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声がするだけで安心するのはなぜ?

心理
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 一人暮らしの人では、「電話で家族や恋人の声」を聞くことで安心することがあります。そして、家族と一緒に暮らしている場合でも、「疲れて帰ってきたときに家族の声」を聞いた時に安心することがあります。また、「病室でそっと話しかけてくれる看護師の声」が病気の不安を和らげてくれたり、「行きつけの店のの店員さんの声」を聞いただけで落ち着いたりします。このような経験はどなたでも多少なりともあるような気がします。ここでは、『私たちはなぜ、「声がするだけで」安心できるのか?』についてその理由を説明します。

声が安心感をもたらす理由

 人間は、言葉の意味だけでなく声の音色・抑揚・リズムから多くの情報を受け取ることができます。そして、この声の響きは脳の「安心スイッチ」を押す強い要因になります

声は“音”であり“人”でもある

 声は単なる音波ですが、単なる情報伝達以上の力があります。そして、私たちの脳は人の存在を感じ取ります。特に、疲れたときや不安な時に信頼できる人の声を聞いた状況です。そして、それだけで、少し世界が優しく感じられるかもしれません。また、声を聞くことで、「自分はひとりではない」という感覚が生まれます。そして、それは、感情を和らげ、心を守る毛布のような役割を果たします。

赤ちゃん時代からの原始的な安心

 生まれたばかりの赤ちゃんは視力が未発達です。しかし、母親の声は胎内から聞き慣れているため識別できます。そして、私たちは生まれてすぐ、母親や養育者の声を繰り返し聞きながら育ちます。この「知っている声」=安全」という刷り込みは、大人になっても残ります。だからこそ、信頼している人の声を聞くだけで、心が落ち着くのです。

声の周波数と脳のリラックス

 人は低めで安定した声に安心感を覚えやすいと言われます。これは低周波成分が副交感神経を優位にする影響によるものです。この影響は、心拍や呼吸を落ち着ける効果があります。そして、落ち着いた声は、呼吸や鼓動を自然にゆっくりにします。これは副交感神経を優位にし、リラックス状態へ導く働きがあります。逆に、早口で高い声は交感神経を刺激し、緊張や興奮を引き起こします。

社会的つながりのサイン

 人間は進化の過程で、「仲間の声が聞こえる状況=安全」と学習してきました。そして、静まり返った環境よりも、誰かの落ち着いた声が聞こえる環境のほうが、危険が少ないと脳が判断するのです。

安心する声と脳機能

情動の記憶とのリンク

 赤ちゃんのころ、母親や養育者の声を何度も聞くことで、「声=安全」という学習が行われます。そして、この記憶は脳の扁桃体(感情処理の中枢)に保存されます。そして、大人になってもその声を聞くと無意識に安心します。特に、「家族や恋人の声」や「信頼できる人の声」は、この「安心記憶」と結びついている可能性が高いです。

オキシトシンの分泌

 優しい声や落ち着いた声を聞くと、脳内で「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。オキシトシンは“愛情ホルモン”“絆ホルモン”とも呼ばれます。そして、「不安の軽減」や「信頼感の向上」や「ストレスホルモン(コルチゾール)の減少」に効果があります。

自律神経への影響

 声のトーンや話すスピードは、自律神経に影響します。例えば、「ゆったりした低めの声 :→ 副交感神経が優位になりリラックス」や「早口で高い声 :→ 交感神経が優位になり緊張」などがあります。そして、安心感を与える声は、呼吸のリズムや心拍を落ち着ける作用があります。

安心する声の特徴 話し方

声を安心に変える話し方

 安心感を与える声は、生まれつきだけでなく話し方の工夫でも作れます。

  • スピードをゆっくりにする
    早口は緊張を伝えやすく、ゆったりしたテンポは落ち着きを伝えます。
  • 語尾をやわらかく下げる
    「〜です!」より「〜ですね」のように柔らかい終わり方が安心感を増します。
  • 間を大切にする
    無言の時間を怖がらず、呼吸を感じさせる間を入れると穏やかな印象に。
  • 相手のペースに合わせる
    相手がゆっくり話すなら合わせ、速い場合も少し落ち着かせるよう調整します。

安心する声の特徴

 心理音響学やコミュニケーション研究で挙げられる、安心を与える声の共通点は以下の通りです。

  • 低めで安定している音程(急に高くならない)
  • 音量が一定(大きすぎず、小さすぎず)
  • ハスキーすぎない柔らかな音質
  • 共鳴が豊かで耳に痛くない響き
  • 温かみを感じさせる抑揚

 こうした特徴は、声そのものの魅力というよりも、「落ち着いた呼吸」「相手を思いやる気持ち」から自然ににじみ出ることが多いです。

まとめ

 声の言葉の意味だけでなく、声の音色・抑揚・リズムから多くの情報を得ています。そして、「声がするだけで安心できるのか?」について、4つの要因で声が安心感をもたらす理由について説明しました。そして、これらの要因を裏付ける脳機能について説明しました。

 声は、距離を超えて人をつなぐ“心の触覚”のようなものです。誰かの声が聞こえるだけで安心するのは、私たちが生き物として持つ深い本能と、これまでの経験が重なって生まれる感覚です。もし誰かを安心させたいなら、声を磨くことも有効な手段になるかもしれません。そして、それは声質だけでなく、相手を大切に思う気持ちから始まると思われます。

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