳判断の司令塔
前頭前皮質は、倫理・道徳・判断を司る領域です。例えば、何が正しいか、どう振る舞うべきか などを判断するのはこの部分です。つまり、正しさを選ぶのは、高度な脳機能の働きでもあります。
扁桃体:不正を見ると“怒り”が生まれる
扁桃体は危険や不正に敏感な部位です。例えば、不公平、嘘、ルール違反などに反応します。そして、これらを見ると扁桃体が反応し、怒りや嫌悪感が生まれます。そのため、人は不正を見ると損得を超えて反応してしまいます。
線条体(報酬系):正しく振る舞うと快感が生まれる
正しい行動をすると、線条体がドーパミンを分泌します。そして、「よかった」「気持ちいい」という感覚が生まれます。これは“道徳的報酬”と呼ばれます。つまり、損をしてでも正しくありたいのは、脳が正しさを快感として処理するからになります。
島皮質:不正を見ると“痛み”を感じる
島皮質は、身体的な痛みだけでなく、心理的な痛みにも反応する領域です。そして、不正を見ると島皮質が痛みと同じ反応を示すことが示されているようです。つまり、人は不正を見ると“痛い”と感じてしまいます。それゆえ、損してでも正しさを選びたくなります。
まとめ
ここまでこのブログでは、「損してでも正しくありたい」について、「損してでも正しくありたい」要因、脳機能との関係について説明しました。まず、「損してでも正しくありたい」要因について、正しさは“社会的な価値”であり、自己イメージを守る、正しさは“集団の秩序”を守るための本能、正しさは“自尊心”と深く結びついている、正しさは“道徳的報酬”を生むを説明しました。次に、脳機能との関係について、前頭前皮質、扁桃体、線条体、島皮質を説明しました。
そして、人が「損してでも正しくありたい」と思うのは、自己イメージを守りたい、集団の秩序を守る本能、自尊心を保ちたい、正しさが“快感”を生む、不正を見ると“痛み”を感じるといった心理・脳機能が重なっているからでした。そして、自分でも場合によって要因のバランスは異なりますが、これらのような要因に思い当たる節はあります。つまり、正しさは損得を超えた人間の根源的な欲求ということになります。しかし、正しさにこだわりすぎると、自分も他人も苦しくなることがあります。そして、正しさと柔軟さのバランスを取ることが、集団の中でうまくやっていったり心の健康にはとても大切なような気がしました。


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