人の表情を感じ取ることは重要な能力のような気がします。例えば、家族の顔色を読み間違って、機嫌が悪いのを読めず激怒されたことがあります。また、会社などでお客さんの表情を読み取ることも必要です。例えば、興味のない話をしたり、専門用語を使いすぎたり、その逆だったりします。そのような時には、表情を読んで説明内容を変えたり、用語のレベルを変える必要があります。
また、人の表情を感じ取る能力は、生まれつき備わっている部分があります。そして、成長する過程で培われる部分の両方があります。これは「非言語コミュニケーション」の中でも特に重要な要素だと思われます。そして、円滑な人間関係を築く上で欠かせない能力と考えられます。このブログでは、人間が表情を感じ取る仕組み、感じ取る能力の個人差、脳との関係、読み取りに失敗する理由、対策について調べた結果を説明しています。
表情の読み取り
仕組み
人は相手の表情から感情を読み取る際、主に以下の2つの要素を無意識に分析しています。
- 顔のパーツの変化: 眉、目、口角の動きなど、顔の各パーツがどのように動くかを観察します。たとえば、口角が上がれば「喜び」、眉間にしわが寄れば「怒り」などです。このように、それぞれのパーツが持つ意味を瞬時に判断します。
- 顔全体のパターン認識: 加えて、読み取るのは顔のパーツ単体だけはありません。それらのパーツが織りなす全体的なパターンから感情を読み取ります。これは、過去に見た膨大な表情のデータとの照合で、無意識のうちに行われています。
能力の個人差
表情を読み取る能力には個人差があります。その要因は多岐にわたりますが、主なものとしては以下が挙げられます。
- 共感力: 他人の感情に寄り添う能力が高い人は、表情の微妙な変化にも気づきやすい傾向があります。
- 経験: 子どもの頃から様々な人と関わり、多くの表情に触れてきた経験が関係します。これらの経験が、表情を読み取る力を高めます。
- 文化的背景: 育った文化や環境によって、感情の表現方法や読み取り方が異なります。
- 脳の機能: 脳の扁桃体や眼窩前頭皮質などは、感情や表情の認識に深く関わっています。ただし、この機能にも個人差があります。
表情を読み取ることは、相手の気持ちを理解し、適切に対応するための第一歩です。しかし、表情だけで相手の感情を決めつけるのは危険です。表情はあくまで非言語コミュニケーションのひとつの側面です。そのため、言葉や状況と合わせて総合的に判断することが重要です。
脳との関係
人の表情を読み取るには、脳の複数の部位が連携して働いています。特に重要な役割を担うのは、主に以下の3つの部位です。これらの脳部位は、それぞれ異なる役割を持ちながらも、互いに密接に連携することで、私たちは相手の表情を正確に読み取り、円滑なコミュニケーションをおこなっています。
扁桃体(へんとうたい)
扁桃体は、感情の中でも特に恐怖や怒りといった危険を伴う情動の処理に深く関わっています。他者の表情を見る際、扁桃体は顔のわずかな変化を非常に速いスピードで検知します。そして、それが脅威であるかどうかを瞬時に判断します。
この働きは、意識的な認識よりも速く、生存に不可欠な役割を果たしています。扁桃体に損傷があると、恐怖の表情を認識することが困難になることが研究で示されています。
上側頭溝(じょうそくとうこう)
上側頭溝は、表情の変化、特に動的な表情の視覚分析に重要な役割を果たします。目の動きや口の動きなど、顔の可変情報を分析することで、相手がどんな感情を持っているのかを詳細に認識します。相手の顔の動きがスムーズか、不自然かといった情報もここで処理され、より正確な感情の読み取りに貢献しています。
眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)
眼窩前頭皮質は、感情の解釈や社会的判断に関わる脳の部位です。この領域は、扁桃体や上側頭溝から受け取った情報を統合します。そして、その場の状況や文脈を考慮しながら、相手の感情を最終的に判断します。
例えば、「悲しい表情をしているが、これは悲しみではなく、感動の涙だ」と解釈するなど、単純な表情認識だけでなく、より複雑な感情の文脈的な理解を可能にします。この機能に障害があると、相手の表情を誤って解釈し、適切な社会的な対応ができなくなることがあります。
読み違える理由
表情の読み違えには、文化、個人差、文脈などの流れ、先入観などのいくつかの要因が複雑に絡み合っています。
文化や個人差による違い
表情の表現方法は、育ってきた文化や環境によって大きく異なります。たとえば、感情を率直に表現する文化もあれば、内面の感情をあまり表に出さない文化もあります。また、個人差も大きく、もともと表情が乏しい人や、感情と表情が一致しにくい人もいます。
文脈の欠如
人は、相手の表情だけでなく、その場の状況や文脈から感情を読み取っています。たとえば、怒っているように見えても、それが真剣な議論によるもので、決して嫌な感情ではない場合もあります。LINEやメールなど、文字だけのやり取りで相手の感情を誤解してしまうのも、この文脈の欠如が主な原因です。
先入観やバイアス
相手に対する先入観やバイアスも、表情の読み間違いにつながります。「あの人はいつも怒っているから、きっと今回も不機嫌だ」といった決めつけです。この決めつけが、本来の感情を見えにくくしてしまいます。
複合的な感情
人間の感情は単純なものではなく、複数の感情が入り混じっていることがあります。たとえば、「嬉しいけれど、少し恥ずかしい」といった感情は、表情に複雑なサインとして現れます。そして、この感情が読み取りを難しくします。
読み違えを防ぐために
表情だけで判断しない
相手の感情を理解する際には、表情だけでなく、声のトーンや話すスピード、ジェスチャーなど、非言語的なサインも合わせて観察します。また、話の内容やその場の状況といった文脈全体から総合的に判断することが重要です。
直接相手に尋ねる
「今、どういう気持ちですか?」と直接聞くことは、誤解を防ぐ最も確実な方法です。特に、重要なコミュニケーションでは、「〜と解釈しましたが、合っていますか?」のように、自分の理解を言語化して確認します。
自分のバイアスを認識する
「私は、特定の表情をネガティブに捉えがちだ」のように、自分がどのような先入観を持っているかを認識するだけでも、無意識の決めつけを減らすことができます。
まとめ
ここまで人間が表情を感じ取る仕組み、感じ取る能力の個人差、脳との関係、読み取りに失敗する理由、対策について調べた結果を説明しました。表情を読み取るのにいろいろな方法を無意識に使っていることも説明しました。そして、表情の読み違えには、文化、個人差、文脈などの流れ、先入観などのいくつかの要因が複雑に絡み合っていました。さらに、読み違いをしないための対策として、表情だけで判断しない、直接相手に尋ねる、自分のバイアスを認識するを示しました。
しかし、表情を読み違えてしまうことは誰にでも起こります。そのため、完璧に読み取ることに固執しないことが重要です。そして、「もしかしたら自分の解釈が違うかもしれない」という柔軟な姿勢を持つこと重要で、より良い人間関係を築く第一歩と考えられます。


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