多くの人で作業をすることがあります。1人で作業するよりは早く進んでいるのですが、人数の割には進みが悪いような気がしていました。そして、その感覚通りの、集団で作業すると一人あたりのパフォーマンスが低下する心理に社会的手抜き(リンゲルマン効果)がありました。リンゲルマン効果(社会的手抜き)とは、集団で作業する際に「誰かがやるだろう」という心理が働きます。そして、一人ひとりの貢献度が無意識のうちに低下する現象です。
ここではリンゲルマン効果のチームの生産性を奪っている「無意識の手抜き」が発生する原因、そして、チームの生産性を高めるための対策を調べました。以下にこれらの内容について説明します。
社会的手抜き(リンゲルマン効果)とは?
リンゲルマン効果(Ringelmann Effect)は、集団で共同作業を行う際に、参加する人数が増えるほど、一人あたりの発揮する力や貢献度が無意識のうちに低下する現象のことです。別名「社会的手抜き」や「社会的怠惰(Social Loafing)」とも呼ばれます。この現象は、フランスの農学者マクシミリアン・リンゲルマンが19世紀に行った「綱引き実験」で提唱されました。
綱引き実験の例
リンゲルマンは、被験者に綱を引かせ、人数ごとの一人あたりの引く力を測定しました。
| 人数 | 一人あたりの発揮した力(単独作業を100%とした場合) | 結果 |
| 1人 | 100% | 自分の力を最大限に発揮 |
| 2人 | 93% | わずかに低下 |
| 3人 | 85% | 低下傾向 |
| 8人 | 49% | 半分近くまで低下 |
この結果から、集団の力は単純に個人の力の総和とはなりませんでした。そして、人数が増えるほどに個人の力が発揮されにくくなることが分かりました。加えて、この心理は、肉体的な作業だけでなく、会議での意見出しやダブルチェックなどにも発生しています。つまり、認知的なパフォーマンスにおいても個人の力が総和にならない現象が発生することになります。
なぜ社会的手抜きは起こるのか?
リンゲルマン効果が起こる主な原因は、集団内での以下の心理作用にあります。
1. 責任感の希薄化(誰かがやるだろう)
集団作業では、成果が個人の責任として明確に見えにくくなります。そのため、「自分一人くらい手を抜いても、他の誰かがカバーしてくれるだろう」という心理が働きます。また、これをフリーライダー現象と言います。そして、このフリーライダー現象が働くことにより、当事者意識が低下します。
2. 識別可能性の低下(頑張ってもバレない)
グループの規模が大きくなると、個人の努力や貢献が周囲から見えにくくなります。そして、「自分がどれだけ頑張っても、その頑張りが正当に評価されない」と感じやすくなります。その結果、モチベーションが上がらず、手を抜いても問題ないと判断しやすくなります。
3. 同調行動(周りがやってないから)
周りのメンバーがあまり頑張っていないと感じます。そうすると、「自分だけが頑張っても仕方がない」という意識が生まれます。そして、集団に合わせて力を抜いてしまう行動をします。特に、日本のような集団での調和を重視する文化では、この同調行動が強く現れることがあります。
社会的手抜きを防止し、チームの生産性を高める対策
リンゲルマン効果は無意識に発生します。そして、放置すると組織全体の生産性低下や優秀な人材の離職につながります。以下の対策が有効です。
1. 役割と責任の明確化
- タスクを細分化する: 誰が、いつまでに、何をやるのかという個人の責任範囲を明確にします。
- 少人数チームの編成: 集団の規模を可能な限り少なくし、一人ひとりの貢献度が可視化されるようにします。
2. 成果と貢献の可視化
- 適切な評価制度: 個人の努力やプロセス、貢献度を公平かつ具体的に評価します。そして、「頑張りが報われる」仕組みを作ります。
- フィードバックの徹底: 定期的な1on1などで、上司や仲間が個人の頑張りを認識します。そして、伝える機会を増やすようにします。つまり、「誰かが見てくれている」という意識を持たせるようにします。
3. モチベーションと当事者意識の向上
- 目標への共有: チームの目標や、その仕事が持つ社会的な意義を共有します。そして、仕事に対する内発的な動機付けを高めます。
- コミュニケーションの活性化: メンバー間の信頼関係を深めます。そして、このようにすることで「仲間を失望させたくない」という意識を醸成します。
まとめ
ここまでリンゲルマン効果(社会的手抜き)のチームの生産性を奪っている「無意識の手抜き」が発生する原因、そして、チームの生産性を高めるための対策を説明しました。また、リンゲルマン効果は、集団で共同作業を行う際に、参加する人数が増えるほど、一人あたりの発揮する力や貢献度が無意識のうちに低下する現象のことでした。そして、集団になった時に効率を落とさない対策は、役割と責任の明確化などの個人の役割、成果、モチベーションを上げるなど個人がで集団に呑まれないようにする。そのようにして、リンゲルマン効果を起きないようにするということでした。
私は、多人数でする作業については、意見がまとまりにくい作業が人数の割に進まない感覚がありました。そして、多人数でも完全分業で担当を明確に区分している時は、効率が落ちたと感じませんでした。しかし、分業での結果をまとめるときには効率が落ちたような感覚がありました。ここに社会的手抜きが出ていたような気がします。しかし、大きな作業には、作業上の重なりがあり、調整も必要であると考えられます。そして、この部分を効率の低下とみるのか、必要な作業とみるのかが難しいと思われます。また、作業内容や状況によっても異なるとも思います。どう見るかがどうとらえるのかがキーになり、そして、難しいと感じました。


コメント