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なぜ金属は”冷たく”感じ  氷は“痛い”と感じる?

科学
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 部屋の中で金属を触ると冷たいような感じがします。同じ、気温の中にあるにも関わらず・・・・。ことは別に、自動販売機で購入したペットボトル飲料も冷たいと感じます。これは、ペットボトル自体の温度が低いので冷たいと感じます。こちらは当然と言えば当然です。

 これとは別に、氷を触ると痛いと感じるときがあります。自動販売機で購入したペットボトルでは起きない現象です。これらの現象に調べました結果を説明します。

金属に触ると冷たく感じる理由

 金属に触ると冷たく感じるのは、主に熱伝導率の高さ私たちの体温が関係しているらしいです。そこで、この実態について、いくつかの要因を例に説明します。

熱伝導率が高いから

熱伝導率とは?

 物質が熱をどれだけ伝えやすいかを示す指標です。この熱伝導率が高い物質ほど、熱を素早く移動させることができます。

金属の場合

 金属は、電子が自由に動き回れる「自由電子」という特殊な構造を持っています。そして、この自由電子が熱エネルギーを非常に効率よく運ぶため、金属の熱伝導率は非常に高いのです。

体温が奪われるから

  • 金属の温度が私たちの体温(約36℃)よりも低い場合に付いて説明します。この条件で私たちが金属に触れるとき、私たちの体から金属へと熱が移動します。
  • 熱伝導率が高い金属は、体から熱を素早く吸収し、その熱を金属全体に拡散させます。そして、触れている部分の皮膚からは、連続的に熱が奪われ続けます。
  • 熱が急速に奪われることで、私たちの皮膚の温度が急激に下がります。その結果、「冷たい」という感覚として脳に伝わります。

他の物質との比較

 例えば、同じ室温(例えば25℃)の木材と金属を考えてみましょう。

木材に触れた場合

 木材は熱伝導率が低いです。そのため、私たちの体から木材へ熱が移動する速度は非常にゆっくりです。そして、熱が奪われる量が少ないため、私たちはそれほど冷たいとは感じません。

金属に触れた場合

 金属は熱伝導率が非常に高いです。私たちの体から金属へ熱が猛スピードで移動します。その結果、体がどんどん熱を奪われるため、冷たいと感じるのです。

内容の整理

 このように実際に金属が特別に冷たくなく、室温であれば他の物と同じ温度にも関わらず、私たちの体から熱が奪われる速度が速いために、冷たく感じるという感覚的な現象ということになります。

氷を触ると“痛い”と感じる理由

 氷に触れると「痛い」と感じることがあります。これは、単に「冷たい」という感覚を超えて、生体防御のための警告信号が発せられていると考えられています。つまり、極端な低温が身体組織に損傷を与える可能性があることを示しています。そして、 いくつかの要因が絡み合って、この「痛み」の感覚が生じることについて以下に説明します。

熱の急速な奪取(低温による組織のストレス)

 金属の時と同様に、氷は非常に低い温度(0℃以下)であり、熱伝導率も比較的高いです。(液体である水に比べれば低いですが、気体や木材よりは高いです)。そのため、指が氷に触れると、体温が氷に非常に速い速度で奪われます。

 この急激な熱の喪失は、細胞レベルでストレスを引き起こします。つまり、細胞内の水分が凍結し始める可能性や、血管が収縮して血流が極端に悪くなることによる酸欠状態が生じる可能性があります。このような組織へのダメージが痛みとして感じられる要因の一つです。

痛覚と冷覚のセンサーの反応

 私たちの皮膚には、温度を感知する「温点」と「冷点」という感覚受容器があります。しかし、特定の温度範囲を超えると、これらの温度感覚だけでなく、痛みを伝える「痛点」も刺激されます。

 一般的に、皮膚の温度が15℃以下になると「冷たい」という感覚だけでなく「痛み」を感じ始めると言われています。そして、氷は0℃以下なので、明らかにこの閾値を超えています。

特定のタンパク質(TRPA1)の活性化と活性酸素

 最近の研究(京都大学の研究など)では、冷たさによる痛みには「TRPA1」というタンパク質が関与していることが明らかになっています。また、このTRPA1は、ワサビやマスタードなどの刺激物による痛みも感知するセンサーとして知られています。

 低温にさらされると、細胞内で活性酸素が少量生成されることがあります。それは、普段は無害な量の活性酸素であっても、特定の条件下(例えば、酸素濃度が低下した状態など)では、TRPA1がこの活性酸素に対して非常に敏感になり、冷たさを「痛み」として脳に伝えることが示唆されています。これは、体が低温ストレスを受けていることを知らせる警告システムの一つと考えられています。

凍傷への警戒信号

 私たちの体は、凍傷(低温による組織の損傷)から身を守るために、極端な低温を痛みとして感じ取るようになっています。つまり、指が凍結すると、細胞が破壊され、壊死に至る可能性もあります。この「痛い」という感覚は、「これ以上触っていると危険だ」という身体からの警告であり、手を離すよう促す重要な信号なのです。

 これらの要因が複合的に作用することで、氷に触れると単なる「冷たい」を超えて「痛い」という感覚が生じるのです。

まとめ

 これまでの結果から、常温の金属を触った時の「冷たい」は、体から熱が奪われる速度が速いことによるものでした。そして、自動販売機で購入したペットボトル飲料を触って感じる冷たさ異なる現象でした。さらに、冷たいものを触ることについても、氷のように更に冷たい場合には、冷たいを超え痛いという感覚になることがわかりました。物を触って感じる感覚にも色々あると再認識しました。

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