高いビルの展望台の床が透明なところに立つと、足がすくんで動けなくなる。このような高所恐怖症の症状が出ることがあります。また、草むらでごそごそという音を聞くだけで、蛇がいるのではと考え心臓がバクバクすることがあります。そして、そんな自分を、「私は臆病だな」なんて思ってしまうことがあります。しかし、これは自分が弱いからではなく、脳に「超一流の生存マニュアル」が組み込まれている証拠のようです。

また、現代社会での恐怖は「交通事故」や「スマートフォンの使いすぎの影響」かもしれません。しかし、私たちは充電器のコードを見ても叫びません。そして、スピードを出して走る車の列を見ても、ヘビを見たときのような「鳥肌」は立ちません。なぜ、「現代の危険」よりも「太古の危険」をこれほどまでに恐れるかという疑問が浮かびます。そして、その鍵を握るのが、進化心理学の驚くべき理論「準備学習」のようです。今回は、この点について調べてみました。
このブログでは、高所恐怖症やヘビ嫌いがどのようなものかについて、その要因の準備学習について、関係している実験について調べましたので以下に説明します。
準備学習(Prepared Learning)とは?
準備学習(Prepared Learning)とは、心理学者のマーティン・セリグマンが提唱した概念です。それは、人間などは、生存を脅かす特定の対象に対して、恐怖心を抱きます。そして、恐怖心を抱くようにあらかじめ『予約(準備)』されているという理論です。
昔々、高い所を怖がらず、ヘビに無頓着だった先祖は生き残れませんでした。そして、「怖がり」だった先祖だけが生き残りました。つまり、その慎重さが遺伝子として現代の私たちに引き継がれているということです。
脳にインストールされた「OS」
私たちの学習能力は、生まれた時でも真っ白なキャンバスではありません。つまり、長い進化の過程で、私たちの先祖は以下のような過酷な環境を生き抜いて学習の蓄積です。そして、これを「生物学的な準備性」と呼びます。つまり、ヘビを怖がるのは、個人の性格ではなく、何万年もの歴史が作り上げた「先祖からの贈り物」ということになります。
- 高い場所 = 落ちたら死ぬ
- ヘビやクモ = 毒があるかもしれない
- 暗闇 = 捕食者が潜んでいる
また、これらの脅威を「一度経験してから学ぶ」のでは、命がいくつあっても足りません。そのため、脳にはあらかじめ「ヘビや高い場所に関連する恐怖は、一瞬で記憶せよ!」というプログラム(OS)がインストールされているようなイメージです。
アカゲザルの実験
この準備学習理論を裏付ける、非常に有名な実験があります。それは、心理学者スーザン・ミネカが行った、アカゲザルによる実験です。アカゲザルのヘビと花に対する恐怖感について調べた実験です。
ヘビvs花:恐怖の「入りやすさ」の違い
実験室で生まれ育ち、一度も野生のヘビを見たことがない「世間知らずなサル」を対象にします。次のような実験を行いました。
最初の状態
実験室で生まれ育ちの世間知らずのサルは、最初はヘビを怖がりません。
対象「ヘビ」の恐怖のビデオを見せる
野生のサルが「ヘビ」を見て激しく怖がっている映像を、実験室のサルに見せます。すると、それまでヘビを怖がっていなかったサルも、一瞬でヘビを極端に怖がるようになりました。
対象「花」のビデオに変えて見せる
今度は、映像を編集し、野生のサルが「花」を見て激しく怖がっているように見せかけました。そして、それを実験室のサルに見せました。
結果
サルは、ヘビに対して、一瞬でヘビを極端に怖がるようになりました。しかし、サルは、「花」に対しては何度そのビデオを見ても、「花」を怖がるようになることはありませんでした。
この実験が証明したこと
この結果は、脳が「何でも等しく怖がるようになる」わけではないことを示しています。つまり、脳の中には、「ヘビ=危険」という情報はすぐに受け入れる窓口があります。しかし、「花=危険」という情報を受け入れる窓口は存在しないということになります。そして、これが「準備学習」の正体になります。つまり、特定の対象に対してだけ、恐怖という感情のスイッチが非常に入りやすくなっていることになります。
まとめ
ここまでこのブログでは、高所恐怖症やヘビ嫌いがどのようなものかについて、その要因の準備学習について、関係している実験について説明しました。まず、準備学習については、どのようなものか、脳にインストールされたOSという比喩で説明しました。次に、アカゲザルの実験を用いて準備学習の説明をしました。
アカゲザルの実験から、べビと花でヘビに恐怖を感じることが示されました。そして、長年の進化の蓄積ということは理解することができました。そして、まだ、経験が蓄積されていない?スマホの影響などについては恐怖を感じないということでした。しかし、交通事故に関係する自動車の走行については、遠くで見ている分には恐怖を感じないのですが、すぐ近くを通過するときは恐怖を感じます。これは進化に蓄積されつつあるとも考えることができるような気がします。
また、高所については、進化の過程では高いビルが存在していたとは考えずらいです。しかし、山の上や崖などはあるのでこの影響が広がったと想像することができます。恐怖の本能は、自分を守るためにあると考えられるので範囲を広げたとも考えられるような気がします。また、高所恐怖症などでわかりやすいのですが、高所恐怖症の人とそうでない人の違いは、進化の過程による差も少しぐらい関係しているのではと考えてしまいました。


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