昔遊んだゲームやおもちゃなどに久しぶりに触れるとあれ?こんなものだったっけ?と感じます。また、昔住んでいた町などに行ってみるとあれ?こんな感じだったっけ?と感じます。これが「思い出補正」と言われるものです。そして、これには誰もが持つ「あの頃は良かった」という感情が要因にあるらしいです。また、なぜ過去の記憶を実際よりも美しく、都合良く変えるのかという疑問が浮かびます。また、記憶は、単なる録画された映像ではない。そして、思い出すたびに編集・上書きされる「再構成の産物」でることが関係しています。また、そこには「心の安定」を保つための巧妙な仕組みが働いているようです。
このブログでは、まず、記憶について記憶がどのようなものかについて、そして、思い出が美化されるメカニズム、思い出補正がもたらす影響と付き合い方について調べましたので、以下に説明します。
記憶は「保存」ではなく「再構成」される
記憶を変えてしまうことを「思い出補正」呼んでいます。そして、この思い出補正の根本にあるのが、記憶のメカニズムです。
- 記憶はレゴブロック: 記憶は脳の特定の場所に静的に保存されているのではありません。つまり、記憶は断片的な情報(感情、視覚、音、意味など)がバラバラに保管されています。
- 想起(思い出すこと)のたびに再構築: 過去を思い出す際、脳(特に海馬など)はこれらの断片情報を集めています。そして、現在の状況や感情に合わせて毎回組み直して再現しています。
- 情報のラベリング(意味付け)による歪み: 単純な図形を覚える実験でも、記憶に影響をしています。それは、その図形に「意味」を与えるだけです。そうすると、記憶の再生時にその意味に沿って図形が歪められることが分かっています。さらに、日常の複雑な出来事では、この歪みはさらに大きくなります。
思い出が美化される2つの心理的メカニズム
美化された記憶(回顧バイアス)が生まれる具体的な理由について説明します。なお、回顧バイアスとは、過去の出来事が、記憶によって歪められ、実際とは異なる形で思い出される心理的な偏りのことを言います。
ネガティブ記憶の抑制(自己防衛機能)
- メカニズム: 人間の脳は、精神的なストレスを減らし、幸福感を維持するします。脳にはこのような自己防衛機能が備わっています。
- 結果: 過去の出来事を思い出す際、嫌な、良い記憶などによって残りやすさが異なります。つまり、辛い記憶、嫌な感情、失敗体験には意識的に抑制がかかります。逆に、良い印象の記憶の方が優位に残りやすくなります。
- 効果: そして、悪い出来事を早く忘れ、過去を肯定的に捉えるケースが増えます。これにより、現在の自尊心や幸福感が維持されます。
- 注:自己防御機能は、ストレスや不安から心を守る無意識に働く心理的なメカニズムです。精神分析学の概念で、葛藤や受け入れがたい感情に直面した際に、心理的な安定を保つために「合理化」「投影」「否認」といった様々な方法が用いられます。
過去の選択の肯定(認知的不協和の解消)
- メカニズム: 自分が過去に行った選択や決定を否定されたくないという心理が強く働きます。
- 結果: たとえば、過去の選択で失敗した経験があったとします。しかし、その経験を「あれはあれで良い選択だった」「無駄ではなかった」と後から理由を付け加えたり、結果を美化したりして記憶を書き換えます。
- 効果: 「あの時、間違っていた」という感情の不協和(認知的不協和)を解消します。そして、精神的な安定を図ります。
- 注:認知的不協和とは、自分自身の考えや行動に矛盾が生じたときに感じる不快感やストレスのことです。この不快感を解消するために、人は自分の認知や行動を変化させ、「つじつま合わせ」をしたり、「自己正当化」をしたりするとされています。また、以前のブログ「「認知的不協和とは?」人が言動を正当化してしまう心理」で取り上げています。気になりましたら参照してみて下さい。
思い出補正がもたらす影響と付き合い方
ネガティブな記憶を抑制し、過去の選択を肯定する認知的不協和の解消により、思い出補正がおこなわれていました。この思い出補正というバイアスが、私たちにどのような影響を与えるのかについて整理します。
- ポジティブな影響:
- ストレス軽減: 過去を美化することで、現在の精神的安定につながります。
- 未来への希望: 「あの頃、これだけ頑張れた」という記憶が残ります。そして、この記憶が現在のモチベーションになります。
- ネガティブな影響:
- 現状否定: 過去を美化しすぎると、現状を過度に否定してしまうことになります。つまり、「過去に比べて今はつまらない」という考えになります。そして、その結果、行動力が低下します。
- 選択ミス: 過去の成功体験を美化しすぎてしまいます。そして、当時の手法が現在の環境に合わないにもかかわらず、誤った選択をしてしまうリスクが生じます。
まとめ
ここまでこのブログでは、記憶について記憶がどのようなものかについて、思い出が美化されるメカニズム、思い出補正がもたらす影響と付き合い方などについて説明しました。まず、記憶はハードディスクのように単なる保存ではなく「再構成」されるものという説明をしました。そして、思い出が美化される2つの心理的メカニズムでは、ネガティブ記憶の抑制(自己防衛機能)と過去の選択の肯定(認知的不協和の解消)を説明しました。最後に、思い出補正がもたらす影響と付き合い方として、ポジティブな影響とネガティブな影響について説明しました。(また、以前のブログで思い出はなぜ美化されるのか?というものを書いているのですが異なった視点から記載しています。)
つまり、思い出補正は、過去の経験を「現在の自分」にとって都合の良い、最も意味のある形に編集し直す、脳の賢い機能であることがわかりました。また、自分の記憶を完全に信用しすぎないことが必要でということも認識する必要があります。つまり、「これは脳が私を幸せにするために編集してくれたものだ」と理解することです。そして、過去の経験を美化しすぎることによる誤った選択をせずにすみ、過去の経験を前向きな力に変えることができると考えられます。


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