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この暑さの原因は?ゲリラ豪雨は?

科学
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 ここ最近非常に暑い日が続いています。また、ここ数年特に暑くなっているような気がします。そして、よく耳にするのが「フェーン現象」と「ゲリラ豪雨」です。北海道で最高気温が40℃を超える予報が出るなんて考えもしませんでした。そして、この要因としてフェーン現象が挙げられています。また、最近耳にしなくなった「ヒートアイランド現象」というのも気になります。北関東のあたりはこの影響があると言われていました。今回、「ヒートアイランド現象」と「ゲリラ豪雨」と「フェーン現象」を取り上げ、その内容の詳細とそれらの比較をします。

ヒートアイランド現象とは

 都市部の気温が郊外に比べて高くなる現象のことをヒートアイランド現象と言います。これは、等温線を描くと、まるで海に浮かぶ「島」のように高温域が分布するように見えます。そして、このように見えることから、「ヒートアイランド(熱の島)」と呼ばれています。

主な原因

 ヒートアイランド現象は、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。そして、主な原因としては以下の点が挙げられます。

人工排熱の増加

  • 工場、自動車、エアコンなどから排出される熱(人工排熱)が、都市部の気温を上昇させます。特に夏季のエアコンの使用量増加は、都市の排熱を大きく増加させる要因となります。

地表面被覆の変化

  • 都市部では、道路や建物が増えています。これにより、土や植物などの自然の地面がアスファルトやコンクリートで覆われるます。そして、これらの人工的な地表面は、太陽光を吸収しやすく、熱を蓄えやすい性質があります。
  • 蓄えられた熱は夜間になってもなかなか冷めません。その結果、最低気温が上昇する原因にもなります。そして、次の日の気温が重なり暑いが続く要因になっていとも考えられます。

緑地や水面、土壌の減少

  • 植物は蒸散作用によって周囲の熱を吸収し、気温上昇を抑える効果があります。また、水面も蒸発によって気化熱を奪い、気温の上昇を抑制します。
  • 都市化によってこれらの緑地や水面が減少していきます。その結果、冷却効果が失われ、気温が上昇しやすくなります。

都市構造による熱の滞留

  • 高層ビルが林立する都市部では、ビル風によって空気の流れが阻害されます。そして、熱がこもりやすくなったりすることがあります。また、ビルの壁面が太陽光を反射し、さらに周囲の温度を上げることもあります。

ヒートアイランド現象による影響

 私たちの生活や環境にヒートアイランド現象は、様々な悪影響を及ぼします。

  • 健康被害: 熱中症のリスクが高まります。特に、高齢者や乳幼児にとっては命に関わる問題となることがあります。
  • 熱帯夜の増加: 最低気温が下がらない熱帯夜が増えます。これにより、睡眠の質の低下や体調不良を引き起こされます。
  • 生態系への影響: 都市に生息する動植物の生育環境が変化します。そして、生態系に影響を与える可能性があります。
  • 大気汚染の悪化: 気温が高いと光化学スモッグなどの大気汚染物質が生成されやすくなります。
  • エネルギー消費の増加: 気温が高くなることでエアコンの使用が増えます。これにより、さらにエネルギー消費量が増加するという悪循環が生じます。

対策

 ヒートアイランド現象への対策としては、以下のような取り組みが進められています。ヒートアイランド現象は、都市化の代社会において避けては通れない課題の一つです。しかし、様々な対策を組み合わせることで、その影響を緩和することが可能です。

  • 緑化の推進: 屋上緑化、壁面緑化、公園の整備など、都市部の緑を増やします。これにより、蒸散作用による冷却効果を高めます。
  • 保水性舗装や透水性舗装の導入: 地面に水を保ったり、水を通したりする舗装材を使用します。これにより、路面温度の上昇を抑制します。
  • 高反射率塗料の使用: 建物や道路の表面に太陽光を反射しやすい塗料を使用します。これにより、熱の吸収を抑えます。
  • クールスポットの創出: 噴水やミスト設備を設置したり、水辺空間を整備したりします。これにより、涼しい場所(クールスポット)を作り出します。
  • 公共交通機関の利用促進: 自動車の利用を減らすことで、人工排熱を削減します。
  • 省エネの推進: エアコンの適切な利用など、個々の意識レベルでの省エネも重要です。

ゲリラ豪雨とは

 局地的かつ短時間に非常に激しい雨が降る現象を指す通称がゲリラ豪雨です。気象庁の正式な用語ではありません。しかし、急な強い雨で予測が難しく、まるでゲリラ的に襲ってくるかのように見えるます。このようなことから、一般に広く使われています。気象庁では「局地的大雨」「集中豪雨」「短時間強雨」といった言葉で表現される現象に当たります。

特徴

  • 局地性: 非常に狭い範囲で降るため、隣の町では降っていないのに、ある地域だけ猛烈な雨が降るといったことが起こります。
  • 短時間性: 数十分から数時間といった短い時間で、集中して大量の雨が降ります。
  • 突発性: 発生の予測が非常に難しく、急に空が暗くなり、雷鳴とともに降り出すことが多いです。
  • 強烈な雨量: 1時間に50mm以上、場合によっては100mmを超えるような猛烈な雨が降ることがあります。

発生メカニズム

 ゲリラ豪雨の主な原因は、積乱雲(せきらんうん)の急激な発達です。積乱雲は「入道雲」とも呼ばれる、非常に発達した背の高い雲で、強い雨や雷、突風、ひょうなどを伴うことがあります。

 積乱雲が発達する主な条件は以下の通りです。

  • 地上の高温と強い日差し: 地面が太陽の光で強く温められます。これにより、地上の空気が暖められて軽くなり、上昇気流が発生します。
  • 上空の寒気(大気の不安定化): 上空に冷たい空気がある場合、地上の暖かい空気との温度差が大きくなります。これにより、大気が非常に不安定な状態になります。この状態だと、上昇気流がさらに強まりやすくなります。
  • 水蒸気の供給: 上昇する空気に水蒸気が豊富に含まれていると、上空で冷やされて大量の水滴や氷晶になります。そして、積乱雲が急速に成長することになります。特に、海からの湿った風が流れ込んだり、フェーン現象で乾燥した地域であっても、湿った空気が供給されると積乱雲の発達を促します。
  • 前線や地形の影響: 複数の気流がぶつかり合う前線付近や、山などの地形に沿って上昇気流が強化される場所でも発生しやすくなります。

 これらの条件が揃うと、積乱雲は巨大な鉛直方向の対流(空気が上昇・下降する循環)を起こします。そして、内部で大量の水滴や氷晶が生成されます。そおれにより、短時間で一気に地上に落ちてくることでゲリラ豪雨となります。都市部では、ヒートアイランド現象によって地上が特に強く温められるため、積乱雲が発達しやすい条件が整いやすく、ゲリラ豪雨の発生頻度が高い傾向にあります。

ゲリラ豪雨がもたらす被害

  • 都市型水害(内水氾濫):
    • 下水管や排水溝の処理能力を超え、道路の冠水、地下街や地下室への浸水、マンホールの逆流などが起こります。都市部で特に多く見られます。
  • 河川の急激な増水・氾濫:
    • 中小河川や用水路などが短時間で増水し、堤防を越えて氾濫する危険があります。
  • 土砂災害:
    • 急な斜面で土砂崩れや崖崩れ、土石流などが発生することがあります。
  • 交通機関の麻痺:
    • 道路の冠水、鉄道の運行停止、高速道路の通行止めなど、交通網に大きな影響が出ます。
  • インフラへの被害:
    • 停電、通信障害などが発生することもあります。
  • 人的被害:
    • 増水した水路への転落、流されるなどの事故や、土砂災害による被害も発生します。

対策と注意点

  • 情報収集:
    • 気象庁の「降水ナウキャスト」や「雷ナウキャスト」など、最新の気象情報を活用しましょう。
    • スマートフォンの防災アプリや自治体からの緊急速報なども活用し、情報に注意を払いましょう。
  • 避難行動:
    • 雨が降り始める前に、ハザードマップで危険な場所を確認し、避難経路を把握しておきましょう。
    • 危険を感じたら、早めに安全な場所に避難しましょう。
    • 増水した水路やアンダーパスなど、危険な場所には絶対に近づかないでください。
  • 普段からの備え:
    • 非常持ち出し袋の準備、家族との連絡方法の確認など、日頃から防災意識を高めておくことが重要です。
    • 都市部では、地下空間の利用を避ける、ハザードマップで浸水想定区域を確認するなど、場所に応じた対策が必要です。

フェーン現象とは

 湿った空気が山脈を越える際に発生する気象現象をフェーン現象と呼びます。

メカニズム

  • 風上側の山の斜面を上昇: 湿った空気が山にぶつかり、斜面を上昇します。上昇すると気圧が下がるため、空気は膨張して温度が下がります(断熱膨張)。
  • 水蒸気の凝結と降水: 上昇によって温度が下がると、空気中の水蒸気が凝結して雲ができ、雨や雪を降らせます。このとき、水蒸気の凝結熱が放出されるため、温度の低下率は緩やかになります(湿潤断熱減率:約0.5℃/100m)。
  • 風下側の山の斜面を下降: 雲や雨(雪)を降らせて乾燥した空気が、山を越えて風下側の斜面を下降します。下降すると気圧が上がるため、空気は圧縮されて温度が上がります(断熱圧縮)。このとき、水蒸気がほとんどないため、温度の上昇率は大きくなります(乾燥断熱減率:約1.0℃/100m)。
  • 高温・乾燥: この結果、風下側では、山を登る前よりも高温で乾燥した風が吹くことになります。

特徴

  • 山脈を越える風が関係している。
  • 特定の地域(山脈の風下側)で発生しやすい。
  • 空気の乾燥を伴うことが多い。

ゲリラ豪雨の発生とヒートアイランド現象の関係

 この2つの現象について関係があると指摘されています。特に都市部でゲリラ豪雨が増加している原因の一つとして、ヒートアイランド現象の影響が挙げられます。

これらの影響するメカニズム

 ゲリラ豪雨は、短時間で局地的に非常に激しい雨が降る現象です。これは、主に積乱雲(入道雲)の発達によってもたらされます。ヒートアイランド現象は、この積乱雲の発達を促す要因となります。

地表面の加熱と上昇気流の強化

  • 都市部では、アスファルトやコンクリートなどの人工的な地表面が太陽光を吸収しやすい。そのため、熱を蓄えやすく、気温が郊外よりも高くなります。これがヒートアイランド現象です。
  • この高温になった地表面から、暖められた空気が上昇します(上昇気流)。都市部は郊外に比べてこの上昇気流がより強く発生しやすくなります。

大気の不安定化と積乱雲の発達

  • 上昇した暖かく湿った空気は、上空で冷やされて水蒸気が凝結し、雲を形成します。特に、上空に冷たい空気が存在する場合(いわゆる「上空に寒気」)、地上との温度差が大きくなり、大気が非常に不安定な状態になります。
  • ヒートアイランド現象によって地上が強く暖められます。これにより、この温度差がさらに大きくなり、積乱雲が急速に発達しやすくなります。

水蒸気の供給と集中豪雨

  • 積乱雲が発達すると、大量の水蒸気を上空へと運び上げます。そして、この水蒸気が一気に雨となって降り注ぐます。これにより、局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨)が発生します。
  • 都市部では、水田や森林が少なく、地表面からの水蒸気の供給が少ない傾向にあります。しかし、大気の不安定化が積乱雲の形成に大きく寄与していると考えられています。

都市の建物による影響

  • 高層ビルが密集している都市では、風の流れが複雑になっています。そのため、特定の場所で上昇気流が発生しやすくなることもあります。また、ビルの壁面が太陽光を反射して周囲の温度をさらに上げます。これも、間接的に寄与している可能性があります。
  • さらに、都市には工場や自動車、エアコンなどからの人工排熱が多い状況です。これも都市の気温上昇に貢献し、積乱雲の発達を助長する要因となります。

内容の整理

 このように、ヒートアイランド現象は、都市の気温を上昇させ、大気を不安定にしています。そして、この影響で積乱雲の発生と発達を促しています。結果としてゲリラ豪雨が発生しやすくなる環境を作り出すと考えられています。

 ゲリラ豪雨は短時間に大量の雨を降らせます。その雨が、都市部の排水能力を超え、道路の冠水、地下街の浸水、河川の氾濫など、甚大な被害を引き起こすことがあります。ヒートアイランド現象の緩和は、熱中症対策だけでなく、ゲリラ豪雨の発生リスク低減にも繋がる重要な課題となっています。

フェーン現象とヒートアイランド現象の関係

 ヒートアイランド現象とフェーン現象は、どちらも気温を上昇させる気象現象です。しかし、直接的な因果関係があるわけではありません。それぞれが独立して気温を上昇させる要因になるので、場合によっては複合的に作用して猛暑を悪化させることがあります

これらの関係性について

 両者は発生メカニズムが全く異なりますが、以下のような関係性があると言えます。

  • 独立した高温化要因: フェーン現象は主に地形と気流によって、ヒートアイランド現象は主に都市の人工的な要素によって気温を上昇させます。これらは独立して発生し、それぞれが猛暑の原因となり得ます。
  • 複合的な作用: 例として、フェーン現象によって高温で乾燥した空気が都市に吹き降りてきた場合に付いて説明します。もともとヒートアイランド現象によって気温が高い都市は、さらに気温が上昇し、記録的な猛暑となることがあります。つまり、フェーン現象によって暖められた空気が、ヒートアイランド現象によってさらに加熱されるという形で、相乗的に作用する可能性はあります。
  • 場所と時間の違い: フェーン現象は山脈の風下側で一時的に発生することが多いです。これに対し、ヒートアイランド現象は都市部で日常的に発生し、特に夜間に顕著になる傾向があります。

 したがって、「関係がある」というよりは、「それぞれが異なるメカニズムで気温を上昇させる現象であり、場合によっては複合的に作用して極端な高温をもたらすことがある」と理解するのが適切と考えられます。

ゲリラ豪雨とフェーン現象の関係

 これらの現象には、直接的に因果関係があるわけではありませんが、フェーン現象が発生している際に、ゲリラ豪雨が発生しやすくなる条件が揃うことがあります。 つまり、フェーン現象がゲリラ豪雨の発生を助長する可能性がある」という関係性です。

これらの関係性について

 フェーン現象がゲリラ豪雨の発生を助長するシナリオはいくつか考えられます。

大気の不安定化の促進

  • フェーン現象によって、山脈の風下側の地上付近の気温が極端に上昇します。
  • このとき、上空に比較的冷たい空気がある場合、地上との温度差が非常に大きくなります。
  • 大気の温度差が大きいほど、大気は不安定になり、強い上昇気流が発生しやすくなります。この強い上昇気流が、積乱雲を急速に発達させる主要なメカニズムです。
  • つまり、フェーン現象による地上の高温化が、積乱雲が発生しやすい「大気の不安定」な状態をさらに強める可能性があるのです。

湿った空気の「供給元」としての間接的な役割

  • フェーン現象は「湿った空気が山を越えて乾燥する」現象です。しかし、山を越える「前の」空気は非常に湿っています。
  • 台風や低気圧の接近などで、大量の暖かく湿った空気が流れ込んでいる状況でフェーン現象が発生します。そして、その「流れ込んでいる湿った空気」が、積乱雲の「燃料」となる水蒸気を供給する役割を果たします。
  • フェーン現象の風下側では一時的に乾燥することがあります。しかし、風上側や、フェーン現象の影響が薄れる地域、あるいは局地的な風の収束によって、湿った空気が再び集積し、積乱雲が発達する可能性はあります。

具体的な例:

 日本列島では、夏に南から暖かく湿った空気が流れ込み、それが山脈にぶつかることで、山脈の風上側で雨が降る一方、風下側ではフェーン現象が発生して猛暑になることがあります。この猛暑で地上付近の空気が強く暖められ、さらに日中の強い日差しで大気が不安定になると、局地的に積乱雲が発達し、ゲリラ豪雨となる、といった流れが考えられます。

これらの整理

 このように、フェーン現象そのものがゲリラ豪雨を直接引き起こすわけではありません。しかしながら、フェーン現象によって地上の気温が異常に高くなり、大気が不安定化します。そして、積乱雲が発達しやすい環境が整い、結果としてゲリラ豪雨の発生リスクが高まるという関係性があると言えます。

 気象予報で「フェーン現象により気温が上昇する」という情報が出た際は、同時に大気の状態にも注意を払い、ゲリラ豪雨の可能性も考慮することが重要と思われます。

まとめ

 これらの結果から、フェーン現象と「ゲリラ豪雨、ヒートアイランド現象」については、直接的な因果関係がありませんでした。また、ヒートアイランド現象はゲリラ豪雨の発生と関係がありました。そして、ゲリラ豪雨とフェーン現象の関係については直接的な関係はありませんでしたが、間接的関係という見方があります。それは、フェーン現象が発生している際に、ゲリラ豪雨が発生しやすくなる条件が揃うということです。このように、直接的な因果関係がなくても、相互に影響をもたらす間接的関係である可能性があります。

都市部での複合的な影響

  • フェーン現象が発生する地域(多くは盆地や内陸部)に大都市がある場合、フェーン現象による高温化に、さらにヒートアイランド現象による人工排熱や地表面の加熱が加わり、地上の気温が異常に高くなることがあります。
  • このような「超高温」の状況は、大気を極めて不安定にし、積乱雲が発達しやすい環境をさらに強固にするため、ゲリラ豪雨のリスクを高めます。

 このように「フェーン現象」と「ヒートアイランド現象」が発生しやすい地域は気温が高くなったり、更に高温になる可能性があります。そして、この条件が整った地域には「ゲリラ豪雨」が降る可能性が高くなると考えられます。

 夏が暑くなるという現象にはいろいろな要因があることまでは理解できました。そして、北関東が超高温の状況になりやすいということまでは理解できました。しかし、北海道で最高気温40℃になるということまでは受け入れがたい状況です。こんなに暑くならない環境に戻らないかとは思います。

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