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なぜ人は“聞いてもらう”だけで安心するのか?

心理
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 つらいとき、誰かに話を聞いてもらうだけで、少し気持ちが落ち着くということを聞きます。また、悩みを話して、涙が出たり、気持ちが少し軽くなったというのも聞いたことがあります。これらは、話をしただけや悩みを誰かに打ち明けたとき、相手が特別なアドバイスをくれたわけでもないのです。それなのに、なぜか気持ちがすっと楽になったということです。実は「聞いてもらう」という行為そのものに、人の心を落ち着かせる力がありらしいです。
 今回のブログでは、「聞いてもらう」という行為にどのような効果があるのかについていろいろな方向から調べましたので、以下に説明させていただきます。

人間にとっての根源的な欲求が満たされる

承認欲求の充足

 人は誰でも「自分の存在を認めてほしい」「理解してほしい」という承認欲求を持っています。そして、話を真剣に、否定せずに聞いてもらえる経験は、承認欲求を満たします。そして、その承認欲求には、存在の肯定、理解・共感欲求の充足、孤独感の解消などがあります。その結果、承認欲求を満たされ安心感につながります。

承認欲求の例
  • 存在の肯定: 話を聞いてもらえることで次のように感じることができます。それは、「自分という存在が無視されていない」、「大切に扱われている」のように感じられます。これは「あなたはここにいてもいい」という無言の承認になります。そして、基本的な存在価値が認められた感覚を得ることができます。
  • 理解・共感の欲求の充足: 承認欲求には、具体的な欲求が含まれます。例えば、「自分の考えや気持ち、苦労を分かってほしい」「共感してほしい」などです。まず、話を聴いてもらい、頷きや相槌といった形で受け止めてもらえます。そして、「自分の内面が理解されている」と感じ、この欲求が満たされることになります。
  • 自己重要感の向上: 誰かに時間を使ってもらい、真剣に聞いてもらえます。この行動、「自分にはそれだけの価値がある」という自己重要感を高めます。そして、これが自己肯定感につながり、心が安定し、安心感につながります。
  • 孤独感の解消: 誰にも話せない状況は孤独感を生みます。しかし、話を聞いてもらえると「自分は一人ではない」「受け入れてくれる人がいる」と感じます。そして、所属欲求(社会集団に属することで安心感を得たい欲求)も同時に満たされ、不安やストレスが軽減されます。

尊重と信頼関係(ラポールの形成)

  • 尊重と信頼: 熱心に耳を傾けてくれる相手に対して、話し手は「この人は私を理解しようとしてくれている」「尊重してくれている」と感じます。
  • 効果: この感覚が信頼関係(ラポール)を築き、その関係性の中で人は心理的安全性を感じ、安心することができます。

心のデトックス効果(カタルシス)

つながりの実感が、不安を和らげる

 人間は本来、ひとりでは生きられない“社会的な生き物”です。孤独を感じると、ストレスや不安が増し、心身のバランスが崩れやすくなります。そのため、「誰かが自分の話を聞いてくれる」という体験は、「自分は一人じゃない」というつながりの感覚を与え、心を落ち着かせます。そして、聞いてもらうことで安心を得て不安を和らげています。

 「評価されない空間」が心を守る

 人はいつも、無意識のうちに「どう思われるか」を気にしています。そのため、相手が否定せず、アドバイスを急がず、ただ聞いてくれるだけで、心は「安全な場所にいる」と感じます。そして、これを心理学ではこれを「受容的態度」と呼びます。相手を評価せず、ありのままを受け止めます。この姿勢こそ、人の心を癒す最も大きな力になります。

カタルシス効果(浄化作用)

  • 行為と作用: 抑圧されていた感情やマイナスの思いを言葉にして外に出します。これにより、心に溜まっていたものが排出されされます。そして、この浄化される現象をカタルシス効果と言います。
  • 効果: 誰かに聞いてもらうという行為は、感情を吐き出すための安全な場を提供します。感情を抑え込む必要がなくなり、心の負担が軽減されるため、安心感を覚えます。

 注:カタルシス効果とは、心のなかに溜まったネガティブな感情(悲しみ、苦しみ、怒りなど)を解放することで得られる、心理的な解放感や安心感のことです。

感情の言語化と客観視

  • 行為の内容: モヤモヤとした感情や考えを、相手に伝えるために言葉にするプロセス自体が重要です。
  • 効果: 言葉にすることで、感情や状況を客観的に整理できるようになります。そして、「何に悩んでいるのか」が明確になります。その結果、問題が整理され、コントロールできる感覚が生まれ、漠然とした不安が和らぎます。
話すことで、感情が整理される

 悩んでいるとき、頭の中ではいろんな思いや不安がぐるぐると回っています。これを心理学では「反芻思考(はんすうしこう)」と呼びます。しかし、言葉にして話すと、曖昧だった感情が少しずつ整理されていきます。それは、頭の中のもつれた糸を少しずつほどいていくようなものです。誰かに聞いてもらうことで、自分の中の気持ちを客観的に見つめることができます。そして、「なるほど、自分はこう感じていたんだ」と気づくことができます。その“整理された感覚”が、安心感をもたらしてくれます。

良質な「聞き方」(傾聴)がもたらす安心

 共感されると、脳が「安心」する

 人が安心を感じるとき、脳の中では「オキシトシン」というホルモンが分泌されています。このオキシトシンは「信頼ホルモン」や「愛情ホルモン」とも呼ばれ、人とのつながりや共感を感じた瞬間に多く出ることが知られています。安心感を与える「聞く」行為は、単に黙って聞くことではありません。心理学的な技法に基づいた「傾聴」が特に大きな安心感を与えます。それには、相手がうなずいたり、「うん、そうなんだ」と受け止めるなどがあります。

  • 共感的理解: 相手の立場になって感情に寄り添い、理解しようとする姿勢。
  • 無条件の肯定的関心: 評価や善悪を判断せず、ありのままを受け入れる姿勢。
  • (具体的な行動の例): 相槌、うなずき、話の要約(「つまり、あなたはこういう状況でこう感じたんですね」)、適度な間を取ります。
  • 効果: これらの姿勢によって、話し手は「完全に受け入れられている」と感じます。そして、安心感が増幅されます。
 聞く側にも癒しの効果がある

 実は、“聞く側”にも良い影響があります。まず、相手に共感しながら話を聞くと、聞く側の脳にもオキシトシンが分泌されます。そして、信頼や親しみの感情が生まれやすくなります。つまり、「聞いてもらう」ことは、話す人だけでなく、お互いの心をつなぐ行為でもあります。

まとめ

 ここまで、「聞いてもらう」という行為にどのような効果があるのかについていろいろな方向から説明しました。また、聞いてもらうことは、“理解してもらう”ことではありませんでした。つまり、“受け止めてもらう”ことでした。そして、それだけで、人の心はきちんと癒えていくというものでした。「聞いてもらう」ことは、問題解決の糸口になるだけでありませんでした。この行為は、私たちの自己重要感を満たし感情を浄化し心の安全基地を作ってくれるものでした。そして、人に話を聞いてもらえることによる安心感は、「自分の存在や内面が他者に受け入れられ、認められた」という承認欲求の充足から生まれる心の安定と自己肯定感の向上に由来していました。

 また、「聞いてほしい」と言われたときには、アドバイスをする前に、まずは「聞く」ことの力を再認識することの必要性を感じました。そして、本当にアドバイスが欲しいときには、相手の話をよく聞いてからアドバイスをした方が良いと感じました。そして、人は「解決策」よりも「理解されること」を求めているのかもしれないような気がしました。加えて、聞いてもらうことで生まれる安心感は、共感してくれるという実感から生まれていました。そこから、聞いてもらうことの価値を見直さないといけないと感じました。

 

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