仕事でミスをしたとき、多くの人は強い後悔を感じます。また、仕事だけでなくいろいろな場面でありうることです。そして、「次こそ気をつけよう」と思うのに、気づけばまた同じミスをしてしまいます。しかし、この現象は決して“意志が弱いから”ではないようです。そして、心理学的には、後悔と行動修正の間にはギャップがあることが知られています。つまり、後悔は感情としては強烈ですが、行動を変えるための仕組みが整っていないと、学習につながらないのです。なお、以前のブログ「“後悔”が長引く人とすぐ切り替えられる人の違い」で後悔に関係した記事を書いています。興味がある場合は参照してみて下さい。
このブログでは、人はなぜ同じ失敗を繰り返すのかについて、後悔の正体の脳がミスをどう処理しているか、人が同じ失敗を繰り返す理由、仕事のミスに潜む4つの心理トラップ、後悔を“行動変化”につなげるための実践ステップについて調べたので以下に説明します。
後悔の正体:脳がミスをどう処理しているか
後悔は、脳の「エラー検出システム(ACC:前帯状皮質)」が反応した結果生まれます。しかし、後悔の感情が強すぎると、脳は次のような“防衛反応”を起こします。

自己防衛のための合理化
- 「忙しかったから仕方ない」
- 「誰でもやるミスだよ」
そして、このような反応をすることで一時的には心が軽くなります。しかし、原因分析が止まり、学習が起きなくなります。
感情の過負荷による回避
また、後悔が強すぎると、脳は「その話題に触れたくない」と判断してしまいます。そして、ミスの振り返りを避けるようになります。
記憶の断片化
また、強いストレスは記憶の整理を妨げ、「何が原因だったのか」が曖昧なまま残ります。そして、その結果このように、後悔は“感じただけでは学習につながらない”ことになります。
人が同じ失敗を繰り返す理由
認知バイアス
楽観バイアス・・・
自分にとって都合の良い未来を過度に期待してしまいます。そして、悪い出来事が起こる可能性を実際よりも低く見積もってしまう心理的傾向です。自分は他者より不幸な目に遭いにくいと無意識に思い込みます。そして、「自分は大丈夫」「なんとかなる」と楽観的に判断します。その結果、リスク管理がおろそかになったり、予防策が不足したりする原因となることがあります。なお、以前のブログ「認知バイアスってなに?」で認知バイアスについて説明しています。興味がある場合は参照してください。
確証バイアス・・・
自分の先入観や仮説を支持する情報ばかりを集めてしまいます。そして、反対する情報を無視・軽視してしまう心理傾向です。また、人は誰でも持っている思い込みを強化したいので、自分にとって都合の良い情報ばかりに注目します。そして、無意識のうちにそれを裏付けるような情報を選んで信じ込もうとします。例えば、血液型性格診断や特定の健康法などです。なお、以前のブログ「「確証バイアス 」― 自分の考えに都合のいい情報ばかり集める心理」で認知バイアスについて説明しています。興味がある場合は参照してください。
現状維持バイアス・・・
人は変化に伴うリスクや不確実性を恐れ、たとえ現状が最適でなくても、現在の状態や慣れ親しんだ選択肢を維持しようとする心理傾向のことです。損失を避けたいという心理や、未知のものへの不安から、客観的に見て合理的でない選択(例:待遇が悪くても転職しない)をしてしまうことなどを指し、ビジネスや個人の成長を妨げる要因にもなります。なお、以前のブログ「また同じ車両の電車に乗っている…:現状維持バイアス」で認知バイアスについて説明しています。興味がある場合は参照してください。
その他の要因
- 感情の処理が不十分
・後悔を直視できず回避行動に走ります。
・自己嫌悪が強すぎて学習が止まります。 - 習慣化のメカニズム
・脳が「いつもの行動」を優先します。
・環境が変わらないと行動も変わりません。 - 自己効力感の低さ
「どうせ変われない」という思い込みが行動修正を妨げます。
仕事のミスに潜む4つの心理トラップ
楽観バイアス:未来を過大評価するクセ
人は「次は大丈夫」と思い込みやすい生き物です。そして、これは脳が不安を軽減するための自然な働きですが、根拠のない自信がミスの再発を招きます。
- 例:「次は確認しなくても大丈夫だろう」→ そしてまた宛先ミス。
現状維持バイアス:変化を嫌う脳
脳は“いつものやり方”を好みます。また、新しい手順を覚えるにはエネルギーが必要なので、無意識に「今のままでいい」と判断しがちになります。
- 例:チェックリストを作ればミスが減ると分かっていても、「面倒だし、今まで通りでいいか」となる。
感情回避:後悔を直視できない
後悔を感じると、自己否定につながります。そして、そのため、脳は「原因分析」を避けようとします。
- 例:ミスの振り返りをしようとすると気分が沈む
→ 気分が悪いので振り返りをやめる
→ 学習が起きない
自己効力感の低下:「どうせ自分はまたミスする」
過去のミスが積み重なると、「自分はミスしやすい人間だ」という自己イメージが形成されます。そして、この思い込みが行動を制限し、改善のための行動を取れなくなる悪循環が生まれます。
後悔を“行動変化”につなげるための実践ステップ
ステップ1:ミスを「事実」と「解釈」に分ける
後悔が強いと、事実と感情が混ざります。そのため、この2つを切り離すだけで、冷静に原因を分析できるようになります。
- 例:
事実:資料の数字を1桁間違えた。
解釈:自分は仕事ができない。
ステップ2:ミスの“再発ポイント”を特定する
ミスはランダムではなく、必ず“パターン”があります。つまり、これを言語化すると、「どの状況で注意が必要か」が明確になります。
- 例:
・急いでいるとき
・朝イチの作業
・マルチタスク中
・周囲が騒がしいとき
・睡眠不足の日
ステップ3:行動ではなく“環境”を変える
心理学では、行動を変えるより環境を変える方が効果的になります。そして、環境が変われば、意志に頼らず行動が変わります。
- 例:
・メール送信前に「宛先確認ポップアップ」を必ず表示
・デスクを毎朝3分だけ整える
・作業時間をブロックして通知を切る
・チェックリストを画面の横に固定
ステップ4:小さな成功体験を積む
自己効力感は「できた」という経験でしか回復しません。そのため、小さな成功が積み重なると、「自分は変われる」という感覚が戻ってきます。
- 例:
・1週間だけ“確認ルール”を徹底する
・毎日1つだけ改善行動を実行する
・ミスがなかった日は自分を褒める
内容の整理とまとめ
内容の整理
ここまでこのブログでは、人はなぜ同じ失敗を繰り返すのかについて、後悔の正体である脳がミスをどう処理しているか、人が同じ失敗を繰り返す理由、仕事のミスに潜む4つの心理トラップ、後悔を“行動変化”につなげるための実践ステップについて説明しました。
まず、後悔の正体である脳がミスをどう処理しているかについて、自己防衛のための合理化、感情の過負荷による回避、記憶の断片化を説明しました。次に、人が同じ失敗を繰り返す理由について、認知バイアス、その他の要因について説明しました。そして、仕事のミスに潜む4つの心理トラップについて、楽観バイアス:未来を過大評価するクセ、現状維持バイアス:変化を嫌う脳、感情回避:後悔を直視できない、自己効力感の低下:「どうせ自分はまたミスする」を説明しました。最後に、後悔を“行動変化”につなげるための実践ステップについて、4つのステップを説明しました。
まとめ
言われてみれば、後悔だけでは良くならず、同じミスを繰り返しているような気がしました。ただし、無意識に必要な事柄については行動に移していたような気がします。また、後悔はつらい感情ですが、正しく扱えば、行動を変えるための強力なエネルギーになるような気がします。そして、仕事のミスを繰り返すのは、自分が弱いからではなく、“脳の仕組み”と“環境”でそうなっているということのようです。
つまり、後悔を前向きにとらえて成長するための材料にする必要があると思われます。そのために、失敗の原因を「事実」と「解釈」に分けて整理、小さな成功体験を積んで自己効力感を回復する、行動を変えるための“環境デザイン”を取り入れる、感情を言語化して処理する習慣をつけるの4つの実践ステップが有効なような気がしました。


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