会社のデスク作業で集中が切れたとき、上司の視線を感じた途端に作業スピードが上がった。また、学校の自習時間に先生が戻ってきたら作業スピードが上がった。このような経験はありませんでしょうか? そして、一人での作業より、誰かと一緒や、大勢の観客がいる方が力を発揮できるということはないでしょうか? また、多くの人は「見られている=監視されている」とネガティブに捉えがちです。しかし、この「見られている状況」でパフォーマンスが上がっています。そして、他にはスポーツ選手の満員時の集中力、SNSで目標を公開した時の達成率などがあります。
また、この力の正体は、ホーソン効果(Hawthorne Effect)という心理現象ということです。そして、この力は、パフォーマンスを最大化する強力な武器になります。そして、この現象の裏には、人間の「承認欲求」と「社会性」に基づいた科学的な理由があるようです。
このブログでは、この誰かが見られていることによりパフォーマンスが向上するホーソン効果、そして、裏腹の心理、この効果の効果的な使い方などについて調べましたので、以下に説明します。
「注目」がモチベーションになる:ホーソン効果
ホーソン効果について
自分が誰かから注目されたり、観察されたり、特別に関心を持たれていると意識するだけで、行動やパフォーマンスが向上する心理現象がホーソン効果です。これは、実際に環境(例:照明の明るさや作業時間)が改善されたかどうかに関係していません。つまり、「自分は特別に選ばれた被験者(対象者)である」という意識そのものが関与しています。そして、選ばれたことが対象者のモチベーションや努力を引き出しています。その結果として生産性が上がることによって発見されました。
- 発見の経緯: この効果は、1920年代から1930年代にかけて実験が行われました。それは、アメリカのウェスタン・エレクトリック社ホーソン工場で行われました。
- 研究者たちは、作業環境(照明、休憩時間など)と作業効率の関係を調べました。しかし、環境を良くしても悪くしても、見られている間は生産性向上する結果でした。これから、環境そのものではなく、実験に参加しているという意識が影響していました。つまり、注目されることが労働者の意欲を高める要因であることが判明しました。
ホーソン効果と承認欲求の関係
ホーソン効果が発動する主要な心理的メカニズムの一つが、根源的な欲求である承認欲求です。承認欲求は、「他人から認められたい」「自分の存在や価値を肯定されたい」欲求です。心理学者アブラハム・マズローの欲求五段階説というものがあります。そして、これでは、尊厳の欲求(承認欲求)として、比較的高い階層に位置づけられています。また、ホーソン効果と承認欲求の関係は、以下の2つの点で密接に結びついています。
「関心」が「価値」の証明になる
誰かに注目されているということは、という肯定的なメッセージを暗に伝えます。具体的には、「あなたの仕事ぶりは重要だ」「あなたの意見は聞く価値がある」などです。そして、このメッセージが、被観察者(見られている人)の承認欲求を強力に満たします。「自分は意味のある存在だ」と感じることで、自尊心が高まり、期待に応えたいという自発的な意欲が湧き出します。
行動のモチベーションになる
- ホーソン効果: 「見られている」 ⇒ 「期待に応えたい」 ⇒ 「頑張る」
- 承認欲求: 「認められたい」 ⇒ 「良い結果を出す必要がある」 ⇒ 「頑張る」
承認欲求が満たされることで、人はポジティブな感情(喜び、誇りなど)を覚えます。このポジティブな感情を得るために、無意識のうちにより高いパフォーマンスを発揮します。具体的には、観察者の期待に沿うような行動を取ろうとします。つまり、他者からの「関心」や「注目」は、承認欲求を満たすための報酬となり、モチベーションの源として機能します。
ビジネス、心理的なメカニズム
- ビジネスにおけるメカニズム:
- 承認欲求の刺激: 誰かに自分の努力を見ていてほしいという欲求が満たされます。
- 期待に応えたい感情: 前向きなプレッシャーが生まれます。例えば、「期待されているから、良い結果を出さなければ」などです。
- 心理的なメカニズム:
- 期待に応えたい心理: 期待にこたえたいという感情が湧き、自発的に努力します。つまり、「この実験(あるいは観察)の結果に貢献したい」「期待に応えたい」などです。
- 自己重要感: 人は自分が組織や他者にとって「重要な存在」であると感じます。そして、意欲が高まり、より良い結果を出そうとします。
裏腹の心理「社会的手抜き(リンゲルマン効果)」
「見られていないと頑張れない」という現象の、さらに奥にある人間の心理です。
- 社会的手抜き(リンゲルマン効果)とは:
- 集団で作業する際、個人の貢献度が明確に見えにくいと次の心理が働きます。「自分一人くらいサボってもバレない」「他の人が頑張ってくれる」という心理です。そして、無意識に手を抜いてしまう現象です。
- 例:綱引きで人数が増えるほど、一人あたりの出す力が減る。
リモートワークや大人数チームでこの手抜きが起こりやすい。
- 「見られている」ことの重要性:
- ホーソン効果は、「誰かに見られ、個人の努力が評価される」環境があるからこそ発揮されます。
- 裏を返せば、「個人への注目や評価」がない環境は、「社会的手抜き」を誘発しやすいと言えます。
「見られている力」を意図的に活用する方法
この心理効果を、自己成長やチーム運営にどう応用するかを具体的に提案します。
セルフハック:目標を「パブリックコミットメント」する
- 公開宣言のススメ(セルフ・ホーソン効果)
- 目標をSNSや職場であえて公言し、「見られている」状況を自ら作り出します。
- 「後戻りできない」状況が、ホーソン効果を引き出し、頑張るための外圧になります。
マネジメント:「監視」から「承認と期待」へ
- 「監視」ではなく「関心」を向ける
- 悪い例: 単に席にいるか、作業時間だけをチェックする「監視」です。
- 良い例: 定期的な1on1ミーティングで、部下の努力のプロセスや小さな進捗に具体的な関心を向け、フィードバックを与えます。
- 効果: 上司からの「あなたを見ているよ、期待しているよ」というメッセージを発します。これが、ホーソン効果を引き出し、メンバーの自発的な意欲を引き出します。
成果を「表彰」でクローズアップする
- 「見える化」による手抜き防止
- チーム作業で、進捗や個人の貢献度を明確に見える化し、社会的手抜きを防ぎます。
- 方法: 達成した個人やチームの成果を、全社ミーティングなどで大々的に発表します。このような、表彰する制度を設けます。
- 効果: 成功者が社内の注目を浴びます。そして、自分もあの舞台に立ちたいという強い動機づけが他の人にも波及します。その結果、組織全体のモチベーション向上につながります。
まとめ
ここまでこの誰かが見られていることによりパフォーマンスが向上するホーソン効果、そして、裏腹の心理、この効果の効果的な使い方などについて説明しました。また、ホーソン効果について、自分が見られている等と意識するだけで、行動やパフォーマンスが向上する心理現象と説明しました。加えて、ホーソン効果と承認欲求の関係についても説明しました。また、ホーソン効果と逆の観点の社会的手抜きについても説明しました。そして、このホーソン効果を意図的に活用する方法を挙げました。
また、人が見られていると頑張れるのは、「他者からの承認」と「自分の貢献への評価」を求める、人間らしい心理の現れでした。そして、これを理解し意識的に見られる環境を作ることが、自己成長につながると思いました。つまり、誰かに見られている状況は、潜在能力を引き出す最高の環境と思われます。そう言えば、この効果が自然とできていることに思い当たることがあります。それは、図書館や自習室での勉強、カフェでの仕事、家でのリビングでの勉強等です。今更ですが、これらは理にかなっていることであると理解しました。


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