先日、テレビで開いてない段ボールが積み重なっている人の部屋が映されていました。また、その番組は、部屋を整理するという企画でした。そして、その段ボールは、ネットショッピングで買った商品が届いた箱でした。しかし、それらの段ボールを買ったものなのに開けないまま部屋に置いて積まれていました。そして、別の番組でも購入して届いた段ボールを開けていない人を何人か見ていたことを思い出しました。また、正直最初は「え、なんで?」と思いました。しかし、よく考えると、それは他人事でもないかもしれません。例えば、「数日くらい放置したことある」という人、実は結構いるんじゃないだろうかとも思いました。今回は、「段ボール開封しない問題」の心理をテーマにしました。
このブログでは、ネットショッピングをして届いた段ボールを開けない心理について、その考えられる要因と脳の働きについて調べましたので以下に説明します。
段ボールを開けない心理
買った瞬間がいちばん楽しい問題
まず、買い物の満足感のピークは「購入した瞬間」です。つまり、人間の脳は、欲しいものを手に入れると決めた瞬間にドーパミンを放出します。つまり、「ポチった瞬間」がすでにクライマックスになります。そして、届いた段ボールを開けるのはいわば「エンドロール」みたいなもののようです。クライマックスを超えたあとのエンドロールを、急いで見る必要はありません。そして、そう考えると、開封を後回しにする気持ちも少しは理解できます。
シュレーディンガーの段ボール
物理学者シュレーディンガーが提唱した「シュレーディンガーの猫」という有名な思考実験があります。これは、箱を開けるまで、中の猫は「生きている状態」と「死んでいる状態」が同時に存在する、というものです。
そして、これの考え方は、段ボールにも当てはまるかもしれません。つまり、開けるまでの段ボールの中身は、「期待通りの最高の商品」と「なんか思ってたのと違う商品」が同時に存在しています。しかし、開けてしまえばどちらかに確定してしまいます。ただし、開けなければ、ずっと「最高の商品かもしれない」という幸福な可能性が保たれます。意識的にそう考えているわけではありません。しかし、無意識のうちにそういう心理が働いているのかもしれません。
「ちゃんと開けたい」という完璧主義
「あとでゆっくり開けよう」と思って気づいたら1週間経っていた。このような、という経験がある人が少なからずいそうです。そして、これは先延ばし+ちょっとした完璧主義の組み合わせで起きやすい行動です。つまり、忙しいときにバタバタ開けるより、時間があるときにちゃんと開けたいという気持ちが働きます。その気持ちが逆に開封のハードルを上げてしまいます。そして、ちゃんとした状況を待っているうちに、段ボールの存在が日常の風景になっていきます。そして、これは買い物に限らず、積読本や録画したままのドラマにも起きます。この行動は普遍的な現象でもあります。
開けると「終わってしまう」という喪失感
段ボールを開けないことで「楽しみをとっておく」という心理もあります。例えば、旅行のお土産をなかなか食べられない人、誕生日プレゼントをすぐ使えない人です。そして、その感覚に近いものです。つまり、開封した瞬間に「楽しみにしていた時間」が終わってしまう気がして、意識的か無意識かに関わらず先延ばしてしまいます。「もったいない」精神の一種とも言えるかもしれません。
買い物における脳の活動の流れ
ここでは、テーマを買い物の満足感のピークは「購入した瞬間」という行動に焦点を絞ります。そして、段ボールを開けない人と開ける人の物を買う時から手元に届くまでの脳の活動を以下に比較します。
段ボールを開けない人
段ボールを開けない人の購入行動は次にのようになります。「欲しい→検討→購入→到着→開封」です。この一連の流れで、脳の活動について順番に説明します。
1. 欲しいと思った瞬間〜購入直前
脳の「側坐核(そくざかく)」という部位が活性化し、ドーパミンが放出され始めます。また、側坐核は、「報酬への期待」に反応する部位です。そして、実際に手に入れるよりも「手に入れるかもしれない」という期待の段階が最もドーパミンが多く出ることがわかっています。
2. 購入した瞬間
クリックして「やった、手に入れた!」という達成感でドーパミンがピークに達します。ただし、ここで脳は「報酬を得た」と判断し、興奮は急速に落ち着き始めます。
3. 到着〜開封
購入した瞬間にすでに脳的には「完結済み」の出来事になっています。そのため、開封時のドーパミン反応は購入時より明らかに低くなります。また、これを「快楽適応(hedonic adaptation)」と呼びます。
なお、快楽適応(快楽順応)とは、昇進や結婚、大金を得るなどの大きなプラスの出来事があっても、時間の経過とともに人間はそれに慣れます。そして、幸福度が元の安定した水準に戻ってしまう心理傾向のことを示します。そして、喜びが持続しないため、さらに上の欲求を求め続けてしまう現象を指します。
段ボールを開ける人
1. 欲しいと思った瞬間〜購入直前
側坐核が活性化してドーパミンが出るのは同じです。ただし「本当に欲しい」場合、感情脳(扁桃体)も同時に強く反応しています。つまり、「これが欲しい!」という感情の強度が高い状態です。
2. 購入した瞬間
ドーパミンがピークに達するのも同じです。しかし、ここが大きな違いで、「欲求の強さ」が購入後も持続しているため、脳はまだ完結したと判断しません。つまり、「手に入れた、でもまだ使っていない」という未完了の感覚が残ります。
3. 到着〜開封の瞬間
ここが最大の違いになります。また、本当に欲しかったものの場合、開封行為そのものが「第二のピーク」になります。そして、実際に目で見て、手で触れることで、脳の報酬回路が再び強く活性化します。加えて、視覚・触覚などの感覚情報が加わるため、購入時とは別種の満足感が生まれます。
4. 開封後
「やっぱり良い!」という確認ができます。すると、前頭前皮質(理性の座)が「この判断は正しかった」と評価します。そして、満足感がさらに安定します。
比較表
| タイミング他 | 開けない人 | すぐ開ける人 |
| 購入時 | ドーパミンがピーク&完結 | ドーパミンがピークだが未完結 |
| 到着時 | 脳的にはもう済んだ話 | 期待感が継続中 |
| 開封時 | 反応が薄い | 第二のピークが来る |
| 原動力 | 「買う行為」が目的 | 「使う・手にする」が目的 |
ドーパミンのピーク
特に面白いのは、人間の脳は「実際に得ること」より「得られるかもしれないこと」に強く反応するという点です。そして、開封しなくてもクリックすることだけで満足感を得られることになります。また、ガチャやくじが止められない理由もこれと同じ仕組みです。そして、ネットショッピングの「カートに入れる→ポチる」というプロセス自体が脳への刺激として設計されたようなものと捉えることもできます。
まとめ
ここまでこのブログでは、ネットショッピングをして届いた段ボールを開けない人の心理、脳の働きについて説明しました。まず、心理としては、買った瞬間がいちばん楽しい問題、シュレーディンガーの段ボール、「ちゃんと開けたい」という完璧主義、開けると「終わってしまう」という喪失感を説明しました。次に、購入時の脳の働きについて、段ボールを開けない人と開ける人の比較をしました。
はじめは、「届いた荷物を開けない人」の行動をちょっと不思議に思えました。しかし、こうして考えられる要因を並べてみるとどれも「あり得る〜」と思える心理ばかりでした。
- 買った瞬間が満足のピーク
- 開けなければ期待が続く
- ちゃんと開けたいから後回し
- 楽しみをとっておきたい
しかし、特に「買った瞬間が満足のピーク」という要因の確率が最も高いような気がしました。それは、ネットショッピングがされる前からあったものだからです。つまり、対面で物を購入したときも買った時が満足のピークのような気がしました。そして、食べ物ではないものの場合、買ったものをそのまま放置ということもありそうな気がしました。
しかし、段ボールが積み上がったまま何ヶ月も経過するような場合は、別の要因だと考えられます。つまり、「長時間開けていない段ボールが眠っているのは別問題」という状況については、今後のブログで取り上げます。


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