才能は生まれつきで、努力ではどうにもならないと考える人がいます。そして、努力すれば人はいくらでも成長できると考える人もいます。また、恋愛がうまくいかないとすぐに諦めてしまう人がいます。そして、何度失敗しても粘り強く続ける人もいます。このようなことは、科学的な根拠や専門的な知識に基づかず個人で判断しています。
そして、このようなことを、しろうと理論(Lay Theories)と言います。この理論は、心理学者のキャロル・S・ドゥエックらによって提唱されたものです。私たちが世界や他者、自分に持っている素人(しろうと)としての信念や思い込みのことです。また、明確な証拠はないけれど、日々の行動や意思決定を無意識のうちに支配している個人的な哲学とも言えます。
このブログでは、しろうと理論がどのようなものか、職場で使われているしろうと理論、しろうと理論を乗り越えるための視点などについて調べましたので以下に説明します。
しろうと理論とは?
しろうと理論(Lay Theory) とは、科学的な根拠や専門的知識に基づいたものではありません。つまり、人々が日常の経験や直感から形成する一見もっともらしい説明のことです。また、本人はそれを理論と意識していないことが多く、無意識に信じて行動や判断に影響を与えます。
特徴
- 非科学的・直感的:専門知識ではなく、経験や感覚に基づきます。
- 暗黙的に保持される:自分が理論を持っていることに気づいていません。
- 反証されにくい:自分の理論に合う情報だけを受け入れ、矛盾する事例は無視しがちです。
- 行動や判断に影響する:職場、教育、対人関係などで思い込みとして働きます。
具体例
| 分野 | しろうと理論の内容 | 問題点 |
| 教育 | 「女子は理系が苦手」 | 機会の不平等を生みます。そして、行動的確証と結びつきます。 |
| 対人関係 | 「内向的な人は友達が少ない」 | 実際は深い関係を築く傾向もあります。 |
| 健康 | 「風邪は汗をかけば治る」 | 医学的には逆効果の場合もあります。 |
| 職場 | 「若手はミスが多い」 | チャンスを与えられず、成長が妨げられます。 |
心理学的意義
- 人間の認知のクセを理解する手がかり
なぜ人は非科学的な説明を信じるのかを分析します。そして、これにより偏見や誤解のメカニズムが見えてきます。 - 行動的確証との関係
しろうと理論が他者への期待や態度に影響します。そして、それが現実化することで「やっぱりそうだ」と確信が強まります。 - 教化効果との接点
メディアがしろうと理論を強化することで、社会的に広く共有されます。
職場でよく見られるしろうと理論の例
- 「若手はミスが多い」
しかし、 実際には経験不足だけでなく、サポート体制や環境要因も影響しています。しかし、それなのに、年齢や立場だけで判断されがちです。 - 「ベテランは新しい技術に弱い」
また、新しい技術への対応は、個人差が大きいものです。しかし、年齢による固定観念で学習意欲や能力を過小評価してしまいます。 - 「女性は理系業務が苦手」
そして、メディアや社会的イメージに基づく偏見が職場で再生産されます。そして、これにより機会の不平等につながります。 - 「外向的な人が営業に向いている」
また、実際には聞き上手で誠実な対応が成果につながることも多くあります。しかし、業務が性格タイプで単純に割り振られることがあります。 - 「リーダーは強く指示を出すべき」
しかし、権威的なスタイルが必ずしも効果的ではありません。それにもかかわらず、昔ながらのイメージで評価されることがあります。
心理学的ポイント
- これらのしろうと理論は 行動的確証 と結びつきやすいです。
例:「若手はミスが多い」と思い込みます。 → そして、細かく監視されます。 → その結果、萎縮して本当にミスが増えます。 - また、 教化効果 によって、メディアや社会のイメージが職場の思い込みを強化します。
しろうと理論を乗り越えるための視点
1. 意識化する
- 自分や組織が持っている「暗黙の思い込み」を言語化します。
- 例:「若手はミスが多い」「女性は理系が苦手」といったフレーズを振り返ります。
2. 科学的根拠に触れる
- 心理学や教育学の研究成果を学び、経験則だけでなくデータに基づいた判断を取り入れます。
- 例:性別による能力差はほとんどないことを示す研究を共有します。
3. 多様な事例を観察する
- 先入観に合わない成功事例を積極的に取り上げます。
- 例:理系で活躍する女性社員、ベテランが新技術を習得して成果を出すケースを見ます。
4. フィードバック文化を育てる
- 「思い込みで判断していないか」を互いに指摘できる環境をつくります。
- 例:上司が部下に「この仕事を任せない理由」を説明し、本人の意欲や能力を確認します。
5. 小さな成功体験を積む
- 偏見にさらされやすい人に挑戦の機会を与えます。そして、成功体験を積ませることで「やっぱりできる」という認識を広げます。
まとめ
ここまでしろうと理論がどのようなものか、職場で使われているしろうと理論、しろうと理論を乗り越えるための視点などについて説明しました。まず、しろうと理論について、特徴、具体例、心理学的意義について説明しました。次に、職場でよく見られるしろうと理論の例として、若手はミスが多い、ベテランは新しい技術に弱い、女性は理系業務が苦手、外向的な人が営業に向いている、リーダーは強く指示を出すべきについて説明しました。最後に、しろうと理論を乗り越えるための視点について、意識化する、科学的根拠に触れる、多様な事例を観察する、フィードバック文化を育てる、小さな成功体験を積むを説明しました。
また、職場のしろうと理論は、本人の能力や可能性を狭めてしまう危険があるような気がします。そして、偏見や誤解が現実をつくる仕組みの理解が、組織の成長や公平性に繋がるような気がします。また、しろうと理論を乗り越えるため、次の流れで偏見を少しずつ修正することが効果的なようです。意識化 → 科学的根拠 → 多様な事例 → フィードバック → 成功体験という流れです。ただし、自分ではどうしようもない、そして、組織に染み付いたものについては、組織の一員としては難しく別の課題でもあり様な気がします。


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