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占いが「当たる!」と感じる秘密:バーナム効果とは?

心理
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 「あなたの性格は、外見的には自制心があるように見えます。しかし、内心ではくよくよしたり、不安になる傾向があります。」こんな診断結果を耳にして、「まさに自分のことだ!」と感じたことはありませんか? 実は、これは誰にでも当てはまる曖昧で一般的な記述です。そして、自分だけに特別に当てはまると錯覚してしまう心理現象です。この心理現象の名前は、バーナム効果(Barnum effect)です。

 このブログでは、バーナム効果の定義、なぜ当たるかのメカニズム、確証バイアス、自己関連性バイアスと感情処理などについて調べました。以下これらの内容について説明します。

バーナム効果の定義

 バーナム効果は、曖昧な情報自分に特有のものだと受け取ってしまう認知バイアスの一種です。なお、認知バイアスについては、以前のブログ「認知バイアスってなに?」で取り上げています。

  • 定義:誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格記述があります。この記述を、「自分だけに適合する」と誤って認識してしまう心理現象です。
  • 由来:心理学者ポール・ミールが、興行師P.T.バーナムの「誰にでもアピールできるものを用意すれば、必ず成功する」という言葉(あるいは、それに近い言葉)から名付けられたと言われています。
  • 別名:フォアラー効果(Forer effect)とも呼ばれます。1948年にこの現象を実験で証明した心理学者バートラム・フォアの名前に由来します。

なぜ「当たる」と感じてしまうのか? メカニズム

 バーナム効果が強く働く背景には、主に以下の2つの心理メカニズムが関係しています。

確証バイアス(Confirmation Bias)

 人は、自分にとって都合の良い情報や、自分が信じたいことを無意識に優先して集めます。そして、都合の悪い情報は無視する傾向があります。

  • 例: 占いの内容で、当たっていると感じた数少ない記述は記憶に残ります。しかし、外れている記述はすぐに忘れてしまいます。そして、この働きによって、「この占いはすごく当たっている!」と強く信じ込むようになります。

肯定的な内容への期待と受け入れ

 一般的に、バーナム効果で提示される内容はポジティブなものが含まれます。そして、建設的な悩みに関する記述についても多く含まれます。例えば、あなたはまだ活かしきれていない才能を持っているなどです。

  • 人は、自分のことを良く評価されたいという欲求があります。そのため、肯定的な内容を伝えられると、より強く「これは自分に関する正確な情報だ」と受け入れやすくなります。

その他

  • 権威性:診断者や占い師が信頼できると感じると、内容も信じやすくなります。
  • 個別性の錯覚:「あなただけに当てはまる」と思わせる演出があると、信じやすくなります。
  • ポジティブな内容:前向きな記述ほど受け入れられやすいようです。

具体的な例

 バーナム効果は、日常生活のさまざまな場面で活用されています。

  • フォアの実験(1948年):学生に性格診断を行いました。しかし、実際には全員に同じ曖昧な文章を渡しました。その結果、平均4.26点(5点満点)で「当たっている」と評価されました。
  • 典型的な文例
    • 「あなたは他人から好かれたいと思っている」
    • 「時に自信がなくなることがある」
    • 「外向的な面もあるが、内向的な時もある」
  • 占い・性格診断    血液型占い、星占い、心理テストなど:
    • 「社交的だけど、一人でいる時間も大切」といった両面的な表現があります。このような表現は、多くの人に「自分のことだ」と思わせます。
  • セールス・広告 :   
    • 「最近、仕事や人間関係で悩んでいませんか?」という言葉があります。これは、誰もが抱えやすい漠然とした悩みです。そして、このような問いかけで、「自分の状況を理解してくれている商品だ」と関心を持たせます。
  • 上司や指導者:
    • 部下に対して「あなたは周りをよく見て行動していますね」などの言葉をかけます。誰にでも当てはまる褒め言葉を使うことで、部下は「自分を理解してくれている」と感じます。そして、信頼感や好意を抱きやすくなります。

 バーナム効果と脳機能の関係

 バーナム効果が起こる際の脳機能の関与は、以下の2つの主要な側面に分けられます。

確証バイアスと情報処理

 バーナム効果の背景にある主要なメカニズムは、確証バイアス(Confirmation Bias)です。これは、脳が自分の信念や期待に合う情報ばかりを選択的に収集します。逆に、それらに反する情報を無視・軽視します。このような傾向を確証バイアスと言います。なお、確証バイアスについては、以前のブログ「「確証バイアス 」― 自分の考えに都合のいい情報ばかり集める心理」で取り上げています。

  • 脳の関与: 情報の選択と評価に関わる前頭前野前部帯状皮質などが関与すると考えられています。これらの領域が、曖昧な記述の中から「自分に当てはまる」と感じる部分だけをフィルタリングして際立たせ、その情報を支持する方向に思考を固定します。
  • 認知の省エネ: 脳は常に効率を求めており、曖昧な情報を深く分析するよりも、既存の自己概念に当てはめる方が認知的なエネルギーが少なくて済みます。これにより、「これは自分のことだ」と結論づけることで、思考が停止しやすくなります。

自己関連性バイアスと感情処理

 人は、自分自身に関する情報に対して特別な関心を示す「自己関連性バイアス」を持っています。バーナム効果で提示される情報は、このバイアスを刺激します。

  • 自己概念の維持: 提示された曖昧な記述を自分に当てはめます。そして、「自分は一貫性のある、理解された存在だ」という自己概念を肯定的に維持しようとします。特に、バーナム効果で使われる記述は「あなたはまだ活かしきれていない才能がある」といったポジティブな内容が多いことが、自己肯定感を高めます。
  • 脳の部位: 内側前頭前野は、自己に関する情報処理に強く関わることが知られています。そして、この領域の活動が、与えられた記述を「自分ごと」として受け入れるプロセスに関与していると考えられます。
  • 信頼と情動: 記述が権威のある人(例:占い師、専門家)から与えられた場合、記述への信頼性が増します。そして、それに伴う安心感や好意といった情動(感情)が生まれます。これには扁桃体などの感情処理に関わる部位が間接的に作用します。その結果、論理的な判断よりも感情的な受容が優先されることがあります。

まとめ

 ここまでバーナム効果の定義、なぜ当たるかのメカニズム、確証バイアス、自己関連性バイアスと感情処理などについて説明しました。そして、バーナム効果は、曖昧な情報自分に特有のものだと受け取ってしまう認知バイアスの一種でした。また、占い・性格診断、血液型占い、星占い、心理テスト、セールス・広告、上司や指導者など多様な応用がされていました。そして、バーナム効果は、脳が自己の肯定的なイメージを維持し、認知的な一貫性を求めるために、曖昧な情報を自分にとって都合よく解釈することが基となっていました。そして、このような複雑な認知メカニズムの結果として生じるものでした。

 確かにこのような一般的で抽象的なことを言われたら信じてしまうと思います。ただ、このようなバーナム効果を逆手に取られていたことがあったらぞっとします。この時点でバーナム効果を知ったので今後の対応に生かせると思います。ただし、覚えていたらという限定条件が付きますが。

 

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