「右に出る者がいない」という言葉は、よく聞き、そして、時々使うこともあります。その人より優れた人はいないという意味はわかっているつもりです。しかし、「右に出る者がいない」ってどういうこと、なぜ「右」など考えたこともないことに気づきました。そこで、なぜこのように表現するに至ったについて調べました。
「右に出る者がいない」の意味
まず、この言葉の意味はシンプルです。「その分野で、その人よりも優れた人はいない」 ということを意味します。つまり、「右に出る者がいない」と言われた人は、その道の第一人者であり、他の追随を許さないほどのずば抜けた実力を持っているということです。たとえば、以下のように使います。
- 「彼は野球では右に出る者がいない」
- 「この料理の味付けに関して、彼女の右に出る者はいない」
由来
日本古来の「左上右下(さじょううげ)」
「左上右下」は、日本の伝統的な礼法における「左上位」の考え方です。つまり、正面から見て左側を上位、右側を下位とする考え方です。この考え方は、中国から伝わった「天子が北辰に座して南面する」という思想に由来し、太陽が左側(東)から昇り、右側(西)に沈むことから、昇る東が沈む西よりも尊いとされたことに基づいています。そして、天皇陛下が即位される際に、南を向いて左側(東側)に太陽が昇ることから、左側が縁起が良い、尊いとされてきたことに由来します。
「古来の席次」
この言葉の由来は、日本の古代から中世にかけての席次(せきじ:座席の順位)にあります。かつて日本では、身分の高い人や位の高い人ほど、「右側」の席に着くという習慣がありました。つまり、上座は「部屋の奥」や「入り口から一番遠い場所」とされており、これは、昔の日本の家屋では、奥座敷や床の間のある場所が最も尊い場所とされていたためです。つぎに、具体的な例を示します。
- 宮中での儀式
- 天皇から見て右側が上座とされ、身分の高い公家が座りました。
- 武家社会
- 主君の右側が上座となり、最も信頼され、実力のある家臣が座ることが多かったとされています。
このように、「右=上座=優れている」 という考え方が根底にあります。
異なる2つの考え方
この二つの考え方が組み合わさった結果、左側が上位であるという考え方を尊重しつつ、部屋の奥という上座の場所から見て、左側に当たる右側が上座、という考え方が定着したとされています。つまり、
- 左側が上位という考え方がベースにある
- 上座は部屋の奥
この2つの要素が合わさって、部屋の奥から見て左側である右側が、より上位の席と見なされるようになったのです。これはあくまで一説であり、時代や地域によって考え方が異なる場合もあります。しかし、一般的にはこの考え方が広く知られています。
このため、「右に出る者がいない」という言葉は、「自分の右側に座るほどの身分の高い人や、自分より優れている人はいない」 という意味から、「自分こそが最高位であり、最高の腕前を持つ者である」 という意味で使われるようになったのです。
まとめ
日本にある昔からの考え方の「左上右下」と「席次」の2つの考え方が関係していました。まず、「左上右下」という日本の伝統的な礼法における「左上位」の考え方がありました。また、「古来の席次」という日本の古代から中世にかけての「席次」という考え方もありました。席次についてはなんとなく知っていたような気がしました。このような異なる考え方が存在していました。
そこで、この2つの考え方が組合せることがおこなわれました。その結果、左側が上位であるという考え方を尊重しつつ、部屋の奥という上座の場所から見て、左側に当たる右側が上座という考え方に至りました。そして、この「右が上座」という文化から、現在の言葉として「右に出る者がいない」が定着してきました。そして、その意味が、「自分の右側に座るほどの身分の高い人や、自分より優れている人はいない」 というなりました。歴史的経緯を知ることで、なるほど、「このような経緯で現在に至ったのか!」という理解ができ、腑に落ちたような気がしました。
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