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脳は「現実」をどう創るのか?:五感の個人差から紐解く世界の謎

認知科学
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 私が「美味しい」と思って友達をラーメン屋さんに連れて行ったことがあります。しかし、友達から「まずい」と言われショックを受けたことがあります。また、みんなが「美味しい」というカレー屋さんのカレーが、私には普通で喜ぶほど?という疑問を持ったことがあります。

 また、音楽に関しても友人が「これ最高!」と言う曲も、私にはそうでもなかったり。これ「良い香り」という香水が、自分の好みでないことがありました。同じものを食べたり、聞いたり、書いだりしても、受け取り方は違うのではないかという疑問が浮かびました。そして、この考え方は、今見ているバラの花の「赤」は、別の人が見ている「赤」と同じ色?という疑問が浮かびます。どう考えても、視覚の赤を見た状態が同じかどうか確認することはできません。

 これらことから、人は「五感を通して同じ世界を見て、聴いて、味わって」います。しかし、どのように感じてるのかはわかりません。脳がどのように現実を造っているのかというテーマで説明します。

五感の個人差を生み出す3つのメカニズム

生物学的な違い:受け取る感覚情報がそもそも違う

 まず、五感の入り口となる感覚器官の構造や機能には、個人差があります。なお、感覚器官には、目、耳、舌、鼻、皮膚があります。また、遺伝子によって、受け取れる情報の範囲や感度が異なります。

  • 具体例
    • 味覚:「味覚遺伝子」は人により違いがあります。そのため、特定の苦味を強く感じる人もいれば、全く感じない人もいます。パクチーの好き嫌いも、この遺伝子の影響が指摘されています。
    • 色覚:色を識別する細胞(錐体細胞)の機能の違いがあります。そのため、「色覚異常」と診断される人もいれば、一般の人よりも多くの色を見分けられる人もいます。
    • 聴覚:聴覚の感度にも個人差があります。特定の周波数の音だけが聞き取りにくい、あるいは逆に敏感に聞こえる、といった違いがあります。

 理由:このように、五感の入り口の段階から、すでに異なる世界の情報を受け取っています。

脳の処理の違い:同じ情報でも解釈が違う

 五感から入った情報は、最終的に脳で処理・解釈されます。この「脳のフィルター」が、私たちの過去の経験や記憶、文化的背景によって異なります。

  • 具体例
    • 視覚:「だまし絵」や「錯視」は、脳が特定のパターンを認識しようとする働きがあります。これを利用して、実際には存在しないものを見せます。そして、同じ絵でも、人によって見え方が違うことがあります。
    • 嗅覚:特定の香りを嗅いで「懐かしい」と感じる人がいます。その一方、全く違う記憶を思い出す人もいます。香りの感じ方は、その香りに関連する個人的な経験に強く影響されます。
    • 聴覚:「空耳アワー」のように、無意味な音の羅列でも同じことが言えます。つまり、脳が知っている言語や音楽に似たパターンを見つけて意味づけしようしています。

 理由:五感は、単なる情報の受け渡しをしているだけではありません。脳が過去の経験に基づいて「意味づけ」を行う創造的なプロセスになっています。

意識と注意の違い:どこに焦点を当てるかで世界が変わる

 私たちは、五感で受け取る膨大な情報の中から、ごく一部しか意識していません。この「注意」を向ける先が、人によって異なります。

  • 具体例
    • カクテルパーティー効果:騒がしいパーティー会場でも、自分にとって重要な会話(自分の名前を呼ぶ声など)だけを聞き取ることができる現象です。これは、脳が音の情報を取捨選択しているからです。
    • パートナーが髪を切ったことに気づく人・気づかない人:相手の些細な変化に注意を向けるかどうかが、その違いを生みます。
    • 聴き慣れない言語:英語のネイティブスピーカーは細かな音の違いを聞き分けられます。しかし、そうでない人には全て同じに聞こえてしまいます。これは、脳がどの音に注意を向けるか学習しているためです。

 理由:私たちの五感は、「見ているもの」「聞いているもの」のすべてを認識しているわけではありません。「意識を向けたもの」だけを世界として認識しています。

人によって違う:五感の多様性を受け入れること

  • 「絶対的な現実」は存在しない:私たちが認識している世界は、一人ひとりの脳が創り出した「主観的な現実」である可能性が高い。
  • 他者との違いを理解するヒント:「自分にはそう見えないけど、相手にはそう見えているのかもしれない」と考えることで、他者の感じ方を理解するきっかけになる。
  • 新しい発見の可能性:五感の違いを意識することで、これまで気づかなかった新しい世界の面白さや豊かさを発見できるかもしれない。

まとめ

五感の個人差

 具体的には、視覚部分の目の高さが違う、両目の間隔が違う、視力が違う、色覚が違うなど視覚機能が違うことが言えます。また、耳の高さが違う、両耳の間隔が違う、聴力が違うなど聴覚が違うことが言えます。そして、鼻、鼻の穴の大きさが違う、鼻の中の構造が違うなど嗅覚機能が違うということも言えます。また、舌の大きさが違う、舌にある味蕾の甘味、塩味、酸味、苦味、うま味などの受容体の数が違うなどの味覚機能が違うということも言えます。そして、体の大きさが違う、手、足の大きさ長さ、大きさが違う、手足などを動かす感覚が違う、物に触れる触覚などの皮膚感覚が違うなどということも言えます。

 つまり、五感の入力部の個人個人の体のパーツの大きさ、機能などの感覚器が異なることになります。

 そして、生活してきた家族、地域、国など社会的環境が異なります。、それに伴って過去の経験、記憶、それらのものに対する感情などの、入力情報を解釈するベースになるものも異なります。加えて、注意、意識する部分も過去の経験、記憶、感情などの影響を受けるためフォーカスする対象も異なることになります。

 そして、五感からの入力情報を解釈する部分でも、どこに注目するかという注意する部分も、個人個人によって異なることになります。

現実を創る

 人は、五感を通して世界を見て、聴いて、味わってなどをして脳内に現実を創っています。しかし、受け取る目や耳などの感覚器も一人ひとり異なります。そして、同じ情報でも、解釈する際に用いられる過去の経験、記憶や感情などが用いられます。そのため、解釈結果も異なります。そして、意識する部分もその個人によって異なります。

 このような結果から、同じ空間にいたとしても、同じ現実が創られているわけでなく、それぞれに固有の現実が創られていることになります。そして、冒頭で疑問点に挙げていた、「今見ているバラの花の「赤」の色』についても異なる赤が見られていると考えられます。

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