スマホを手に取るたびに、無意識に通知を確認している人をよく見ます。そして、SNSの通知や「いいね」を確認しているようです。また、「いいねの赤い数字」を見た瞬間にちょっとした高揚感があるようです。そして、この高揚感は、脳内ではパチンコで大当たりした時と同じ物質ドーパミンがでています。なぜ「いいね」はこれほどまでに中毒性があるのか?今回は、SNSが脳の「報酬系」をハックする仕組みについて調べることにしました。なお、以前のブログ「スマホが鳴っていないのに通知で震えた気がする:ファントム・バイブレーション症候群」でスマホに関連した話題を扱っています。興味がある場合は参照してください。
このブログでは、「いいね」の影響として、「いいね」をもとめる「現代のデジタル依存」、「いいね」とドーパミン報酬系の正体、「SNSはポケットの中のスロットマシン」と言われる理由について以下に説明しています。
「いいね」をもとめる「現代のデジタル依存」
「注意経済(アテンション・エコノミー)」の犠牲
現代のデジタル依存の背景には、ビジネスモデルの構造があります。
- 「注目」がお金になる: SNS企業にとっての利益は、ユーザーが画面を見ている時間の長さに比例します。そのため、心理学者や行動科学者を雇い、アプリを開かせるかを科学的に設計してることもあります。つまり、どうすれば「もっと長く」「もっと頻繁に」アプリを開かせるための設計です。
- 設計された依存: 私たちがSNSをチェックしたくなるのは偶然ではありません。つまり、通知のタイミング、無限スクロール、色の鮮やかさなど設計されています。そして、脳が抵抗できないように「設計」されています。
承認欲求の「24時間営業化」
人間は社会的な動物であり、周囲に認められたいという「承認欲求」を本能的に持っています。
- 数値化される自己価値: 昔は「誰かに褒められる」のは対面だけでした。しかし、今は「いいね」やフォロワー数として24時間いつでも数値で可視化されます。
- 終わりのない競争: 脳はこの数値を「社会的な報酬」と受け取ります。そして、数値が減ったり、他人より少なかったりします。すると、脳は「集団から見捨てられる」という本能的な恐怖(不安)を感じます。そして、さらに執着するようになります。
脳の「回路」が書き換わる
依存が進むと、脳の構造そのものに影響が出始めます。
- 前頭前野の機能低下: 理性や自制心を司る「前頭前野」の働きが弱まります。そして、衝動を抑えられなくなります。つまり、「いけないと思っているのに、気づくとスマホを開いている」のは、脳のブレーキが壊れかけているサインです。
- スキミング脳(情報のつまみ食い): 短い動画や断片的な情報ばかりを浴びます。そして、そのために、長い文章を読んだり、深く思考したりする持久力が失われていきます。
「デジタル依存」の具体例
- ファントム・ポケット・バイブレーション: 通知がないのに震えた気がすします。詳しくは、以前のブログ「スマホが鳴っていないのに通知で震えた気がする:ファントム・バイブレーション症候群」を参照してください。
- SNS疲れとFOMO(見捨てられ不安): 「自分だけが楽しいイベントを知らないのではないか」という不安に陥ります。そして、常にタイムラインを追いかけてしまいます。
- スマホ・スリープ・レス: 寝る直前までブルーライトとドーパミンを浴びます。そのために、脳が覚醒して不眠に陥ります。
「いいね」とドーパミン報酬系の正体
脳の報酬系
- 脳の報酬系とは: 欲求が満たされたときに快感をもたらす神経系のことです。本来は「空腹で食事にありつく」など、生存に必要な行動を促すための仕組みです。
- ドーパミンの役割: ドーパミンは快感そのものではなく、快感を得られそうな予感(期待)に対して分泌されます。つまり、スマホの通知を見た瞬間のワクワクこそが、脳がドーパミンに支配されている証拠です。
なぜSNSは「やめられない」のか?(可変比率強化)
心理学と脳科学を組み合わせた中毒のメカニズムについて説明します。
- 「予測不能」が依存を生む: いつ、誰から「いいね」が来るか分かりません。そして、この不確実性が、脳をより一層興奮させます。これは、スロットマシンと同じ可変比率強化という仕組みです。
- 承認欲求のデジタル化: 人間に備わった「集団に認められたい」という原始的な欲求があります。そして、SNSによって24時間ノンストップで刺激され続けていることになります。
ドーパミン中毒から抜け出す「脳の整え方」
明日からできるドーパミン中毒から抜け出すデジタルデトックス方法を示します。
- 「通知」をオフにして主導権を取り戻す: 脳を「待機状態」から解放してあげます。そして、そのために、物理的に刺激を断ちます。
- 「いいね」ではなく「自分軸」で測る: 他者評価ではなく、自分の成長や没頭に目を向けるようにします。
- 白黒画面設定の裏技: スマホの画面をグレースケールにします。そして、それだけで、脳への視覚的な報酬刺激が劇的に減ります。そして、依存度が下がります。
「SNSはポケットの中のスロットマシン」と言われる理由
心理学や脳科学の視点から見ると、SNSとスロットマシンは「脳を夢中にさせる設計図」がほぼ同一です。
「いつ当たるかわからない」不確実性(可変比率強化)
スロットマシンが最も中毒性を発揮するのは、毎回当たる時ではありません。それは、「いつ当たるか予測できない」時です。これを心理学で「可変比率強化」と呼びます。この内容については、前項で説明しました。
- スロット: レバーを引くたびに「次こそは当たるかも」という期待でドーパミンが出ます。
- SNS: 画面をスクロールするたびに「新しい『いいね』や面白い投稿があるかも」という期待で脳が刺激されます。
「プル・トゥ・リフレッシュ」の動作
スマホの画面を指で下に引っ張って更新する動作は、スロットマシンの「レバーを引く動作」を意図的に模倣して設計されたとも言われています。
- 一瞬の「間」があり、その後に新しい情報(当たり)が表示されるまでの数秒間に、脳内のドーパミン分泌はピークに達します。
「音」と「光」による演出
- スロット: 派手なランプとジャラジャラという音で脳を興奮させます。
- SNS: 赤い通知バッジ(色)、ポップな通知音、アニメーションがあります。そして、これらはすべて「報酬(いいね)」を強調します。そして、視覚・聴覚から報酬系を刺激し続けるための演出になります。
2つの比較
| 共通要素 | スロットマシンの場合 | SNS(Instagram/X(旧Twitter)など)の場合 |
| トリガー | レバーを引く | 画面を下に引っ張って更新します |
| 期待感 | 「次は当たる(777)かも!」 | 「次は『いいね』が来ているかも!」 |
| 報酬 | ジャラジャラと出るコイン | 赤い通知バッジやコメント |
| 中毒の正体 | 報酬を得る直前のドーパミン | 承認を得る直前のドーパミン |
まとめと内容の整理
内容の整理
ここまでこのブログでは、「いいね」の影響として、「いいね」をもとめる「現代のデジタル依存」、「いいね」とドーパミン報酬系の正体、「SNSはポケットの中のスロットマシン」と言われる理由について以下に説明しています。
まず、「いいね」をもとめる「現代のデジタル依存」について、「注意経済(アテンション・エコノミー)」の犠牲、承認欲求の「24時間営業化」、脳の「回路」が書き換わる、「デジタル依存」の具体例などを説明しました。次に、「いいね」とドーパミン報酬系の正体について、脳の報酬系、なぜSNSは「やめられない」のか?、ドーパミン中毒から抜け出す「脳の整え方」を説明しました。最後に、「SNSはポケットの中のスロットマシン」と言われる理由について、「いつ当たるかわからない」不確実性、「プル・トゥ・リフレッシュ」の動作、「音」と「光」による演出、2つの比較を説明しました。
まとめ
「いいね」を求めるのは、自分の意志が弱いのではないという考え方があります。つまり、世界最高峰の技術者たちが、脳が依存するように設計したものだからです。 そして、仕組みを知ったうえでコントロールを取り戻すことが必要な気がします。つまり、仕組みを分かった上でデジタルとの境界線を引き直すことをします。例えば、 1日の中でスマホを見ない時間を1時間だけ作るのようなデジタルデトックスをします。そして、スマホに使われるのではなく、何のために開くのか道具としての目的を意識します。加えて、ドーパミンの代わりに、散歩や深い呼吸、対面の会話など、セロトニンを増やす行動を増やす意識をします。


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