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なぜ人の気分は周りに広がるのか? 感情伝染

心理
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 「誰かのあくびにつられて自分もあくびしてしまう。」また、「職場でリーダーが落ち着いていると、みんなも冷静になりやすい。」そして、「誰かの笑い声につられて自分も笑ってしまう。」このような経験を私はしたような気がします。そして、話にも聞いたことがあります。このように、人の感情が周囲に自然と広がる現象を 「感情伝染(emotional contagion)」 と呼びます。

 このブログでは、この感情伝染について、メカニズム、伝わりやすさ、感情伝染の種類、良い面、悪い面、対策について調べました。以下にこれらの内容について説明します。

感情伝染とは?

 感情伝染とは、個人またはグループが、他者の感情状態や態度を、無意識的かつ自動的に誘発するプロセスです。平たく言えば、他者の感情を「伝染(うつ)」されて、自分も同じ感情になってしまう現象を指します。そして、本人にそのつもりがなくても、表情や声のトーン、雰囲気によって周囲に広がっていきます。しかし、これは単なる共感(相手の気持ちを理解すること)に留まりません。そして、実際に身体的・生理学的にも同じ感情を経験するという特徴があります。

なぜ進化的に起きるのか(機能的な理由)

 感情伝染は単なる“誤作動”ではなく、集団にとって有益な機能があります。つまり、信号としての役割があり、集団の生存・協力を助けます。

  • 迅速な危険共有:誰かの恐怖が群全体に広がれば逃避が早くなる。
  • 協調行動の促進:喜びや安心が広がればグループの結束が強まる。
  • 非言語コミュニケーションの補完:言葉が使えない状況でも感情で情報共有できる。

伝わりやすさを左右する要因

広がりやすい要因

  • 親密さ・信頼関係が高い(家族・親友・チーム)
  • 情動の強度が高い(激しい喜び・強い不安)
  • リーダーや高ステータスの人物が発する感情
  • 文化的に感情表現がオープンな集団

抑制されやすい要因

  • 距離がある・匿名の関係(知らない人の感情は伝わりにくい)
  • 個人差(高共感性 vs 低共感性、アレキシサイミア傾向など)
  • 明確な規範で表情抑制が求められる場面(公式行事など)

感情伝染の種類

1. 暗黙的(無意識的)感情伝染

 最も一般的で、意図せずに感情が伝わる現象です。

  • 特徴: 瞬時に、無自覚に起こります。
  • : 誰かのつられ笑い、不安そうな人を見て自分も緊張する、明るい人のそばにいると気分が晴れるなどです。
  • 伝染しやすい感情: 一般にネガティブな感情(不安、怒り)は、ポジティブな感情(喜び、幸福感)よりも伝染力が強い傾向があります。また、エネルギーレベルが高い感情(強い怒りなど)は伝染しやすいです。

2. 明示的(意図的)感情伝染

 目的を持って、意図的に感情を操作・伝達しようとする場合に使われます。

  • 特徴: 特定の結果(行動、購買など)を引き出すために使われます。
  • : サービス業の店員が顧客を安心させるために意図的に笑顔を見せる(感情労働)。また、リーダーがチームの士気を高めるために熱意を表明するなどがあります。

いい面と悪い面

良い影響

  • リーダーの冷静さが場を落ち着かせます。(危機対応で有利)
  • ポジティブな感情が創造性や協力を促します。
  • 笑顔が広がり、場の雰囲気が明るくなります。
  • チームの結束力士気の向上、幸福感の共有、学習や協力の促進します。

悪い影響

  • 不満や不安がすぐに職場や家庭に広がります。
  • ネガティブ感情(不満・怒り・不安)が短期間で職場や家庭に広がります。そして、士気低下や対立を招きます。
  • SNSでネガティブな感情が連鎖し、集団パニックになることもあります。
  • 職場のネガティブなムードによる生産性低下、集団パニック、不安やストレスの増幅します。

 感情伝染は、集団の行動や意思決定に大きな影響を与えます。そのため、リーダーシップやメンタルヘルス、組織運営において重要な概念とされています。

日常での対策

個人レベルでは

  • 「あ、これは周りの感情につられてる」と気づくだけで落ち着きやすくなります。
  • 深呼吸や短い休憩で自分の気分をリセットします。
  • ポジティブな習慣を持ちます。たとえば、感謝を思い出す、笑顔を意識するなどです。
  • 感情に気づきを持ちます。そのために、自分の気分をラベリングします。そして、 気づきは伝染を断つ一歩になります。
  • 呼吸や短いブレイクで生理的な反応を落ち着けます。例えば、深呼吸・5分の散歩などです。
  • ネガティブな場から物理的に距離を取ります。これは、短時間でも効果あります。
  • ポジティブな習慣で基礎気分を上げておきます。例えば、感謝ノートなどです。
  • SNSやメッセージで感情的になったら、投稿前に一旦待ちます。そして、冷静になります。

リーダーや親の立場では

  • 落ち着いた声のトーンや表情を意識します。
  • ネガティブな話は「問題+解決策」をセットで共有します。
  • チームで「小さな成功体験」を分かち合います。そして、ポジティブを増幅させます。
  • 自分の感情表現を意識的にコントロールします。例えば、落ち着いた口調・姿勢などです。
  • ネガティブな情報を共有する際は「事実+対処策」をセットで提示して不安を減らします。
  • 小さなポジティブな出来事をチームで共有する時間を作ります。そして、これはポジティブ・デブリーフィングと言われます。
  • 集団内で不満が噴出しているときは「場のルール」を再確認します。そして、冷却期間をとります。

まとめ

 ここまで感情伝染について、メカニズム、伝わりやすさ、感情伝染の種類、良い面、悪い面、対策について説明しました。まず、感情伝染は、個人またはグループが、他者の感情状態や態度を、無意識的かつ自動的に誘発するものでした。そして、具体的には、笑顔や安心は仲間に広がり、緊張や不安もまた伝わるというものでした。このように感情は目に見えないけれど、確実に周りに伝染するというものでした。

 そして、感情伝染は「模倣・共感・評価」のメカニズムを通じて自動的に起きるものでした。そして、親密さ・感情の強度・リーダーの影響力などが拡大条件となります。まず、個人レベルの対策は、「気づき」と「セルフレギュレーション」になります。リーダーとしてのメリットとしては、意図的にポジティブを広げることができることがあります。

 「どうせ伝わるなら、良い感情を伝えたい」そんな意識を少し持つだけで、家庭や職場、友人との関係はより心地よいものになるはずです。

 

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