夜空の星を繋いで「星座」を作ったりしています。また、たまたま引いたおみくじの内容に自分の現状を重ね合わせたりもしています。あるいは、予期せぬ不幸に見舞われたとき、「なぜ自分だけが?」と理由を探して眠れなくなったりもします。つまり、星は単にその位置で光っているだけです。しかし、私たちはそれをつなげて星座として意味を持たせています。私たちは、ただの偶然やカオスな出来事の中に、どうしても「意味」という糸を通そうとしてしまいます。
なぜ、私たちはこれほどまでに「意味」がない状態に耐えられないのでしょうか?私たちは、何の意味もない偶然の出来事に対しても、無意識に意味や理由を付けてしまいます。しかし、意味を求めることは単なる感性の問題ではないようです。つまり、人間が過酷な世界を生き抜くために手に入れた、非常に強力な「脳の生存戦略」のようです。なお、以前のブログで関連したブログを書いています。雲が動物に見えるのはなぜ? その名は「パレイドリア現象」、 なぜコンセントが顔に見える?シミュラクラ現象の正体と脳に隠された生存本能です。
このブログでは、「脳のパターン認識」の仕組みについて注目することにしました。そして、私たちが「意味」を熱望する正体に迫ることにしました。また、このメカニズムを知ることで、自分の「悩み」や「こだわり」を少し楽に向き合えるようになることを目指します。以下に意味を求めてしまう理由や要因、そしてその際の脳の動き、対策について説明します。
「意味」を求めてしまう要因
脳は「カオス」が嫌い
まず、脳にとって「正体不明のもの」や「予測できないこと」は、命を脅かすストレスになります。
- パターン認識の暴走: 脳は進化の過程で、無関係なドットを結びつけて「虎の顔」を見出しています。そして、このような高度なパターン認識能力を発達させました。つまり、これが雲が顔に見えたり(パレイドリア現象)、偶然に意味を感じたりする原因になります。
- 不確実性の回避: 理由がわからない状態は、脳にとって「制御不能」を意味します。たとえネガティブな理由でも、「理由がある」状態にするほうが、脳は安心を感じます。
「苦悩」を「試練」に変える力
精神的に過酷な状況で、人を支えるのは「意味」になることがあります。
- ヴィクトール・フランクルの視点: 強制収容所を生き延びたフランクルの「ロゴセラピー」というものがあります。そして、これは「生きる意味」を見出すことで心の病を癒す心理療法です。つまり、「人生に何を期待するか」ではなく「人生から何を期待されているか」と問い直します。そして、人は絶望の中でも生きる力を得ます。
- 一貫性の感覚(SOC): 自分の人生や周囲の出来事が「理解可能で、対処可能で、意味がある」と感じられる度合いがあります。(首尾一貫感覚)そして、これが高いほど、ストレスに強く、幸福度が高いことが知られています。
私たちは「自分の人生の編集者」である
人は断片的な出来事を、一つの「物語(ナラティブ)」として統合します。そして、自分という存在を定義します。
- 後付けの意味付け: 過去の失敗を「あの挫折があったから、今の強さがある」と再解釈する行為です。そして、これは、過去という「事実」を変えられなくても、その「意味」を書き換えることで未来を変えるクリエイティブな作業です。
- ナラティブ・アイデンティティ: 意味を求めることは、自分は何者で、どこへ向かっているのかという「物語の整合性」を保つ行為です。
意味を求めている時の脳の動き
脳は「空白」を埋めずにはいられない
前項目でも触れましたが、脳はエネルギー効率を重視するため、正体不明の「カオス」を嫌います。
- パターン認識の自動化: 視覚や記憶を司る「側頭葉」や「頭頂葉」は、入ってきた情報に共通点を見つます。そして、過去の経験と照らし合わせて「これは〇〇だ」と定義しようとします。
- アポフェニア(意味の過剰生成): 脳は「見落として死ぬ」よりも「見間違えて安心する」方を選びます。そのため、何の関係もない出来事の間に無理やり因果関係を見出します。例えば、雨が降ったのと自分の不運を繋げて「今日は天に見放されている」と解釈します。そして、この行動は、脳が空白を埋めて安心を得ようとする動きになります。
「納得」した瞬間に報酬が出る
バラバラだった事象に「意味」が見つかります。そして、一つのストーリーとして繋がった瞬間、脳は快楽を感じます。
- アハ体験と報酬系: 意味が見つかった瞬間、脳の「側状核(報酬系)」からドーパミンが放出されます。そして、「なるほど、そういうことか!」という納得感は、脳にとってパズルが解けた時と同じ報酬になります。
- 前頭前野による統制: 脳の司令塔である「前頭前野」は、感情的な混乱を「物語」でパッケージ化しようとします。そのため、未解決の悩み(未完了のタスク)は脳に負荷をかけます。しかし、意味付け(完了)することでその負荷を下げようとします。
「物語」を作ることでストレスを制御する
特に辛い出来事に対して意味を求めるのは、脳の「自己防衛」に近い動きになります。
- 扁桃体の鎮静化: 理由のわからない恐怖や不安は、脳の感情中枢である「扁桃体」を過剰に興奮させます。そこで、ここに「これは自分を成長させるための試練だ」という「意味(論理)」を与えます。これにより、前頭前野が扁桃体の暴走を抑え込み、精神的な安定を取り戻します。
- 左脳のインタープリター(解釈装置): 分離脳の研究で有名なガザニガ博士の研究があります。それは、左脳には「自分の行動や周囲の出来事に対して、即座に辻褄の合う説明を作る機能(インタープリター)」があることを提唱しました。つまり、私たちは、事実がどうあれ、常に「自分を納得させるための物語」を自動生成し続けていることになります。
脳の動きの整理
| 状態 | 脳の動き | 心理的影響 |
| カオス状態 | 扁桃体が不安を感じ、情報が散乱 | 不安、ストレス、落ち着かない |
| 探索中 | 側頭葉が過去の記憶を検索 | 「なぜ?」と自問自答する、占いを見る |
| 意味の発見 | 報酬系(ドーパミン)が活性化 | 「アハ体験」、スッキリする、安心感 |
| 物語化 | 前頭前野が因果関係を固定 | 自己肯定感の向上、過去の受容 |
対策:「意味の呪縛」から自由になるために
意味を求めすぎるあまり、苦しくなってしまう人への処方箋になります。
- 「意味がない」という自由: すべての出来事に高尚な理由があるわけではありません。そして、時には「ただ、そうなっただけ」と受け入れることが重要です。そして、これを「ネガティブ・ケイパビリティ(答えのない事態に耐える力)」と言います。ネガティブ・ケイパビリティとは、答えの出ない事態や不確実な状況に直面した際、性急に結論や解決策を求めません。そして、その「わからない」状態や不安に耐え、とどまる能力のことです。「モヤモヤする状態を受け入れる力」や「心の余白」ということになります。
- 意味は「見つける」ものではなく「作る」もの: どこかに正解としての意味が落ちているのではありません。つまり、自分の解釈一つで世界は変えられるということになります。
まとめ
ここまで、意味を求めてしまうメカニズムや要因、その際の脳の動き、対策について説明しました。まず、その要因メカニズムについて、脳は「カオス」が嫌い、「苦悩」を「試練」に変える力、私たちは「自分の人生の編集者」であるを説明しました。次に、その際の脳の動きについて、脳は「空白」を埋めずにはいられない、「納得」した瞬間に報酬が出る、「物語」を作ることでストレスを制御するを説明しました。最後に、対策について説明しました。
まず、意味を求めるのは、私たちが過酷な世界を生き抜くために脳が授けてくれた「最強のサバイバルツール」でした。また、「星占いを信じてしまう」、「おみくじの結果で一喜一憂する」という現象がありました。これも脳が、カオスを嫌がることが要因でした。しかし、星占いやおみくじの結果を良い方に受け取ることは問題ないと思います。しかし、マイナスの方向に受け取って考えすぎることはもったいないようにも思えます。そして、対策にある、振り回されるのではなく、自分を勇気づけるために「意味」を使いこなすことが必要な気がしました。あくまでも自分の中での問題なので自分の都合の良いように受け取ったらいいような気がしました。

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