私は、人の名前を覚えるのが苦手です。また、私のように苦手な人が少なからずいるようです。そして、人の名前を覚えることは、脳にとって意外と負荷の高い作業でもあるようです。また、これとは別に名前がうろ覚えで、どっちの名前だったか混乱することがあります。例えば、「榊原さんだったか、柏原さんだったか…」ということがあります。そんなふうに、なぜかこの2つだけが頭の中で入れ替わってしまう経験はないでしょうか?。
また、不思議なことに、同じ“〜原”でも松原や菅原ではほとんど起きないような気がします。そして、榊原と柏原だけは特別に混同されやすいような気がします。しかし、同じ「〜原」でも、松原、菅原、篠原、柳原、椿原などは、そこまで間違えません。そして、その理由には、脳が名前を処理するときの“クセ”にあるようです。特に「榊原」と「柏原」のように、読み方や意味の構造が近い苗字は、脳の処理のクセによって混同が起こりやすくなるようです。
つまり、脳が名前を処理する際の複数の条件が、奇跡的にすべて揃っているからのようです。その条件には、音のリズム、語頭の近さ、意味の構造、記憶の補完などがあるようです。そして、これらが重なると、脳は2つの名前を同じフォルダに入れてしまいます。その結果、取り違えが起きやすくなるようです。
今回、このブログでは、脳が名前を処理するのに混乱して間違える要因、脳機能との関係について調べましたので以下に説明します。なお、今回は、「文字」の視覚情報による視点による影響は対象から除外しています。
榊原と柏原を間違えやすい要因
脳は名前を「音のリズム」で記憶する
まず、脳は言葉を「音節(拍)」のまとまりとして処理します。そして、「榊原」、「柏原」は、この 5拍の完全一致 が非常に大きいです。しかし、一方で、菅原、篠原、松原などはリズムが違うため、脳内で別フォルダに分類され、混同しにくくなります。つまり、拍数が一致している名前は、脳が“同じグループ”として扱いやすいということになります。
- さかきばら(5拍)
- かしわばら(5拍)
- すがわら(4拍)
- しのはら(4拍)
- まつばら(4拍)
語頭の音が近いと、脳は同じカテゴリに入れる
榊原、柏原は、語頭が さ行/か行 で、音韻的に非常に近くにあります。そして、脳は名前を思い出すとき、まず語頭の音を手がかりにします。そのため、語頭が近い名前は取り違えやすくなります。一方で、柳原、椿原などは語頭が遠く、混同しにくい傾向にあります。
- さかきばら
- かしわばら
- やなぎはら
- つばきはら
「植物名+原」という意味構造が一致している
また、脳は細部よりも「意味のまとまり」を優先して記憶します。そのため、意味カテゴリが一致している名前は同じ棚に入れられやすくなります。そして、柳原・椿原も同じ構造ですが、音が大きく違うため、榊原・柏原ほどの混同は起きません。つまり、意味が似ていても、音が違えば混同は起きにくいということになります。
榊(植物)+原
柏(植物)+原
音の“置換”が自然に起こる関係にある
脳は似た音の並びを処理するとき、音を別の音に置き換えて補完することがあります。
- さ → か
- か → し
- き → わ
このように、音の変換が自然に成立する位置関係にあるため、脳が“もっともらしい別の名前”として補完しやすい。他の苗字はこの置換が成立しにくい。
遭遇頻度が近いと、脳は曖昧な記憶を補完しやすい
榊原も柏原も、そこそこ見る、でも超メジャーではないという“中くらいの頻度”の苗字です。そして、この「中くらいの頻度」は、脳が曖昧な記憶を補うときに別の名前を引っ張りやすい傾向にあります。そのため、松原(メジャー)や椿原(レア)は、頻度が極端なので混同しにくくなります。
脳は名前を「顔・場面」とセットで覚えるため、単独では弱い
名前は通常、顔、声、会った場面とセットで記憶されます。しかし、苗字だけを単独で思い出す場面では、脳が“似た名前”を候補として引っ張ってしまいます。つまり、榊原と柏原は、音・意味・リズムが近いため、この“候補リスト”の中で競合しやすいことになります。
榊原と柏原は「混同しやすさの条件」がすべて揃っている
混同が起きる条件を整理するとこうなります。
| 条件 | 榊原 | 柏原 | 他の苗字 |
| 拍数が同じ(5拍) | ○ | ○ | ×(多くは4拍) |
| 語頭の音が近い | ○ | ○ | △〜× |
| 意味カテゴリが同じ(植物+原) | ○ | ○ | △ |
| 音の置換が自然 | ○ | ○ | × |
| 遭遇頻度が近い | ○ | ○ | △ |
つまり、榊原と柏原は、混同が起きる条件が“すべて揃っている”非常に珍しい組み合わせということになります。それゆえ、他の苗字よりも圧倒的に間違えやすいのです。
脳機能との関係:これは“正常な脳の働き”
この混同は、注意力不足ではなく、脳の正常な働きです。脳は
- 音のパターン(音韻ループ)
- 意味のまとまり
- 遭遇頻度
- 記憶の補完
- カテゴリ化
といった仕組みを使って、膨大な情報を省エネで処理しています。その結果、似た特徴を持つ名前は、脳内で同じフォルダに入れられ、取り違えが起きるというものです。榊原と柏原は、その条件がすべて揃っているため、“間違えやすさの頂点”にいる苗字と言えます。次に、特徴的な部分について説明します。
「音韻ループ」の干渉
ワーキングメモリ(作業記憶)の中には、音声を一時的に保持する「音韻ループ」という仕組みがあります。
- 音の構成: 「さ・か・き・ば・ら」と「か・し・わ・ば・ら」。どちらも5文字で、後半の「〜ばら」が共通しています。さらに、「さ・か・き・ば・ら」と「か・し・わ・ば・ら」のように3音が共通しています。
- 音の入れ替え(音位転換): 脳内で「さ」と「か」という音が競合し、順番を入れ替えて処理してしまうエラーが起きやすい構成です。これは、特定の音が近接しているとニューロンの火花が混ざってしまうような状態です。加えて、「か」が共通しています。
「おばあさんの細胞」とカテゴリー化
脳には特定の概念に反応する神経細胞があるという説(おばあさん細胞説)があります。例えば「特定の人」や「特定の文字の組み合わせ」です。
- 意味の近接性: 「榊(さかき)」も「柏(かしわ)」も、どちらも「神事や縁起物に関連する植物」という強い共通のカテゴリーに属しています。
- タグ付けの混乱: 脳内の辞書(メンタルレキシコン)において、この二つの名前は非常に近い場所に保管されています。そのため、検索をかけた際に出力の取り違えが発生しやすくなります。
まとめ
ここまでこのブログでは、脳が名前を処理するのに混乱して間違える要因、脳機能との関係について説明しました。まず、混乱して間違える要因については、脳は名前を「音のリズム」で記憶する、語頭の音が近いと、脳は同じカテゴリに入れる、「植物名+原」という意味構造が一致している、音の“置換”が自然に起こる関係にある、遭遇頻度が近いと、脳は曖昧な記憶を補完しやすいを説明しました。そして、脳機能との関係については、「音韻ループ」の干渉、「おばあさんの細胞」とカテゴリー化を説明しました。
「榊原」と「柏原」が特別に間違えやすいのは、単なる語感の近さだけではありませんでした。つまり、音のリズム、語頭の音、意味の構造、遭遇頻度、記憶の補完といった脳の省エネ処理が重なる条件が、すべて揃ってしまっているためでした。そして、その結果、榊原と柏原は“もっともらしい別の名前”として互いに補完され、取り違えが起きやすくなっていました。
つまり、これは注意力の問題ではなく、正常な脳の働きが生む自然な現象だと言えます。そして、脳の省エネ処理が働くことにより、似た名前が同じフォルダに分類され、取り違えが起きやすくなっていました。ここで挙げたすべての要因が影響しているかどうかは私にはわかりませんが、複数の要素が重なっていることは確かそうです。そして、脳が混乱していそうなのは感じられました。そのそも脳は五感からの情報を含め多くの情報を処理しないといけないため省エネ処理は色々な部分でされています。それがここにも表れているのかという感じがしました。

コメント