職場の自分から近くない場所で怒って机をたたいた人がいました。そして、ビクッとなって緊張が走るということがありました。そして、驚いただけで自分は怒っていないはずです。しかし、胸の奥がざわつき、呼吸が浅くなり、気持ちが落ち着かなくなってしまいます。また、電車で怒鳴っている人を見たときも同じような感じです。その時、その人とは、距離があるのに、なぜか体が緊張し、心が疲れてしまいます。
怒りは、言葉よりも早く、表情よりも鋭く、まるで“空気を通して”伝染していくようです。なぜ、怒りだけがこんなにも一瞬で広がるのかについて疑問を持ちました。そして、その背景には、私たちの脳に備わった“ミラーニューロン”の働きがあるようです。なお、以前のブログ「なぜ人の気分は周りに広がるのか? 感情伝染」では”気分の伝搬”を取り上げています。興味がある場合は参照してください。
このブログでは、ミラーニューロンとは何か、どういうものか、なぜ“怒り”は特に伝染しやすいのか、怒りの伝染あるある、今日からできる“怒りに巻き込まれない”ための対処法について調べましたので以下に説明します。
ミラーニューロンとは何か
概要
ミラーニューロンは、自分自身が行動時と、他者が同じ行動をするのを観察する時の両方で活動する神経細胞です。また、「ものまね細胞」とも呼ばれています。そして、他者の行動や意図を理解し、共感する能力の基盤と考えられています。他人の行動を見るだけで、まるで自分がしているかのように脳内でシミュレーションをします。そのため、コミュニケーションや学習、自己意識の形成に重要な役割を果たすとされています。以下に示す反応は、ミラーニューロンが働いている証拠となる動作です。
- 相手が笑うと、自分も笑いたくなってしまう。
- 誰かがあくびをすると、つられてしまう。
- 悲しい表情を見ると、胸が痛くなる。
つまり、怒っている人を見ると、脳がその怒りを“模倣”してしまうようになります。
発見と特徴
- 発見: 1990年代初頭、イタリアのパルマ大学の研究者たちがサルの実験中に偶然発見しました。
- 場所: サルの腹側運動前野(F5野)や下頭頂小葉などで見つかっています。そして、これらが「ミラーニューロンシステム(MNS)」を形成しています。
- 機能: 単に動きを模倣するだけはないと考えられています。そして、その行動の「意図」まで理解するのに役立つと考えられています。
主な役割と関連性
- 共感と理解: 他者の感情や意図を「自分のことのように」感じ取ります。そして、共感性を生み出し、他者との関係性を築きます。
- 学習と模倣: 幼児が真似をして学ぶ「ものまね学習」のメカニズムに関与しています。
- 社会性: 他者との適切なやり取りや社会的な行動に不可欠です。
- 発達障害との関連: 自閉スペクトラム症(ASD)では、このミラーニューロンシステムが機能低下している可能性が指摘されています。そして、コミュニケーションの困難さとの関連が研究されています。
“怒りの伝染”の例
- 一人がイライラしていると、職場全体がピリつく。
- 家族の誰かが不機嫌だと、家の空気が重くなる。
- SNSの怒り投稿を見るだけで疲れる。
- 電車で怒鳴っている人を見ると、体が固まる。
- 「怒っている人を見るとしんどい」のは脳の自然反応。
こうした経験は、誰にでも起こりうるものです。
なぜ“怒り”は特に伝染しやすいのか
怒りは、他の感情よりも強く、速く伝わります。そして、その理由を心理学と脳科学の視点から整理します。
① 怒りは“脅威”として脳が最優先で処理する
脳は生存本能で「怒っている人=危険の可能性」として、怒りを最優先でキャッチします。そのため、怒りの表情や声は、喜びよりも早く脳に届きます。
② ミラーニューロンが怒りの表情・声・姿勢をコピーする
怒った顔、強い口調、荒い動作などの怒ったことを表す状態があります。これらを見た瞬間、脳は自動的に模倣します。そして、自分の体も“怒りモード”に入ってしまいます。
③ 交感神経が刺激され、身体が緊張する
怒りは交感神経を刺激します。そして、心拍数が上がり、呼吸が浅くなり、筋肉が固くなるなどの変化をもたらします。そして、相手の怒りを見ただけでも、自分の身体が“戦闘態勢”に入ってしまいます。
④ 集団の中では“同調圧力”が加速する
一人が怒ると、周囲も「自分も警戒しなきゃ」と反応してしまいます。そして、怒りの空気が一気に広がることになります。
今日からできる“怒りに巻き込まれない”ための対処法
怒りの伝染は自然な反応ですが、巻き込まれないための工夫、つまり行動はできます。
① 怒りの表情を“見ない”
視覚情報が最も強く伝染します。一瞬視線を外すだけでも、脳への刺激が減ります。
② 深呼吸して身体を落ち着かせる
怒りの伝染は身体反応から始まります。そのため、呼吸を整えると“巻き込まれ”を防げます。
③ 相手の怒りを“自分の問題”と混同しない
「これは相手の感情。私の責任ではない」と切り分けます。すると、心の負担が軽くなります。
④ 安全な距離を取る
怒りのエネルギーは近距離ほど強い。物理的に距離を置くのは立派な対処法です。
まとめ
内容の整理
ここまでこのブログでは、ミラーニューロンについて、なぜ“怒り”は特に伝染しやすいのか、怒りの伝染あるある、対処法について説明しました。まず、ミラーニューロンについて、概要、発見と特徴、主な役割と関連性、“怒りの伝染”の例を説明しました。つぎに、なぜ“怒り”は特に伝染しやすいのかについて、怒りは“脅威”として脳が最優先で処理する、ミラーニューロンが怒りの表情・声・姿勢をコピーする、交感神経が刺激され、身体が緊張するなどについて説明しました。最後に、今日からできる“怒りに巻き込まれない”ための対処法として、怒りの表情を“見ない”、深呼吸して身体を落ち着かせる、相手の怒りを“自分の問題”と混同しないなどを説明しました。
まとめ
まず、怒りが一瞬で伝染するのは、決して自分が弱いからではないことを知ることが必要でした。つまり、人間の生存本能からきた脳の仕組みによるものから起きていました。そして、大切なのは、怒りの空気にある時、「これは私の怒りではない」と気づくことでした。また、ミラーニューロンは、共感のために存在する大切な仕組みです。怒りだけでなく、優しさや安心もまた、同じように伝染することが重要です。そして、あなたが落ち着いているだけで、周囲の空気がふっと柔らかくなることもあるとも思われます。
私にも電車の中や部屋の中での体験があります。特に、電車の中で大声があがったときとビクッとしてしまいました。それは、いつもは静かな車内で大きな音がしないと思い込んでいるからだと思います。そして、その人に巻き込まれないと判断できた時に、気分を戻す対処法をするべきだと感じました。つまり、自分の身が安全であるということが確認でした場合の対処法になると思います。そして、巻き込まれそうな場合は、逃げ道を確認して危険になった時は逃げた方が良い気がしました。そこは、人間の本能に従うべきだと感じました。そして、ベースには冷静な状況判断が必要な気がしました。


コメント