なぜ、「上司の言うことがおかしいと感じても、逆らえない。」具体的には、職場で上司から「この資料をすぐ直して提出して」と言われる。しかし、心の中では「この修正、本当に必要?」と思います。そして、気づけば「はい、わかりました」と答えてしまっている。また、テレビなどで専門家の言うことを吟味もせず鵜呑みにしてしまいます。それは、「会議」「残業」「メール指示」など多方面にわたります。このように権威に従うことは社会を成り立たせます。一方で、非倫理的な行為の言い訳にもなり得ます。そして、なぜか疑問を抱えながらも上司の指示に従ってしまっています。その答えは、心理学の有名な「ミルグラム実験」にもつながっているようです。
このブログでは、この権威に服従してしまう心理メカニズムをミルグラム実験を例に用いて、そして、日常に潜む無自覚な服従の事例について調べましたので、以下に説明します。
権威への服従が生み出される心理的メカニズム
ミルグラム実験:状況の力が人を変える
実験の目的
この実験は、第二次世界大戦中、ナチスが行ったホロコーストのような残虐行為が、「命令だったから」という理由で実行されたことを受けて、「ごく普通の人が、権威からの命令であれば、他者にどこまで残酷になれるのか?」という問いに答えるために行われました。
実験の参加者と役割分担
実験には3種類の役割の人物が登場します。それは、教師役(被験者)、生徒役(役者)、白衣の権威者(実験者)の3人です。しかし、実際に被験者として行動するのは教師役の1人だけです。
実験の流れ
- 教師役(被験者)は、生徒役(役者)に、単語のペアを覚えさせるテストを行います。
- 生徒役がテストに間違えると教師役は権威者(実験者)の指示で電気ショックを与えます。
- 電気ショックの電圧は、15Vから間違えるたびに最大450Vまで徐々に上げられます。そして、450Vは「危険なレベル」「致死量」と表示されています。
- 生徒役は、電圧が上がるにつれて苦痛を訴え、壁を叩き、やがて沈黙します。
- 教師役(被験者)がショックを与えるのをためいます。すると、実験者は冷静に次のような指示を被験者に出します。指示は次の3つです。①「続けてください。」②「実験を続ける必要があります。」③「他に選択肢はありません、続けなければなりません。」
実験の結果
- 全被験者の約65%が、致死量の最大電圧の450Vまで電気ショックを与え続けました。
- 450Vまで続けた被験者の多くは、苦痛を感じ、実験者にやめるよう懇願しました。しかし、実験者の指示が勝りました。
結論
ミルグラム実験は、「普通の人が、権威からの命令一つで、いとも簡単に良心を麻痺させ、非人道的な行為を行う」という人間の恐ろしい側面を明らかにしたのです。
- 人は生まれつき残酷なのではない:
- 被験者は、非常に強い心理的葛藤を抱えていました。
- 「状況の力」が個人を凌駕する:
- 電気ショックの継続理由は、実験者の指示、実験の目的である状況がありました。つまり、権威からの指示に服従する心理的な圧力があったからです。
- エージェント状態(代理人状態):
- エージェント状態とは:多くの人は「これは自分の判断ではなく、実験者の指示だから」と考えます。そして、自分を“権威の代理人”として位置づけるます。これをエージェント状態に入ったと言います。
- 被験者は、自分は単に権威者の命令を実行する「代理人(エージェント)」である。そして、結果の責任は自分にはないと感じるようにしていました。このような理由で、非人道的な行為を続けることができたと考えられています。
日常に潜む「無自覚な服従」の事例他
権威のシンボル
- 具体的事例:
- 制服(Uniforms): 白衣、警察官の制服などがあります。つまり、特定の服装が持つ信頼性や威圧感によるものです。
- 肩書き(Titles): 博士、社長、教授といった肩書きです。そして、この肩書の人物の言うこと全てを「正しい」と感じさせてしまう効果があります。
- 外見(Trappings): 高級車、大きなオフィス、高価な時計などです。このような外見のものが持つ「成功」のイメージを与えます。
職場・組織の中での事例
- 「長いものに巻かれろ」の心理: 倫理的にグレーな上司の指示に、出世や人間関係を恐れて異を唱えられない。
- 会議の同調圧力: 誰もが反対意見を持っています。しかし、一番偉い人が賛成した途端、全員がそれに合わせてしまう現象があります。また、この現象は、集団浅慮と言われます。
- 事例: 企業の不正会計や隠蔽があったとします。そして、現場の「おかしい」という声があがりました。しかし、上層部の権威によっておかしいという声が潰されてしまいます。
専門家・情報源への盲信の事例
- 医療現場: 医師の診断に疑問を感じたとします。しかし、「専門家だから」とセカンドオピニオンを求めないことがあります。
- 情報・メディア: 特定のニュースソースやインフルエンサーを「権威」とみなします。そして、その情報や意見を鵜呑みにしてしまいます。
- 事例: 科学的根拠が乏しいことがあったとします。しかし、有名人が推奨するからという理由で特定の健康法や商品を信じてしまいます。
服従の功罪と、健全な関係を築くために
服従の功績:社会を機能させるために必要なもの
- 事例: 交通ルール、法律の遵守、緊急時のリーダーシップがあります。これらは「秩序」という権威への服従が前提となっています。
- 論点: 服従すべき場面と、批判的に考えるべき場面の区別が必要です。
権威との健全な関係を築くためのヒント
- 立ち止まる習慣: 権威からの指示を受けたら、一度立ち止まります。そして、「私はこれに責任を負えるか?」と自問します。
- 論理的根拠の要求: 「なぜそうするのか?」という理由を権威者に明確に求める習慣をつけます。
- 意見を表明する勇気: 「ミルグラムの逸脱者」のように、孤立を恐れずに良心に従うことの価値を認めます。なお、ミルグラムの逸脱者とは、実験で電気ショックを拒否した数少ない被験者です。
服従の「功罪」:メリットとデメリット
- メリット(功):
- 社会秩序の維持: 信号機や法律などです。つまり、権威への服従がなければ社会は機能しません。
- 効率性: 組織やチームでの意思決定や行動が迅速になります。
- デメリット(罪):
- 倫理観の麻痺: ミルグラム実験や歴史上の悲劇等の非人道的な行為を引き起こします。
- 思考停止: 自分で考えることをやめ、批判精神を失います。
まとめ
ここまで権威に服従してしまう心理メカニズムをミルグラム実験を例に用いて、そして、日常に潜む無自覚な服従の事例について説明しました。まず、権威への服従が生み出される心理的メカニズムについて、ミルグラム実験で説明しました。そして、日常に潜む「無自覚な服従」の事例について説明しました。
まず、権威への服従は自然な人間の傾向です。しかし、無意識に任せると危険だということができます。つまり、外部の権威に従う前に、自分の良心と倫理観という「内なる権威」に問いかけます。そして、自分で考える習慣を身につけることが、不必要な悲劇を防ぐ方法の1つのような気がします。つまり、「健全な懐疑心」を持つことが重要のような気がします。


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