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深部体温?

科学
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 最近テレビなどで熱中症の話になった時、「深部体温」という言葉を多く耳にするようになりました。これまでは、漫然とぼんやりとしていた「深部体温」について調べることにしました。まず、体温から説明します。

体温について

 私たちの体温には、大きく分けて深部体温と皮膚温の2種類があります。また、コロナ禍に非接触型の体温計が使われていたのが皮膚温の計測のような気がします。しかし、ここには外部環境の影響を受けやすいとされています。これは、コロナのように熱が非常に高くなる場合や計測場所が顔というのでクリアされているので使われていたと思われます。

  • 深部体温(核心温): 身体の内側の温度のことです。脳や内臓など、体の内部の温度。生命活動を維持するために、比較的安定して保たれています。
  • 皮膚温(表面温度): 身体の表面(皮膚や手足など)の温度。外部環境の影響を受けやすく、変動しやすいのが特徴です。

深部体温について

 深部体温は、皮膚温よりも0.5℃から1℃ほど高いのが一般的です。これは、脳や内臓が常に活発に代謝を行い、熱を産生しているからのようです。

深部体温の重要性

 深部体温は、私たちの健康状態や身体のリズムに深く関わっています。

  • 生命維持: 脳や内臓が正常に機能するために、深部体温は一定の範囲に保たれる必要があります。
  • 睡眠覚醒リズム: 深部体温は1日の中で変動します。まず、起床から上がり約11時間後にピークを迎えます。そして、その後徐々に下降します。また、深部体温が下降するタイミングで手足から熱が放散されます。これにより、眠気を感じやすくなると言われています。
  • 免疫力: 深部体温が低いと、代謝や免疫細胞の働きが低下します。そして、風邪や感染症にかかりやすくなる可能性があると言われています。

測定方法

 深部体温は体の内部の温度です。そのため、一般的に使われる体温計では正確に測るのが難しいとされています。そして、より正確な深部体温が必要な場合には、直腸、膀胱、鼓膜、血液などで測定します。

 普段の生活で簡単に深部体温を推測する方法には次のような方法があります。まず、起床直後に舌下で体温を測る方法です。そして、手足の冷え、疲れやすさなどの体調の変化から推測する方法もあります。

深部体温が上がる要因

生理的な要因 (正常な体の反応)

  • 運動・身体活動: 筋肉が活発に動くと熱が発生します。その結果、深部体温が上昇します。激しい運動では一時的に40℃近くまで上がることもあります。
  • 食事: 食事をすると消化・吸収・代謝にエネルギーが使われます。そのため、その過程で熱が産生されるため、深部体温が上昇します(食事誘発性熱産生)。特にタンパク質を多く含む食品は、より多くのエネルギーを消費するため、体温上昇につながりやすいです。
  • 入浴: 湯船に浸かると体の外側から熱が伝わり、深部体温が上昇します。40℃のお風呂に15分ほど浸かると、深部体温が0.5℃程度上昇すると言われています。
  • 排卵・月経周期(女性): 女性は排卵後にプロゲステロンというホルモンの影響で深部体温が上昇します。そして、高温期が続きます。これは基礎体温として測定され、月経周期の指標となります。
  • 概日リズム(サーカディアンリズム): 深部体温は1日の中で変動するリズムを持っています。一般的に、活動時間帯(日中)に高くなります。そして、睡眠時間帯(夜間)に低くなります。起床直前には深部体温が再び上昇し始めます。
  • 精神的興奮・ストレス: 強いストレスや興奮状態は、交感神経を活性化させます。そして、一時的に体温を上昇させることがあります。
  • 環境温度: 外気温が高い場合、体は熱を放散しにくくなります。そして、深部体温が上がりやすくなります。特に高温多湿な環境では、汗の蒸発による放熱が妨げられます。その結果、深部体温が過度に上昇する熱中症のリスクが高まります。

病的な要因 (体の異常や疾患)

  • 感染症: 細菌やウイルスなどの感染により、体内で炎症が起こります。そして、体温調節中枢が体温の「セットポイント」を通常より高く設定し、発熱が起こります。これは、免疫システムが病原体と戦うための防御反応です。
  • 炎症性疾患: 関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患や、その他の炎症性の病気でも発熱が見られることがあります。
  • 甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。そして、その結果、全身の代謝が促進され、熱産生が増加して深部体温が高くなります。
  • 特定の薬剤: 一部の薬物(アンフェタミン類、コカイン、抗精神病薬、麻酔薬など)は、体温調節に影響を与え、深部体温を上昇させることがあります。
  • 脳の異常: 体温調節を司る視床下部に腫瘍や損傷により体温調節機能が正常に働かなくなります。その結果、深部体温が異常に上昇することがあります。
  • 悪性腫瘍: 特定のがんでは、腫瘍が産生する物質や炎症反応によって発熱することがあります。
  • 熱中症: 高温環境下での運動や活動により、体温調節機能が破綻します。そして、その結果体内に熱がこもって深部体温が異常に上昇する状態です。重症化すると命に関わります。

まとめ

 深部体温が上昇する要因には、正常な生理的な現象の場合と病的な場合がありました。そして、正常な場合は、一時的な体温上昇が多い事がわかりました。また、病的な深部体温上昇には、熱中症の他にも色々あることがわかりました。

 これらの要因は単独で作用することもあれば、複数組み合わさって深部体温の上昇を引き起こすこともあります。特に、病的な要因による深部体温の上昇は、体の異常を示すサインであるため、適切な対処が必要になることがあります。そのため医療機関への受診も慎重に考えないといけないと思われます。

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