「右利きの人は論理的、左利きの人は芸術的」といったことを聞いたことがあります。また、左利きの人が右利きに矯正するといった話を聞いたことがあります。そして、脳と体の神経は、脳幹で交差しています。そのため、右脳は体の左側、左脳は体の右側を主にコントロールしています。それゆえ、右利きの人は左脳が、左利きの人は右脳がより発達していると言われることがあります。今回、現状で利き手と利き脳についてどのような見解なのかについて調べてました。以下にそれらの内容を説明します。
前提条件
脳の左右半球の機能分担
まず、人間の脳は、右半球と左半球に分かれています。そして、それぞれが異なる機能を担当しているという、脳の機能局在の考え方が前提にあります。
- 右脳: 空間認識、直感、創造性、音楽、芸術、顔の認識など、感覚的・直感的な思考を司る。
- 左脳: 言語、論理、数学、分析、文章の読み書きなど、論理的・分析的な思考を司る。
脳と体のつながり
脳と体の神経は脳幹で交差しています。そのため、左脳は体の右側を、右脳は体の左側をコントロールしています。このような背景から、右利きの人は左脳が、左利きの人は右脳がより活発に働いていると考えられてきました。
利き手と言語中枢
一般的に、右利きの人の約95%は、言語中枢が左脳にあるとされています。一方、左利きの人の場合は、約70%が左脳に言語中枢を持ちます。加えて、残りの約30%は右脳や両方の脳に言語中枢を持つとされています。そして、このことから「左利きの人は右脳優位」という説が広まりました。そして、創造性が高い、芸術的であるといったイメージが定着しました。
「利き脳」と「利き手」の関係
多くの人の脳は、左右の機能を分担しながらも、両方の脳をバランス良く使っています。そして、利き手は、単にどちらの手をより器用に使っているかを示すものです。そして、特定の脳機能が優れていることを意味するものではないと言われています。
現在の見解
- 「利き手」はあくまで体の使い方: 利き手は、単にどちらの手をより器用に使えるかを示すものです。しかし、それが直ちにその人の性格や思考パターン、能力を決定づけるわけではありません。
- 「両脳の協調」が重要: 実際には、多くの人の脳は左右の機能を分担しています。しかしながら、両方の脳を密に連携させて活動しています。例えば、絵を描く場合でも、右脳の創造性に加えて、左脳の論理的な思考も使って構図を決めたり、色を計画したりします。
- 左利きの脳の適応力: 左利きは、圧倒的に右利きが多い社会では、右利き用の道具を使うことがあります。そして、右利きに合わせた行動を求められることが多々あります。このため、左右の脳をバランス良く使う必要に迫られます。そして、結果的に両方の脳が発達しやすくなるという説もあります。
結論
ここまで「利き手と利き脳」について、脳の左右半球の機能分担、脳と体のつながり、利き手と言語中枢といった前提条件と現在の見解について説明しました。そして、機能分担や体のつながりから「左利きの人は創造性が高い」等と言われてきました。
これに関して、脳機能の局在と体のつながりによりこのように考えられてきたと想定されます。そして、左利きの方が右利き用道具を使う適応能力の高さも後押しをしたと思われます。つまり、行動をする際の脳の活動状態などを詳細な調査ができなかった時代の結果と考えられます。しかし、現在は脳の活動状態を詳細に調べることができるようになりました。技術の進歩もあり、両脳の強調が重要ということがわかってきたと考えられます。また、個人差のばらつきが多く、利き手、利き脳のデータの優位性を示す結果が出なかった可能性があります。
つまり、「利き手と利き脳の関係」は、単純な因果関係ではなく、脳の複雑な機能と、その人が置かれた環境への適応が絡み合っていると考えるのが妥当であると考えられます。


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