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「私だけは大丈夫」の罠:なぜ人はリスクを過小評価するのか?

心理
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 何故か、大きな地震が来ても、自分の家は大丈夫だろうなどと考えてしまいます。そして、この自分だけは大丈夫ってどうなっているのかという疑問を覚えます。また、喫煙や不健康な食生活を続けていても、自分は病気にならないというのも聞きました。そして、仕事が締め切りに間に合うか不安でも、「何とかなるだろう」と楽観的に考えてしまいます。

 他にも、飲酒運転や無謀な運転をするがいます。そして、自分では事故を起こすことはないと思っています。しかし、飲酒運転で検挙されたり、交通事故が一定数起こり続けています。このように、リスクが目の前にあることは十分わかっています。それなのに、「根拠のない『大丈夫』にすがりついてしまうのだろうか?」について調べました。以下に説明させていただきます。

自分だけは「大丈夫」にさせる心理

正常性バイアス(Normalcy bias):非日常を「日常」だと錯覚する心理

 予期せぬ異常事態や危険を目の前にしても、それを「いつものこと」「大したことではない」と思い込み、事態を過小評価してしまう心理が正常性バイアスです。これは、人間の急な変化を“今まで通り”と解釈しようとする習性によるものです。これにより、適切な行動(避難など)が遅れてしまうことがあります。

  • 具体例
    • 災害時:津波警報が出ています。しかし、「大げさだろう」「今までも大丈夫だったから」と避難をためらってしまいます。
    • 事故現場:目の前で事故が起きていることを目撃します。しかし、「まさか自分が巻き込まれるわけがない」とぼんやりと見てしまいます。
    • 病気の初期症状:体の異変を感じても、「気のせいだろう」と放置してしまう。

 理由:私たちは、変化を嫌い、現状維持を好む傾向があります。そのため、非日常的な事態を受け入れるよりも、「いつも通り」だと解釈することで心の安定を保とうとします。

楽観性バイアス(Optimism bias):自分に都合のいい未来を描く心理

 自分にとって良い出来事が起こる確率を過大評価します。そして、悪い出来事が起こる確率を過小評価してしまう心理が楽観性バイアスです。また、これには不安や恐怖をやわらげる作用があります。そして、「自分だけは、他の人よりも良い結果になるだろう」という根拠のない自信を生み出します。

  • 具体例
    • 宝くじ:当選確率が低いとわかっていても、「自分なら当たるかもしれない」と思って買ってしまいます。
    • 投資:失敗する可能性も高いとわかっています。しかし、「自分は成功する」と信じて高リスクな投資に手を出します。
    • 健康:同じ生活習慣の人と比べて、自分だけは病気にならないだろうと考えてしまいます。

 理由:楽観性バイアスは、希望を持ち、前向きに生きる上で必要な心の働きです。このバイアスがあることで、不安やストレスを軽減する、挑戦に踏み出せるといったポジティブな面もあります。しかし、行き過ぎるとリスクを見誤り、危険な行動につながってしまいます。

コントロール幻想(Illusion of control):自分には状況を制御できる力があると思い込む心理

 偶然や運に左右されるような事柄についても、あたかも自分にコントロールできる力があると思い込んでしまう心理がコントロール幻想です。

  • 具体例
    • ギャンブル:ルーレットで特定の番号に賭けている人が、自分の念力でその番号が出ると思い込みます。
    • 運転:スピードを出しすぎているのに、「自分は運転がうまいから大丈夫」と思い込みます。
    • パワハラ:職場の上司から理不尽な要求をされます。しかし、「自分の頑張りで上司を変えられる」と信じてしまいます。

 理由:私たちは、自分の人生を自分でコントロールしたいという欲求を持っています。また、こうした思い込みは、自尊心を保つための心理的な仕組みでもあります。そして、このコントロール幻想は、その欲求が過剰に働き、客観的なリスク評価を妨げてしまいます。

リスクと向き合うために

 これらのバイアスを乗り越え、現実的なリスクと向き合うための具体的な方法を提案します。

  • リスクを数値化する:漠然とした不安を「起こりうる確率」として客観的に捉えます。
  • 他者からの視点を取り入れる:自分とは異なる視点を持つ人(友人、家族、専門家)に意見を聞きます。そして、客観的なリスク評価を助けてもらいます。
  • 「最悪の事態」を具体的に想像する:楽観的な予測だけでなく、最悪のシナリオを具体的に想像し、その対策を考えておきます。

まとめ

 人が「自分だけは違う」と思ってしまうのは、「安心したい・自分を信じたい・自分でいたい」という人間らしい欲求からきたものです。そして、このように思ってしまう心理要因の正常性バイアス、楽観性バイアス、コントロール幻想について説明しました。その中には、私にも程度の差はあるのですが、当てはまる部分はあるような気がしました。この程度が大きくなった場合に客観性に欠けてしまうことになりそうです。

 また、「自分だけは違う」という意識は、決して怠惰でも、傲慢でもないことを明確に認識することができました。それは、このような思考は、人間が自分を守るための心の防衛策でもありました。そこで、大切になってくることは、「誰にでもバイアスがある」と自覚することと思われます。そして、「例外ではなく、一人の人間として冷静に状況を見つめること」。この視点を持つだけで、判断力や人間関係の質が変わってくると考えられます。

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