赤ちゃんやキャラクターをかわいいと感じるのは常識のような感じになっています。ここでは、かわいいとされる赤ちゃんやキャラクターなどの対象にある理由を調べました。加えて、可愛いと感じる人間側の理由(現象)について調べました。
赤ちゃんやキャラクターなどの対象を「かわいい」と感じる理由
人が赤ちゃんや特定のキャラクターを「かわいい」と感じる現象があります。そして、この現象は、進化心理学や認知科学の観点から説明できます。これは、私たちが種として生き残り、子孫を繁栄させる本能的なメカニズムと深く関連しています。ここでは、赤ちゃんとキャラクターがそれぞれかわいく見える理由について説明します。
赤ちゃんがかわいく見える理由
赤ちゃんをかわいいと感じるのは、主に以下の要素が組み合わさっているためです。
- ベビースキーマ(乳児図式): オーストリアの動物学者コンラート・ローレンツが提唱した概念です。これは、赤ちゃん特有の身体的特徴を指すものです。その特徴は、大きな頭、丸い顔、大きな目、短い手足、そしてぷくぷくした体などです。そして、これらの特徴は、私たちに「守ってあげたい」「世話をしてあげたい」という強い感情を抱かせます。
- 脆弱性と依存性: 赤ちゃんは、自分だけでは生きていけないほど脆弱です。そして、完全に他者に依存しています。この無力さが、大人に保護欲や責任感を掻き立て、愛情を注ぐように促しています。
- 無垢さと純粋さ: 赤ちゃんは、邪気がなく、純粋な存在として認識されます。この無垢さが、私たちに安らぎや癒しを与えています。そして、これが「かわいい」と感じさせる要因となっています。
- 肯定的な感情の喚起: 赤ちゃんの笑顔や仕草は、私たちに幸福感や喜びといった肯定的な感情をもたらします。加えて、これも「かわいい」という感情と密接に結びついています。
キャラクターがかわいく見える理由
多くの場合、このベビースキーマを意図的にデザインに取り入れています。そして、このベビースキーマを取り入れたキャラクターがかわいく見えていると考えられます。
- ベビースキーマの応用: 多くの人気キャラクターは、赤ちゃんの身体的特徴をデフォルメしてデザインされています。具体的には、大きな目、丸みを帯びたフォルム、短い手足などです。これにより、私たちの本能的な「かわいい」という感覚に訴えかけます。
- 擬人化と感情移入: 動物や無生物を擬人化し、人間らしい感情や表情を与えます。それにより、私たちはキャラクターに感情移入しやすくなります。そして、キャラクターの表情や仕草が純粋さや無邪気さを表現していると、より一層「かわいい」と感じられます。
- 物語性と思いの共有: 背景ストーリーや、応援したくなる性格、困難を乗り越える姿などへの共感があります。そして、この共感により単なる見た目だけでなく、キャラクター全体に愛着を感じます。その結果、「かわいい」という感情が深まることになります。
- 文化的な影響と流行: 時代や地域によって、「かわいい」と感じるキャラクターのデザインや傾向は変化します。メディアやマーケティングによって、「かわいい」という概念が共有されます。そして、多くの人が特定キャラクターを「かわいい」と感じるようになります。
内容の整理
つまるところ、人が赤ちゃんやキャラクターを「かわいい」と感じるのは、私たちの深層に根ざした種の保存本能と、純粋さや無垢さに対する好意が組み合わさった結果と言えるでしょう。
また、子犬や子猫など動物の子供についてもべビースキーマが当てはまると思われます。それは、大きな目、丸みを帯びたフォルム、短い手足などが共通しているためです。
「人間」が赤ちゃんやキャラクターを「かわいい」と感じる現象
赤ちゃんなどを「かわいい」と感じる現象は、脳科学でも興味深い研究対象となっています。それは、人間の脳の特定の領域の活動や、神経伝達物質の働きが深く関わっているからです。
報酬系の活性化
「かわいい」と感じる対象を見ると、私たちの脳の報酬系が活性化します。報酬系とは、快感や喜びを感じ、それらの行動を繰り返すように促す脳の回路のことです。
- 側坐核(そくざかく): 報酬系の主要な部位の一つである側坐核は、快感情と強く関連しています。赤ちゃんなどを見ると、この側坐核の活動が高まることが脳画像研究などで示されています。
- ドーパミン: 側坐核の活動には、神経伝達物質であるドーパミンが大きく関与しています。ドーパミンは、意欲や学習、そして喜びといった感情と結びついています。そのため、「かわいい」ものを見ることでドーパミンが分泌されます。その結果、私たちに心地よさや幸福感をもたらします。これにより、私たちは「かわいい」対象にもっと注意を向けたり、世話をしたいという気持ちが強まったりします。
オキシトシンの分泌
「愛情ホルモン」や「愛着ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンがあります。このオキシトシンも「かわいい」という感情と深く関係しています。
- 愛着形成の促進: オキシトシンは、特に親子間の絆や社会的つながりの形成に重要な役割を果たします。赤ちゃんとの触れ合いやアイコンタクトなどによってオキシトシンが分泌されます。そして、養育行動を促し、親密な関係を築く手助けをします。かわいいキャラクターに対しても、私たちは擬似的な愛着を感じます。そして、その際にオキシトシンが分泌される可能性があります。
ベビースキーマへの無意識の反応
前述のベビースキーマには、大きな頭、丸い顔、大きな目などの特徴がありました。これは、私たちの脳に「守るべき対象」と認識させるようにプログラムされていると考えられます。
- 生得的な反応: 赤ちゃんの特徴に反応して「かわいい」と感じ、保護的な行動を促されます。これは、人間の生存戦略として脳に組み込まれた生得的な機能であると考えられています。
- 注意の集中と行動の変化: かわいいものを見ると、私たちの注意の焦点が狭まります。そして、その対象に対する集中力が高まることが研究で示されています。また、発話がゆっくりになったり、より慎重な行動をとるようになったりといった行動の変化も観察されます。
共感とミラーニューロン
間接的ではありますが、共感や模倣に関わるミラーニューロンも、「かわいい」という感情に影響を与えている可能性が指摘されています。
- 感情の共有: 赤ちゃんの笑顔や無邪気な表情を見ると、私たちの脳内でそれに類似した感情が喚起されます。その結果、共感を生み出すことがあります。これは、ミラーニューロンの働きによるものです。この他者の行動や感情を自分のことのように感じ取る能力がミラーニューロンです。この様にミラーニューロンが関係していると考えられます。
内容の整理
脳科学的に見ると、人が赤ちゃんやキャラクターを「かわいい」と感じるのは、脳の報酬系が活性化し、ドーパミンやオキシトシンといった神経伝達物質が分泌されることで快感や愛着が促進されるという、非常に強力なメカニズムに基づいています。これは、未熟な状態で生まれてくる人間の赤ちゃんを保護し、種の存続を図るための生物学的、進化的な適応の結果であると言えます。キャラクターも、この人間の本能的な「かわいい」の認識メカニズムを巧みに利用してデザインされているため、同様の脳の反応を引き起こすのです。
まとめ
まず、赤ちゃんやキャラクターを「かわいい」と感じる対象の影響について説明しました。そこでは、ベビースキーマである、大きな頭、丸い顔、大きな目、短い手足、そしてぷくぷくした体など影響を示しました。そして、私たちの深層に根ざした種の保存本能と、純粋さや無垢さに対する好意が組み合わさった結果と考えました。
つぎに、人間側が赤ちゃんやキャラクターを「かわいい」と感じる要因について説明しました。そこでは、脳科学的視点から、脳の報酬系が活性化し、ドーパミンやオキシトシンといった神経伝達物質が分泌されることで快感や愛着が促進されることを示しました。
なお、この2つ要因が示す結果に、「種の保存本能、純粋さや無垢さに対する好意というもの」と、「脳の報酬系を活性化し、ドーパミンやオキシトシンといった神経伝達物質が分泌されることで快感や愛着が促進される」がありました。これらは、種の保存本能の部分とその本能の部分が働いている時の脳の状態と捉えることができます。つまり、種の保存本能である、純粋さや無垢さに対する好意を持った時、脳の報酬系を活性化し、神経伝達物質が分泌される仕組みがあると考えられます。
人間には個性があるのでこのようなかわいいと感じる程度は人それぞれだと思われます。また、可愛いと思える対象についても、多くのものに感じれる人とそうでない人がいると思われます。
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