PR

名前が覚えられないのは記憶力のせい?:脳の検索ネットワークの構造を解説

脳科学
スポンサーリンク

 以前会社などで立ち話程度で紹介される人がいます。しかし、直接名刺交換などをしたわけでないので名前は聞くだけです。また、その人の顔はなぜか覚えています。そして、話した内容も覚えています。しかし、名前だけがどうしても出てきません。そこで、以前のブログで「顔はわかるのに…」人の名前だけ忘れる理由と絶対に覚えるコツを取り上げました。ただし、その際は「忘れる」と考えていたのですが、覚えることができないとは考えていませんでした。そして、この“名前だけ抜け落ちる現象”は、多くの人が経験しているようです。

 しかし、これは、記憶力が悪いからでも、注意力が低いからでもないようです。それは、脳科学では、名前という情報は脳が最も扱いにくい種類の記憶のようです。つまり、名前は意味的な手がかりがほとんどなく、脳の記憶ネットワークの中で“孤立したラベル”になりやすいようです。さらに、顔認識と名前想起は別の処理ルートで行われています。そのため、「顔はわかるのに名前だけ出ない」という現象が起こるようです。

 そこで、このブログでは、なぜ脳は名前を覚えるのが苦手なのかに注目することにしました。そして、名前が覚えられない要因、名前を憶えやすくする方法、対処法について調べましたので以下に説明します。

名前が覚えられない要因

名前だけ覚えられないのは「脳の構造的な弱点」

  • 名前は意味を持たない“任意の記号”であることがあります。
  • 「田中さん」というは、その人の外見・性格・職業と結びつきません。
  • 脳は“つながり”を手がかりに記憶を検索するため、孤立、独立した情報は検索しづらいものです。
  • 名前は記憶ネットワークの中で最も手がかりが少ない情報です。
      → だから「名前だけ」抜け落ちます。
      → 舌先現象(tip-of-the-tongue)が起こりやすいものです。

顔は覚えているのに名前が出ない理由:処理ルートが違う

  • 顔認識は紡錘状回(fusiform gyrus)などの顔処理ネットワークが担当です。
  • 顔は「ひとまとまりの視覚情報」として処理されます。
  • 名前の想起は言語・記憶ネットワークが担当しています。
  • この2つは別ルートのため、顔はわかるのに名前が出ないという現象が起こります。
  • 「誰かはわかるのに名前だけ出ない」は正常な脳の働きということになります。

名前が覚えにくいことを示す有名な実験

  • ベイカーさん(名前)」と「パン屋(職業)」の記憶比較実験があります。そして、これは、ベイカー・ベイカーパラドクスと呼ばれています。
  • 同じ“ベイカー”でも、職業として覚えた方が圧倒的に思い出しやすいというものです。
  • 職業はイメージと結びつくが、名前は結びつかないものです。
      → 名前は脳にとって“意味の足場がない情報”であるということになります。

「顔の覚えやすさ」と名前の記憶に関係がある

  • 顔には“記憶の粘着性(stickiness)”があることがわかっています。なお、記憶の粘着性とは、一度脳にインプットされた情報や感情、エピソードが、どの程度忘れにくく、脳や心に強く長く残り続けるか(定着度・しがみつき)を表す言葉です。
  • 覚えやすい顔は、セットの名前まで強く記憶に残すようにします。
  • 逆に、覚えにくい顔は名前の定着も弱くなります。
  • これは個人の記憶力ではなく、顔そのものの特性に左右されるものです。
     →   名前を忘れても「自分のせいではない」部分が大きいということになります。

名前を覚えやすくする方法

① 名前を聞いた瞬間に“符号化”する
  • 心の中で一度繰り返します。
  • 会話の冒頭で自然に名前を呼ぶようにします。
  • 名刺・画面の文字と音を一致させます。
② 名前を“関連付け”する
  • 顔・役割・会話内容・場面と結びつけます。
  • 「営業企画の山口さん」「オンボーディングの話をしていた山口さん」などです。
  • 身体的特徴だけに頼らない(変化に弱い)ようにします。
③ “想起の手がかり”を増やす
  • 次に会う日
  • 話したテーマ
  • 相手の課題
  • 一緒にいた人
     →  名前を“文脈の中の情報”に変える
④ “反復”は見返すより思い出す
  • 名刺を見返すより、数分後に自分の頭から取り出す方が記憶が強化されます。
  • 記憶は「検索の練習」で強くなります。

名前が出てこないときの対処法

  • 焦るほど出てこなくなります。つまり、似た情報が邪魔をします。冷静になるようにします。
  • 一度意識をそらすと自然に思い出すことがあります。
  • 正直に聞き直す方が関係性を損なわないことがあります。
  • 久しぶりなら「お久しぶりです」で名乗りを待つのも自然です。

まとめ

 ここまで、名前が覚えられない要因、名前を憶えやすくする方法、対処法について説明しました。まず、名前が覚えられない要因について、脳の構造的な弱点処理ルートが違う有名な実験「顔の覚えやすさ」と名前の記憶を説明しました。つぎに、名前を憶えやすくする方法について、4つの方法を説明しました。最後に、対処法について、4つの方法を示しました。

 まず、名前だけ覚えられないのは、脳が名前という情報を苦手とする構造的な理由があるからでした。そして、そこには、以下のような理由がありました。

  • 名前は意味的な手がかりが少ない。
  • 顔認識と名前想起は別ルートである。
  • 顔の“覚えやすさ”にも左右される。
  • 記憶力の問題ではなく、脳の仕組みの問題である。

 そのため、名前を覚えられなくても、忘れてしまっても自分を責める必要はありません。そして、大切なのは、名前を“孤立したラベル”のまま扱わず、文脈と結びつけることです。つまり、脳は「つながり」で記憶を検索します。そのため、つながりを増やせば、名前は自然と覚えやすくなるかもしれません。そして、私の場合はもともと記憶力に自信がないため忘れても、思い出せなくても「そんなもんだ」と捉えています。そのため、思い出せない時は周りに聞いたり、さりげなく聞いたりしてギブアップしています。

 

関係ブログ

コメント