旅行やイベント、あるいは食事などを振り返ったとき、「全体としては楽しかったのに、最後のトラブルで台無しになった」ということはありませんか? また、「最初はイマイチだったけど、最後が良かったから満足感が残った」ということもありませんか? つまり、楽しかったはずの旅行が「最後のひと悶着」で台無しに感じられたりします。そして、普通の映画でも「ラストシーン」だけで名作に思えたりもします。
そして、人の記憶は意外にも不公平なものです。これは、人間の心理のクセによるものです。これを「ピーク・エンドの法則」と呼ばれるものによるものです。今回は、この「ピーク・エンドの法則」について説明します。
ピーク・エンドの法則とは?
心理学者ダニエル・カーネマンらが提唱した法則です。ピーク・エンドの法則とは、人間がある体験に対するを評価は、”全体”を通してではありません。実は、感情が最も動いたピークと終わりのENDでおこなわれます。つまり、「最も強く印象に残った瞬間(ピーク)」と体験の「最後の場面(エンド)」の印象だけです。ピーク・エンドの法則は、ピークとエンドでその出来事全体の評価が決定づけられるという心理法則です。
・ピーク:経験の中で最も感情が動いた瞬間(喜び、悲しみ、怒りなど)。
・エンド:経験の終わり方。
・全体的な印象:ピークとエンドの二点だけで、経験全体の印象が左右される。
例えば、10時間の体験があったとします。しかし、その評価は平均的な満足度ではありません。つまり、すごく楽しかった1時間や最後の数分の印象が、全体評価を大きく左右します。
日常での例
旅行
- ほとんど順調でも、最後の空港でのトラブルがあると「最悪の旅行」と感じやすい。逆に、途中で嫌なことがあっても、最後が楽しい思い出なら「いい旅行だった」と思える。
- 楽しい思い出や最後に美味しいレストランで食事をした経験ありました。すると、旅行全体を「良い思い出」として記憶に残ります。
- 遊園地のアトラクションなどで、長い待ち時間がありました。しかし、アトラクション体験自体が楽しければ、全体として「楽しかった」という印象が残ります。
映画やドラマ
- 内容が平均的でも、ラストシーンが感動的だと「名作だった」と記憶に残る。
接客やサービス
- お店での時間が普通であったとします。しかし、最後に笑顔で「ありがとうございました」と言われると、印象がぐっと良くなります。
- 予想以上のサービスや特別な気遣いで顧客を喜ばせ、最後の言葉や態度で良い印象を与える。
- プレゼンテーションで最も伝えたい内容をピークに持ってきます。もしくは、最後に再度メリットを伝えることで、良い印象を残せます。
- Webサイトなどで、ユーザーが商品を購入する際のことです。特別な瞬間(割引など)や、購入後の魅力的ページにより、サイト全体の印象を良くなります。
人間関係
- 普段は仲良くしていても、最後に冷たい言葉をかけられると「嫌な人」と感じてしまう。
- 感情が最も高まった瞬間(告白、特別なデートなど)や、別れ際の印象があります。そして、このときが恋愛関係全体の印象を左右します。
活かし方
この法則を知っておくと、日常や仕事にも役立ちます。そして、「最後の印象がすべてを左右する」と意識すると、相手に与える印象も良くできます。
顧客満足度を向上させる
顧客体験のピークとエンドを意識した設計をします。そして、これが顧客に良い印象を与え、リピーターを増やすことができる。
- 大事なプレゼンでは「最後のまとめ」を丁寧に
- ピークを意識して、伝えたい商品やサービスの魅力を熱意をもって説明します。そして、エンドでは感謝の言葉を伝えたり、丁寧に見送ります。それにより、顧客に肯定的な記憶を残し、信頼関係を構築できます。
- イベントや会食では「終わりを気持ちよく」
- 商談全体がどんなに良くても、最後の締めくくりで相手への敬意を示します。これにより、良い印象を残すことができます。
マーケティング戦略を立てる
顧客の感情の動きを予測し、効果的なアプローチをします。すると、顧客の購買意欲を高めることができる。
- 顧客体験の中で感情が最も動いた「ピーク」の瞬間と、その体験の「エンド」の印象を意図的に設計します。それにより、顧客満足度とブランドへの好感度を高め。
- キャンペーンやプロモーションで、顧客に感動や驚きを与える特別な瞬間(ピーク)を作り出します。
- 顧客体験の終了時に、サプライズギフトや割引クーポン、感謝のメッセージ(エンド)を添えます。これにより、顧客の満足度を高め、好ましい記憶として定着させます。
人間関係を円滑にする
別れ際や関係の締めくくりの行動が相手に強い印象を残します。そして、関係の評価を大きく左右するため、別れ際(エンド)の振る舞いを意識することが重要です。相手に良い印象を与え、良好な関係を築くことができる。
- どんなに楽しい時間でも、別れ際が不誠実だと全体の印象が悪くなります。逆に、最後に感謝や誠意を示すことで、相手の満足度を高めることができます。
- 人との会話では「別れ際を大切に」。
- 伝えたいメッセージのピークとエンドを効果的に配置します。そして、聞き手の記憶に残るようにすることができる。
まとめ
いろいろな経験を、私たちは「全体の平均」ではなく「ピーク」と「エンド」で物事を判断する。これが「ピーク・エンドの法則」について説明しました。加えて、いろいろな場面で適用されている例についても説明しました。そして、多くの例から、「ピーク・エンドの法則」が有効である部分を確認することができました。
私は、この法則について、これまで知らなかったので考えたことはありませんでした。しかし、思い返してみる、ピークとエンドの法則が成り立っていたような気がします。そして、終わりを大事にすることが、その出来事全体を輝かせる秘訣を考えることが重要だと思われます。
コメント